ホラー/ファンタジー/SFで知られるメキシコ出身の監督による2006年作です。 他作品を見ておらず作風等には疎かったのですが、 予告編で気になっていたこともあり、日本国内での上映権終了に伴う最終フィルム上映を観ました。
舞台は内戦直後でフランコ独裁下の1944年のスペイン、 仕立て屋の夫を失い反フランコ・ゲリラ掃討軍を率いる Vidal 大尉と再婚した身重の Carmen の連れ娘 Ofelia が主人公です。 住民やゲリラに冷酷だけでなく女性や子供も蔑視する抑圧的な継父 Vidal の下から逃れるように、 虫の妖精に導かれ牧神 (Fauno [Pan]) の棲む迷宮へ彷徨い入り、 王女として地下の国へ戻るために与えられた3つの試練に挑むことになります。
このまま、迷宮の向こうのファンタジーの世界で話が進むのではなく、 掃討軍とゲリラとの凄惨な一進一退の戦いや、ゲリラと内通する家政婦 Mercedes や医者の抵抗と犠牲などのドラマと入り混じる形で、 Ofelia のファンタジーが進行します。 ラストは、ゲリラによって掃討軍の拠点が陥落する中、Ofelia は迷宮に逃げ込もうとするも、Vidal に殺されます (i.e. 3つの試練をクリアして王女として地下世界へ召されます)。
ダークファンタジーという紹介されることが多く、ファンタジーの場面での異形の造形も確かに目に止まりますが、 フランコ独裁の暴力的、抑圧的な支配の不条理、過酷な現実を、Mercedes や医者を中心としたドラマとして丁寧に描かれています。 Vidal による捕虜拷問の場面をはじめ正視に絶えない凄惨な場面などは苦手でしたが、 過酷な現実をマジックリアリズムの形式で描く、とても良い映画でした。