フィンランドのタンペレで2022年12月30日から2023年1月1日にかけて5公演が行われたアンデルセン童話『雪の女王』に基づくアイスショーの フィンランド公共放送 Yle によってTV収録された12月31日の公演が arte.tv で配信されています。 フィギュアスケーターだけでなく、シンクロナイズドスケーター、ダンサー、アイスホッケー選手も出演しています。 フィンランド語のナレーションも少し用いますが (arte.tv では英語等の字幕が付く)、身体表現によるストーリーテリングがメインです。 “ice ballet” と謳っていて、確かに物語バレエ (narrative ballet) 的な構成演出ですが、身体語彙的には特にバレエ色は濃くありません。 アイス・アリーナとそれを縁取る氷塊の連なりのようなフロア・ステージで上演されるのですが、 舞台美術や背景へのビデオ投影が使えないものの、氷面へのプロジェクションマッピングというか映像投影による演出を駆使していました。 演技やビデオによるストーリーテリングは丁寧でわかりやすく、元の話を知っていればナレーション無しでも物語は十分に追える、良い意味でエンタテインメント的なショーです。
タイトル役 (Snow Queen) は Euro 2009 女子フィギュアスケート金メダリストの Laura Lepistö (フィンランド) ですが、 実質ヒロイン Gerda 役には Silja Dos Reis、 Cirque de Soleil のアイスショー Crystal にも出演していたという元ペア選手 (フランス) を使っていました。 やはり、男性とペアとなってのスケーティング、リフトやスローのようなペアのスキルがあった方が表現の幅が広がります。 最後の場面で Snow Queen は Spring (春の精) へ変わるのですが、Spring 役は Lisa Mochizuki [望月 梨早]、Cirque de Soleilにも出ていたという日本のスケーターでした。 また、バレエでいう所のコール・ド・バレエ (corps de ballet) 的な使い方で、シンクロナイズドスケーティング・チーム Marigold IceUnity (フィンランド) も活躍します。 Gerda を Snow Queen に導くトナカイが2人組着ぐるみで演じられていましたが、スケートを履いてのこの演技は大変そうです。 Gerda の味方となる山賊 (Robbers) はスケーターではなくダンサー (ショーダンスの文脈で活動する) が演じていました。 スケーターとは違う動きを加えるという演出的な意図もあったかと思うくらいの必然は感じましたが、彼らもスケーターに演じさせたらとも思いました。 アイスホッケー選手の出演は、KaiがThe Snow Queenの虜になる池でのアイスホッケー (原作は橇ですが) の場面だけでした。
クリエイティヴのうち演出の Reija Wäre、作曲の Tuomas Kantekinen はフィンランドで活動する人ですが、 脚本の Melissa A. Thompson と照明/セット/ビデオ・デザインの Mikki Kunttu は、 Cirque du Soleil のクリエイティヴ・チームで働いてきたとのこと。 主要な役にも Cirque de Soleil 経験者が配されていて、そこでのノウハウや経験も活かされているのだろうと想像されます。 フィギュアスケーターの選手としての知名度頼りではなく、この The Snow Queen のように物語バレエ的にしっかり演出・振付されたアイスショーを観てみたいものです。