総合開館30周年を記念してのコレクション展の第1弾です。
学芸員5人による共同企画で「写された女性たち 初期写真を中心に」、「寄り添う」、「移動の時代」、「写真からきこえる音」、「うつろい/昭和から平成へ」の5つのテーマ展示の組み合わせになっていました。
1995年の総合開館記念展『写真都市TOKYO』の再現を含む「うつろい/昭和から平成へ」で王道の30周年記念企画を押さえつつ、
誰かということだけでなく被写体の女性の姿勢、動きなどにも着目した「写された女性たち 初期写真を中心に」を興味深く観ました。
個別の作家では、インターセクションとして配された 山本 彩香 〈We are Made of Grass, Soil, and Trees〉 (2014-2015) の青みがかって幻想的な一連の演出写真が印象に残りました。
やはりインターセクションにあった〈版画集 トマソン黙示録〉 (1988) は、
Bernd and Hilla Becher を思わせるグリッド状の展示方法ながら被写体が無用の建築「トマソン」という所が可笑しく感じました。
砂丘を舞台とした家族を使った演出写真の印象強い 植田 正治 の違う一面も観られましたし、
集合住宅の通路の照明パターンをライトボックス化した畠山 直哉 〈光のマケット〉 (1995) を久々に観ることもできるなど、
企画を離れてコレクションの展示としても楽しみました。
1990年代から活動する写真家の個展です。
グループ展やコレクション展で観る機会はありましたが、個展で観るのは初めて。
観る機会の多かった〈In My Room〉のようなセクシュアリティをテーマとした写真という印象が強かったのですが、
〈CVD19〉のような手の造形の面白さを切り出すような抽象度の高い作品から、
〈毎日写真〉や〈カスババ〉のようなコンセプチャルなスナップ写真、
人影を写すフォトグラム〈Red Room Project〉、など、その多様な作風に気付かされました。
すっきりとしながら非線形に回遊させるような展示空間の作りもスタイリッシュでしたが、
多様な作風につかみどころの無さも感じてしまいました。
B1F展示室では 『ロバート・キャパ 戦争』 [Robert Capa: War]。 戦間期から戦後1954年まで活動した報道写真家 Robert Capa (元々はAndré FriedmannとGerda Taroの2人の共同の名で、Taroの死後Friedmannの写真家としての名となる) の、 東京富士美術館コレクションの Capa の写真約1000点のうち戦争に関する約140点からなる展覧会です。 歴史に関する書籍やTVドキュメンタリーなどで度々使われるような有名な写真が多く観られるのですが、個々の写真というより展示の量に圧倒されました。 今回展示されていた140点でも相当でしたが、Capa のコレクションは約1000点あるのか、と。