フランス・パリの近現代美術館 Musée national d'Art moderne, Centre Pompidou のコレクションに基づく 20世紀初頭のモダニズムの一潮流 Cubism に焦点を当てた展覧会です。 モダニズムを扱う展覧会はそれなりに観てきてますが、Cubism をメインに取り上げた展覧会はありそうでなく、 大型展覧会のレベルでは日本で50年ぶりになるとのこと。 まとめて観る良い機会なので、足を運びました。
Cubism といっても、画商 Daniel-Henry Kahnweiler と専属契約を結んだオリジネータの Pablo Piccoso と George Braque と、
2人に影響を受けサロンで作品を発表するようになった Salon Cubists と呼ばれる作家たちが区別され、
Salon Cubists の中にも、Kahnweiler にも認められた Fernand Léger と Juan Gris、
Sonia & Robert Delaunay らの Simultanism (Orphism)、
後に Dadaist となる Marcel Duchemp や Marcel Duchamp もその一員とみなされた Puteaux Group などがあります (これらは排他的なイズム、グループではありません)。
そういったカテゴリや作家グループも意識しながら作品を観ると、
Piccaso や Braque の作品は薄茶けた彩度く色彩より形態を焦点化しており、
Cubism が広がる中で色彩の扱いが多様化していきます。
そんな Cubism での色彩の扱いの中では、特に Sonia & Robert Delaunay の作品が目に止まりました。
Cubism 周辺の動きでは、いわゆる École de Paris、中でもモンパルナス La Ruche の作家たち、
ロシアの Cubo-Futurism など。
そして、第一次世界大戦を経て、戦間期の After Cubism に至るまでが展覧会のスコープです。
Cubism の建築への影響として “La Maison Cubiste” (1912) に関する展示がありました。
Art Deco の先駆と言われる建築ですが、写真に紙資料などの関連資料も合わせて観るかぎり、まだ Art Nouveau の色を強く感じさせるもの。
そんな所から、Cubism は戦間期ではなく、第一次世界大戦前の芸術運動だったのだな、と改めて認識させられました。
また、第一次世界大戦後の After Cubism になって、Piccaso、Braque や Gris の作品にしても、Cubism と Art Deco 的な美との共鳴が感じられました。
Cubism についてはある程度観知っているつもりでしたが、 20世紀初頭の様々なモダニズムの中の1つという程度の捉え方しかできていなかったな、と反省させられました。 この展覧会でまとまった形で観ることで、Cubism を観る解像度が上がりました。