インドのサーカスから救出されたネパール人の人身売買サバイバーたちが結成した Circus Kathmandu のドキュメンタリー映画です。 人身売買のドキュメンタリーとしても、現代サーカス、ソーシャルサーカスのドキュメンタリーとしても、とても興味深いものでした。
人身売買された児童を使うインドの旧弊なサーカスから支援団体によって救出されたサバイバー達が、 そのサーカス・スキルを活かして保護施設の仲間と現代サーカスのカンパニー Circus Kathmandu を結成します。 Circus Kathmandu は、ネパール国内での公演が評判を呼び、ついには海外公演を実現します。 その過程を通して、サバイバー達が、教育の機会を奪われたハンディキャップ、人身売買されて受けた虐待のトラウマ、人身売買サバイバーであるというスティグマを乗り越え、 アイデンティティを取り戻し、サーカス・アーティストとしての自信と自尊心を得、人身売買防止の啓蒙活動にも取り組んでいく様を描いています。
このドキュメンタリー映画の凄い所は、Circus Kathmandu が海外公演する程に成功してから取材して当時を振り返って語ってもらうのではなく、 設立前、Circus Kathmandu の主要メンバーである Saraswati がインドのサーカスから救出される様子から始まっているということです。 人身売買サバイバーが自尊心を取り戻していく様子を、救出の瞬間から長期に渡って並走して取材し、回想の言葉ではなく、その時々の言葉、表情や振舞として捉えているので、ダイレクトに感じられるよう。 彼らのショーの様子を捉えた映像の尺が短いといった少々物足りなく感じる点はありましたが、 かなり見応えのあるドキュメンタリーでした。
このドキュメンタリー映画を撮った Sky Neal は、 BBC: Children at work やAl Jazeera English: Nepal's lost circus children という人身売買に関するTV局向けのドキュメンタリーを撮っています。 関連する取材をする続ける中で、Circus Kathmandu の結成と成功に立ち会うことになったということなのでしょう。 ちなみに、順番としては、Even When I Fall の後になりますが、 イギリスの現代サーカスに関するドキュメンタリー短編 V&A Museum: Circus Now, A glimpse into contemporary circus in the UK も撮っています。