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Review: Louis-Julien Petit (réal.): La Brigade 『ウィ、シェフ』 (映画)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2023/05/28

ゴールデンウィーク最後の土日は『ストレンジシード静岡』と『ふじのくに⇄せかい演劇祭』で静岡へ行ったものの、日曜は歩き回る気が削がれる本降りの雨。 ホテルのチェックアウト後、午後の公演までの時間を使って、 映画紹介ツイートが以前から気になっていた 静岡のミニシアター、サールナートホール/静岡シネ・ギャラリーへ行って、映画を観ました。

La Brigade
2022 / Odyssée Pictures (France) / colour / 97 min.
Un film de Louis-Julien Petit.
Audrey Lamy (Cathy Marie), François Cluzet (Lorenzo), Chantal Neuwirth (Sabine), Fatou Kaba (Fatou), et al. etc.

独立してレストランを持つ夢を持つ一流レストランのスーシェフ Cathy が、オーナーシェフと衝突して辞め、 思わぬ経緯で、未成年の移民の自立支援施設の厨房を担当する事になって、から始まる、社会派コメディ映画です。 一匹狼的だった Cathy も、当初は不本意な仕事に周囲と摩擦を起こしていたものの、移民の若者たちを厨房を手伝わせ、さらに本格的な調理を教えることを通して、変わっていきます。 不貞腐れた態度で料理も手っ取り早く腹を満たせればいいという移民の若者たちも、厨房でチームワークし、調理師の技能を身につけるという目標を得て、生き生きと変わって行きます。 そんな様子を、また劇中劇的に織り込まれるシェフ対決TV番組でスノビズムに対する皮肉なども交えつつ、クスッと笑えるコメディタッチで描いていきます。 骨密度検査で成人と診断されたら直ちに強制送還となることや、調理師の資格を得ても送還されてしまう人もいることなど、 フランスにおける未成年の移民の置かれた不条理な状況から目を逸らさずにそれらを描きつつも、 人の悪意を描き込むことなく、前向きな善意に焦点を当てていたので、 重いテーマを扱いながらも後味の良いコメディでした。

全く予備知識無しに偶々行った映画館で上映していた映画として観たのですが、良い映画と出会えました。 映画日本公開に合わせた監督インタビュー記事によると、 映画のストーリーはフィクションですが、 未成年の移民たちに職業適格証を取得させる支援活動をしている実在の元シェフ Catherine Grosjean がモデルになっており、 オーディションで選んだ実際にパリの移民支援施設で暮らす若者たち40人が出演し、彼らのセリフには実体験も織り込んでいるとのこと。 そんな所も、コメディタッチながら絵空事の理想を描いたものではないリアリティを感じた一因でしょうか。

チェックアウトから映画まで30分余の時間があったので、 静岡市美術館で『英国キュー王立植物園 おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり』展も観ました。 18〜19世紀に描かれたボタニカル・アート (植物画) の Royal Botanic Garden, Kew のコレクションを中心に、同時代のレシピ本やテーブルウェアも展示されていました。 静岡駅北口の紺屋町地下街から直結で行けましたし、 お薦めツイートに従って、この展覧会と『ウィ、シェフ!』をハシゴして、当たりでした。 映画の後、鷹匠や伝馬町の路地にあるレストランにでも寄って、ゆったり美味しいランチでもいただきたい気分になったのですが、 後の予定もあって、そそくさとランチをかき込むことになってしまいました。残念。