シネマヴェーラ渋谷では特集「アメリカ映画史における女性先駆者たち」を上映中。 20世紀前半 (10年代〜50年代) に活動した5人の女性映画監督 (Alice Guy, Lois Weber, Dorothy Davenport, Dorothy Arzner, Ida Lupino) による23本の映画を上映しています。 そんな中から、この映画を観てきました。
恋をしたことが無かったという女性冒険飛行家 Cynthia Darrington と 仕事熱心で堅物の妻子のある政治家 Christopher Strong の、悲劇的な結末に終わる恋愛を描いたメロドラマ映画です。 一旦はかなりロマンチックな所までいくも、 Cynthia は世界一周冒険旅行に発ち、Christophe も仕事に打ち込む、など、 戦間期の恋愛描写にしては、互いに自立した男女の恋を描いています。 この冒険旅行後、二人は親密な関係に落ち、Cynthia は妊娠し、 Christopher は結婚しようという話もするものの、結局、彼女は高高度飛行挑戦中の事故死を装って自殺します。 この Cynthia に対比されるのが、Christopher の娘 Monica。 Monica は妻子のある男と恋愛し、Cynthia の後押しもあって結婚を成し遂げます。 しかし、結婚し子供ができた後、Cynthia の父の親密な関係を知ると強く非難します。 そんな変化の描写も皮肉なのですが、Cynthia が Christopher に妊娠を知らせようとした夜を、 孫を妊娠した Monika のお祝いのために Christopher が突然キャンセルするという、 望ましい妊娠と意図しない妊娠の対比的な描写は、なかりエグく感じられました。 その一方で、娘の妻子ある男との関係を認めない保守的な女性だった Elaine が、 娘の結婚を受け入れ、Cynthia と夫の関係に気付きつつも、Cynthia に感謝すらするようになるよう変わっていきます。 Cynthia を巡っての Monika と Elaine の変化も対比的に描いていました。 タイトルは男性主人公の名ですが、むしろ、彼を取り巻く3人の女性、娘、妻、そして Cynthia の映画でした。 上流階級物のメロドラマで、繊細な演技や描写というよりゴージャスな美男美女を楽しむようなところもある映画ですし、 自主規制条項 Hays Code 導入 (1934) 直前のメロドラマということもあって濃厚なキスシーンもあり、 当時はかなりエロティックな映画でもあったのかもしれません。 そんな中では女性冒険飛行家役の Katherine Hepburn の個性が際立っていたでしょうか。