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Review: Jean Prouvé: Constructive Imagination 『ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで』 @ 東京都現代美術館 企画展示室 (デザイン / 美術展); 『MOTアニュアル2022 私の正しさは誰かの悲しみあるいは憎しみ』 @ 東京都現代美術館 企画展示室 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/08/14
Jean Prouvé: Constructive Imagination
東京都現代美術館 企画展示室1F/地下2F
2022/07/16-2022/10/16 (月休;7/17,9/19,10/10開;9/19,9/20,10/11休), 10:00-18:00.

フランス・ロレーヌ地方の首邑ナンシーを拠点に、 戦間期以降に UAM (Union des artistes modernes) 創設メンバーとして Le Corbusier のサークル界隈で活動した 家具デザイナ、建築家 Jean Prouvé の回顧展です。 Prouvé デザインの什器は今までも展覧会で接する機会があり、 鋼鉄やアルミを素材として多用し、モダニズムらしくシンプルながら頑丈そうな (ゴツい) フォルムの什器が印象に残っていました。 この展覧会でも、もちろんそういった什器も観ることができますが、 第二次世界大戦末期から戦後のプレファヴ建築の仕事に、それも実物展示にて接することで、 Prouvé の業績への認識を改めました。

1F展示室はProuvé のバックグラウンドの金属工芸の延長ともいえる什器のデザインに焦点を当てた展示。 代表作ともいえる椅子 « standard » のヴァリエーションを年代順に並べた展示も素材や製造方法の違いの変遷が浮かび上がって面白かったのですが、 やはり、ディスクやテーブルと組み合わせたセットアップでの展示の方が住環境もしくはオフィス環境が想起されるだけに Prouvé の美学が明らかになるようでした。

B2F展示室は建築家 (Prouvé は建築の学位を持っておらず constructor (構築家) と自称していたそうですが) としての Prouvé に焦点を当てたもの。 通常の建築プロジェクトに関する少しながら資料もありましたが、むしろ、プレファヴの規格建築の先駆者という面に焦点を当てたもの。 戦後の熱帯向けプレファヴ住宅 « Tropicale » のための什器はもちろん、 住宅に使われたアルミ製造のファサードや壁面用可動式ルーバー « Brise-Soleill » が実物展示されていました。

そして、この展覧会の展示の目玉ともいえるのが、プレファヴ建築の展示。 Pierre Jeanneret と手がけた最初期の « Maison F 8x8 BCC » (1942) は 屋根が葺かれていないもののほぼ完全な形でB2F吹抜のスペースに展示されていました。 第二次世界大戦中の金属不足の中で手がけただけあって壁材だけでなく柱も梁も窓枠も木製ながら、 物不足の中で作られた « Maison F 8x8 BCC » の完成度に驚かされました。

戦後の鉄骨構造とアルミのパーツを組み合わせたプレファヴ住宅 « Maison Métropole » (1949) も、 壁面パーツ、門型の柱や梁の実物が、不完全ながら組み上がった状況が想像できる形で展示されていました。 一方、大戦末期の難民用住宅 « Maison démontable 6x6 » (1944) は、 « Maison F 8x8 BCC » に隣接した壁面にパーツが並べられて展示されていました。 « Maison démontable 6x6 » は、壁パーツが木製ながら門型の柱や梁などの構造が鉄骨で、 « Maison F 8x8 BCC » から « Maison Métropole » への進化の途上を見るようでした。

Prouvé の什器やプレファヴ建築の展示を見ていて、ふと、自分の小学生時代 (1970年代) の学校を思い出しました。 小学生入学した時は戦前からありそうな木造校舎で、卒業時は鉄筋コンクリートの校舎でしたが、 その間に過ごしたのが、校庭に並んだプレファヴ校舎でした。 そして、そこに並ぶ木と金属を組み合わせた机や椅子。 Prouvé のようながっしりした作りではなく、 プレファヴにしても合板とアルミ板を重ねたようなペラペラなものでしたが、 自分が小学生で使っていたものと似たような椅子もあり、 その原点を見る感慨深さがありました。

MOT Annual 2022 – My justice might be someone else's pain
東京都現代美術館 企画展示室3F
2022/07/16-2022/10/16 (月休;7/17,9/19,10/10開;9/19,9/20,10/11休), 10:00-18:00.
大久保 あり, 工藤 春香, 高川 和也, 良知 暁.

東京都現代美術館のアニュアルのグループ展です。 ほぼ毎年観てきていますが、 今年は議論を呼んでいるような社会的な問題をテーマをして扱うような作品が集められていました。 企画意図はわからないではないのですが、そのフォーマルというよりナラティヴなアプローチが、 今の自分の意識とすれ違ってしまった感がありました。 ほぼ毎年定点観測的に観てきていますが、こういう時もあるでしょうか。