戦後の1950年代から主に陶をメディアに現代美術の文脈で活動する日本の作家の個展です。 その代表的な作風である新聞やチラシのような印刷物を丸めたような形状で印刷を転写した陶の作品「割れる印刷物」はコレクション展示などで観たことがありましたが、 個展というまとまった形で観たのは初めてです。
1階展示室の、初期の抽象画やシルクスクリーンの作品に見られるコラージュ的なセンスに、後の作品に繋がるものを感じましたが、 やはり面白くなるのは、その後半から2階の最初の展示室に展示された1970年代の割れる印刷物。 新聞紙を丸めたような仕上がりがスタイリッシュな作品しか知らなかったので、織り込みチラシ、ダンボール箱や輸送用紙袋、マンガ雑誌を模った作品など、 その廃棄寸前のくたびれた形状も含め、題材の選択にユーモアも感じられ色彩もポップな作品がむしろ主流ということを知りました。 空き缶を転写した陶を赤く錆びたスチールのゴミ箱に詰めた作品なども、それに連なるセンスを感じます。
そんなポップなユーモアも感じる展示室から最後の展示室へ移動すると、 一転して、使い古されたかのような耐火煉瓦が床いっぱいに広げられたインスタレーション《20世紀の記憶》(1984-2013)。 新聞紙面の転写が焼け跡の黒ずみのようにに見えるというのもありますが、ポスト・アポカリプス的な廃墟のイメージを見るよう。 印刷物や空き缶の陶のユーモアとのコントラストも、味わい深いものがありました。
展覧会を観て1週間経った29日に 三島 喜美代 の訃報 [美術手帖] が報じられました。 ご高齢ではありましたが、個展の最中というタイミングに、大変驚きました。