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Review: 『パリ・ポンピドゥーセンター キュビスム展 美の革命』 The Cubist Revolution: An exhibition from the collection of the Centre Pompidou, Paris @ 国立西洋美術館 (美術展)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2023/10/22
The Cubist Revolution: An exhibition from the collection of the Centre Pompidou, Paris
国立西洋美術館
2023/10/03-2024/01/28 (月休;10/9,1/8休;10/10,12/28-12/31,1/9休), 9:30-17:30 (金-20:00).

フランス・パリの近現代美術館 Musée national d'Art moderne, Centre Pompidou のコレクションに基づく 20世紀初頭のモダニズムの一潮流 Cubism に焦点を当てた展覧会です。 モダニズムを扱う展覧会はそれなりに観てきてますが、Cubism をメインに取り上げた展覧会はありそうでなく、 大型展覧会のレベルでは日本で50年ぶりになるとのこと。 まとめて観る良い機会なので、足を運びました。

Cubism といっても、画商 Daniel-Henry Kahnweiler と専属契約を結んだオリジネータの Pablo Piccoso と George Braque と、 2人に影響を受けサロンで作品を発表するようになった Salon Cubists と呼ばれる作家たちが区別され、 Salon Cubists の中にも、Kahnweiler にも認められた Fernand Léger と Juan Gris、 Sonia & Robert Delaunay らの Simultanism (Orphism)、 後に Dadaist となる Marcel Duchemp や Marcel Duchamp もその一員とみなされた Puteaux Group などがあります (これらは排他的なイズム、グループではありません)。 そういったカテゴリや作家グループも意識しながら作品を観ると、 Piccaso や Braque の作品は薄茶けた彩度く色彩より形態を焦点化しており、 Cubism が広がる中で色彩の扱いが多様化していきます。 そんな Cubism での色彩の扱いの中では、特に Sonia & Robert Delaunay の作品が目に止まりました。

Cubism 周辺の動きでは、いわゆる École de Paris、中でもモンパルナス La Ruche の作家たち、 ロシアの Cubo-Futurism など。 そして、第一次世界大戦を経て、戦間期の After Cubism に至るまでが展覧会のスコープです。 Cubism の建築への影響として “La Maison Cubiste” (1912) に関する展示がありました。 Art Deco の先駆と言われる建築ですが、写真に紙資料などの関連資料も合わせて観るかぎり、まだ Art Nouveau の色を強く感じさせるもの。 そんな所から、Cubism は戦間期ではなく、第一次世界大戦前の芸術運動だったのだな、と改めて認識させられました。 また、第一次世界大戦後の After Cubism になって、Piccaso、Braque や Gris の作品にしても、Cubism と Art Deco 的な美との共鳴が感じられました。

Cubism についてはある程度観知っているつもりでしたが、 20世紀初頭の様々なモダニズムの中の1つという程度の捉え方しかできていなかったな、と反省させられました。 この展覧会でまとまった形で観ることで、Cubism を観る解像度が上がりました。