ヘルシンキから車で1時間、人口1万に満たない町 Karkkika に映画監督 Aki Kaurismäki が2021年にオープンさせた、 鋳物工場跡を改装した映画館 Kino Laika (Cinéma Leika はそのフランス語表記) のオープンまでの1年を追ったドキュメンタリー映画です。 映画館というよりも映画を核とした地域コミュニティセンターのような場を、 Kaurismäki 自らスクリーン張りや大工作業もするようにD.I.Y.的に作っていく様子を捉えています。
しかし、Kaurismäki や住民の映画館への熱い想いや困難の乗り越えるための苦闘を感動の物語として描くようなものでは全くなく、 Kaurismäki の映画同様、むしろ、淡々として、かなりオフビートな作りです。 インタビューされる Kaurismäki 縁の人々、Karkkila の人々の言葉も、 映画館への想いや Kaurismäki の人物像にきっちり焦点は合っておらず、 例えば、Kuolleet lehdet [Fallen Leaves] (2023) に登場した 姉妹インディ・ポップ・デュオ Maustetytöt が出てくる場面でも、むしろ Kaurismäki との縁はほとんど無かったと語るよう。 Kaurismäki もラストに「Karkkila へ恩返しをしたい」と語る場面はあるけれども、 雄弁に意図や想いを語ることはせず、むしろ、自ら映画館作りの作業をするその姿を通して示すよう。 そんなところに Kaurismäki らしさを感じたドキュメンタリーでした。