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Review: Théâtre du Soleil: L'île d'or [Kanemu-Jima] 『金夢島』 @ 東京芸術劇場 プレイハウス (演劇) 『スカーレット・プリンセス』 @ 東京芸術劇場 プレイハウス (演劇)
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)
2022/10/29
東京芸術劇場 プレイハウス
2023/10/21, 14:00-17:15.
Une création collective du Théâtre du Soleil, en harmonie avec Hélène Cixous, dirigée par Ariane Mnouchkine, musique de Jean-Jacques Lemêtre.
Cornélia et ses compatriotes: Hélène Cinque (Cornélia), Tomaz Nogueira (Gabriel, son ange-gardien), Shaghayegh Beheshti (Mme Spinoza, sa professeure), Juliana Carneiro da Cunha (Mme Miette, sa mère), Eve Doe Bruce (Zélita, l’aide-soignante); Les habitants de l'île et quelques intrus: Nirupama Nityanandan (Yamamura Mayumi, maire de Kanemujima), Judit Jancsó (Anjyu, son amie et bras droit), Omid Rawendah (Kaito, son secrétaire), Farid Gul Ahmad (Akira, le gardien), Vincent Mangado (Amano Buemon, l’architecte, Junichiro, le pêcheur, danseur amateur de Nô), Seietsu Onochi (Amano Kokichi, son père, comptable de la mairie), Dominique Jambert (La marchande de tsuke-age), Georges Bigot (Takano, le premier adjoint et opposant à la maire), Andréa Marchant (Katsuko, sa fille), Maurice Durozier (Watabe, le deuxième adjoint et opposant à la maire), Duccio Bellugi-Vannuccini (Maître Hirokawa, son avocat), Alice Milléquant (Tomoko, une fonctionnaire municipale), Arman Saribekyan (Masa San, libraire et metteur en scène amateur), Dominique Jambert (Melle Etsuko, passionnée de russe et de Nô), Agustin Letelier (Shinichiro, son frère, le pêcheur, chanteur amateur de Nô), Sebastien Brotter-Michel (Jean-Philippe Dupont-Smith, le Français); La grande régie: Aline Borsari (Sayaka, la grande régisseuse), et sa brigada de kurogos, aidée par tous le personnages; Radio Wasabi: Dominique Jambert (Izumi), Alice Milléquant (Hiromi); Le Grand Théâtre de la Paix, troupe proche-orientale; La troupe des marionnettistes; La Démocratie, notre Dédir, troupe de Hong Kong; La troupe municipale des Petites Lanternes Démocratiques; Le troupe Paradise Today; La Diaspora des Abricots, troupe afghane en exil; La troupe Notre Dame du Théâtre Socialiste Brésilien; et al.
Le spectacle a été créé le mercredi 3 novembre 2021 à la Cartoucherie.

フランス・パリ郊外の弾薬庫跡 Cartoucherie を拠点に1960年代から活動する Théâtre du Soleil [太陽劇団] の22年ぶりの来日公演です。 演劇の文脈でその活動の話は時々目にする機会はありましたが、2001年新国立劇場での初来日公演は見逃していて、今回初めて観ました。

日本の架空の離島 金夢島 (おそらく佐渡がモデル) を舞台に、そこでの国際演劇祭の準備を 演劇祭を推進する市長派とリゾート開発を目論む反市長派の対立などの騒動も交えて、 さらにこの話自体もパリで病に臥せている芸術監督 Cornélia の夢の中の出来事として描く、二重構造のメタ演劇というか、メタ演劇祭です。 演劇祭会場となる造船所跡の建物内部を示すような舞台美術が背景と両袖、天井にあり、 その中で演劇祭に出演する劇団のリハーサルが行われるだけでなく、 Corneria の臥せているベッドはその中をあちこち移動し、 時には市長室などの場面も演じられます。

前半はフラットな照明下での演技が多く、ストッキング様のマスクをしているなどの不自然な要素もあれど、 演劇祭の準備の様子や演劇祭や市長を巡る対立を会話劇的に描写するよう。 昨今のまちおこし観光化する芸術祭を風刺しているのかなと思いつつ観ていました。 劇中劇団も、国際演劇祭ということで、アラビア語とヘブライ語で上演するアラブ人=ユダヤ人混成劇団、 中国語 (広東語?) で演じる香港の民主主義劇団、 ダリー語とペルシア語で演じるアフガニスタン難民劇団、 ブラジル=ポルトガル語で演じるブラジルの社会主義劇団、 日本からは人形劇団と市職員による劇団と、言語もスタイルも様々という面白さはありました。 しかし、場面転換が多く、散漫でした。

しかし、後半になると照明演出も明暗が濃くなり、次第に夢の中のようなシュールな様相を示していきます。 例えば、リゾート開発への投資を狙うブラジル人が、Corneria のトラウマ的なDVの記憶と結びつき、それが、ブラジルの劇団の劇として演じられる、 といったような形で、前半で示されていた要素の連関が舞台ならではな非現実な演出で示されています。 前半で観ていて引っかかっていた芸術祭への風刺と思われる要素も反市長派がドジな悪役としてコミカルに退場するという形になり、 そのような社会的なテーマを掘り下げるのではなく、もっと私的な Corneria の夢、演劇祭にまつわる様々な思いが浮かびあがります。 そして、最後には、3時間舞台上で示されたイメージが、演劇祭で皆と再会したいという思いが込められた Vera Lynn “We'll meet again” に併せての能の舞によるフィナーレという形で決着しました。

自分の好みはもっとミニマリスティックな演出ですが、 演劇祭へ行ってアタリもあればハズレもある様々な舞台をダイジェストで観ているかのような、 多様さというか雑多な雰囲気を楽しみましたし、中にはハッとさせられるような場面もありました。 特に印象に残ったのは、後半のブラジルの劇団の場面で Caetano Veloso の “Um Índio” (1977) が歌われる所。 静かに女声で歌われるのもよかったのですが、字幕付きだったこともあってか、シュールな Caetano 歌詞の面白さを再認識させられもしました。 前半は少々散漫な展開に観ていて戸惑うところもありましたが、 後半に入って次第に演出が切り替わり様相が変わっていき、舞台上の世界に引き込まれました。