シアター・イメージフォーラムの『カール・テオドア・ドライヤー セレクション vol. 2』で、 デンマークの映画監督 Carl Th. Dreyer による戦間期の映画を観てきました。
フランス Société Générale des Films の招きで制作した フランス中世、百年戦争の英雄 Jeanne d'Arc を主題に撮ったサイレント映画です。 映画を論じた本で言及される事の多い作品で、スチルは何度となく見たことはありましたが、映画を観たことが無かったので、これも良い機会かと観ました。 異端審問のやりとりが主題で、Jeanne が捕虜となりイングランドに引き渡されるまでは描かれず、そして、火刑の場面で終わり後日談もありません。 回想シーンや同時並行するフランス陣営の様子などが挟まれることもなく、処刑シーンなど屋外場面もありますが、Jeanne が囚われた教会を舞台とした異端尋問の密室会話劇を観るよう。
印象を強く残すのはカメラワーク。バストアップどころ額や顎の一部が切れるくらいの顔のクロースアップが多用されます。 また、フラットなアングルがほとんどなく、下方からあおるアングルや、真上から見下ろすアングルが多用されます。 背景がまともに写り込まないので、登場人物が置かれた状況が捨象されて、Jeanne や審問官の心情描写に集中するよう。 スクリーンで観たこともあり、その画に圧倒されました。 2015年に収録されたという教会オルガン伴奏付きでの上映でしたが、その響きが、映像の重苦しさを倍増させていました。
La Passion de Jeanne d'Arc に続いて制作された Dreyer 初のトーキー映画は、 Sheridan Le Fanu: In a Glass Darkley (1872) に基づく吸血鬼物のホラー映画です。 吸血鬼が暴れ回って人を襲うのではなく、生命力を奪う呪いのように存在する吸血鬼を村医者が悪用するというもので、 最後には村の訪問者 Allan Gray がそれを暴き、ヒロインを助けて村医者の成敗するという展開です。 ホラーが苦手ということもあるかと思いますが、吸血鬼の背景説明に字幕や遺された本に頼り過ぎという感もあり、物語には入り込めませんでした。 しかし、多重露光などの撮影トリックが多用されるのですが、さすがに1930年代に入ると表現主義的ではなく自然主義的な演技や絵作りで、それらと撮影トリックの合わせ方も興味深く観られました。