日本の洋舞100年を歴史を振り返り作品を復元上演する企画の、 第1弾 (2014年6月)、 第2弾 (2015年3月)、 第3弾 (2018年11月)に続くコロナ禍をはさんでの第4弾です。 戦間期の黎明期から少しずつ年を下り、第4弾は20世紀後半、戦後高度成長期に主に活動した振付家の作品に焦点を当てていました。 第3弾までチェックしていなかったくらい縁遠いジャンルですが、観ておく良い機会だろうと足を運んでみました。 休憩2回を挟んで振付家毎の3部構成で、第2部の後に ダンス・アーカイヴ企画運営委員会代表 正田 千鶴 による「本公演の企画について」という短いトークがありました。
『土面』は20名のダンサーを使った作品で、日本的なものを洋舞というかモダンダンスにどう取り入れるかという試み。 控えめな装飾の入った土色 (ベージュ) のボディスーツを衣装に、 音楽に和太鼓などを使い、歌舞伎を少し連想するような手を開いて腕や脚を開き気味の動きを多用したり、時には舞踏のように仰向けになって腕脚を上げたり。 群舞のフォーメーションのシンメトリや、力の抜けた動きがあまり無い所などに、コンテンポラリーダンスとの違いを感じました。
『夏畑』も日本的なものへの取り組みですが、音楽はしゃがれたドイツ語の歌。 綿入れ (ドテラ) やツバの大きな麦わら帽子などを使った衣装に、洗練された和の美や都会的なものを避けようという意図を感じます。 『土面』同様、手を開いて腕や脚を開き気味の動きが印象的で、当時、このような動きはモダンダンスとは対極的な動きとして見做されていたのでしょうか。 ドテラのような面白い衣装を、踊り始めてすぐ脱いでしまった所は、もったいなく感じました。 しかし、ドテラに拘束されての動きとか、ドテラの造形の面白さも含めての動き、といった発想は、むしろコンテンポラリーダンスになってからのものなのかもしれません。
第3部のアキコ・カンダの2作品は、日本的なものを取り入れるという方向性の作品ではなく、 モダンダンスを西洋的なものとしてどれだけ消化したかを見るような作品でした。 特に、Barbara の歌に合わせてのダンスを見つつ、 あまり馴染みの無いはずの自分が観ても歌謡ショーのように少々ベタな表現に感じてしまったのですが、 これも、モダンダンスの身体語彙が普及した証なのかもしれません。
自分の好みのツボにハマったというわけではなく、アウェー感も否めませんでしたが、 自分がまだ若かった1970〜80年代の雰囲気を思い出させられる所もあり、 コンテンポラリーダンスとの相違も興味深く感じました。 たまにこういう企画を観るのも、良いものです。