アメリカ・ワシントン州オリンピア出身で2008年までニューヨークで活動した後、 ベルギー・ブリュッセルに拠点を移して活動する振付家 / ダンサーのソロ公演です。 これまでの作風など全く予備知識がありませんでしたが、 久々の海外からのアーティストの公演ですし、観客を舞台上にあげての公演という興味もあって 足を運びました。
実際のところ、舞台上に観客を上げたのは、 観客とパフォーマーの位置関係がフラットなオルタナティブ・スペースのような空間での上演を前提とした作品だったからでしょうか。 折り畳みの椅子を四辺に二段に並べた10m×15m程の長方形のスペースを使ったパフォーマンスでした。 前半に観客の足に口づけするような場面があったものの、客とのインタラクションはほぼなく、イマーシヴといえるような演出はありませんでした。
主題は子供時代の父の死の記憶とその受容といったもの。 最初のうちは、そんな主題も感じさせず、パフォーマンスする場の寸法を身体を使って測るようなパフォーマンスや、 マイクを身体に擦り付ける音をループさせた音に合わせた動きなど、身体と世界の距離感を測るようなパフォーマンスでした。 やがて、父が死んだ際の様子の記憶、母親や親族の様子などを静かに語り、それもルーパーやエフェクタで処理しつつ、ダンスをしました。 ダンスは技巧を見せるものでもなく、ナラティブを使いながらも心情を発露するような演技ではなく。 私的というか内省的で繊細な静謐さを感じる作品でした。