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Review: 『ルートヴィヒ美術館展 20世紀美術の軌跡––市民が創った珠玉のコレクション』 Museum Ludwig Cologne – History of a collection with civic commitments @ 国立新美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/09/25
Museum Ludwig Cologne – History of a collection with civic commitments
国立新美術館 企画展示室2E
2022/06/29-2022/09/26 (火休), 10:00-18:00 (金土 -20:00)

ドイツ・ノルトライン=ヴェストファーレン州のケルンにある Museum Ludwig, Köln のコレクションに基づく展覧会です。 この美術館は、Peter & Irene Ludwig (美術館の名の由来でもある) から ケルン市へ寄贈されたコレクションを基に、1976年に設立された美術館です。 他の市民からも多くの寄贈を受け、包括的な20世紀美術のコレクションを持つに至っています。 Ludwig 夫妻をはじめコレクションの形成に寄与した市民コレクターを顕彰するような面もあり、 オーソドックスに20世紀美術をおさらいするような展覧会でしたが、 そんな中からもコレクションの特徴が滲み出ているところがあり、そこを興味深く観ることができました。

Ludwig 夫妻寄贈の中には包括的な Russian Avant-Garde のコレクションがあるとのことで、 その展示コーナーが設けられていましたが、 Александр Родченко [Aleksandr Rodchenko] 等による都会的な芸術写真よりも、 今まで意識的に観る機会がなかった Георгий Зельма [Georgy Zelma], Аркадий Шайхет [Arkady Shaikhet], Георгий Петрусов [Georgy Petrusov], Boris Ignatovich [Борис Игнатович] などによる 1920s-30sの農村部や中央アジア・極東で撮ったモダンなカメラワークの報道写真寄りの写真に興味を引かれました。

まだ美術シーンがさほど国際化してなかった1950s-1960s半ば頃の西ドイツの作家の作品も、接する機会が殆ど無いだけに、新鮮でした。 例えば、実験的な写真家グループ Fotoform を1949年に設立した Otto Steinert, Peter Keetman, Toni Schneiders らによる写真や、 1950年代欧州の Art Informel や CoBrA, アメリカの Abstract Expressionism と同時代的な作品 (Ernst Wilhelm Nay) や、 1950年代末にデュッセルドルフで結成され同時代の Nouveau Réalisme (フランス) や Arte Povera (イタリア) などの動きと連動した 作家グループ ZERO の Otto Piene, Heinz Mack, Günther Uecker の作品など。 同時代的にこういう作品を制作していたのだな、と、興味深く観ることができました。