東京都写真美術館主催のアニュアルの映像芸術展 [去年の鑑賞メモ] ですが、今年もメイン会場の展示を中心に観ました。
2023年から始まったコミッション・プロジェクトは全体テーマもあってドキュメンタリー映画もしくは それを批判的に継承したものを核としたインスタレーションを作風とするものが揃っていました。 このような作品に対してはドキュメンタリー映画としてストレートに撮ったほうが扱っている問題が伝わるのではと思ってしまうことが少なくありませんし、今回もそう思うところはありました。 しかし、今回の4作家の中では、マッコリを通して朝鮮半島での米品種と醸造技術の植民地化、近代化に取材した 永田 康祐《Fire in Water》が最も興味を引かれました。 といっても、その作品の形式の面白さというより、扱っている題材が自分の興味に合ったのですが。
コミッション・プロジェクト以外の展示で印象に残ったものといえば、
野外を含めて大型小型様々なディスプレィにメッセージ、引用された言葉をシンプルに投影した Tony Cokes の作品に、
デジタルサイネージ時代の Barbara Kruger / Jenny Holzer 的な表現を感じました。
神話の普遍性に着想したという 劉 玗 [Liu Yu], If Narratives Become the Great Flood (2020) は、
その着想源の深さというより、そこを起点に立体へのプロジェクションマッピングを含めた視覚の遊びを感じる仕上がりでした。
Apichatpong Weerasethakul, a BOX of TIME (2024) は、
ビデオから様々な間隔で切り出した一連のスチルをカード化したもの。
観客はそれを手に取ってめくりつつ観ていきます。
短時間間隔のものは1枚ごとの変化がほどんどなくまるで凍結した時間を切り出したよう。
そこから、いかにもコマ撮りのように動きを感じるものを経て、
長時間感覚のものではストーリーを感じる異なる場面の連続へ。
同じ主砲ながら時間間隔を変えるだけで、これだけ受ける印象が変わるものかと、面白く感じました。