1990年代にミュージックビデオの文脈で活動を始めたインド出身のアメリカの映像作家 Tarsem Singh の2006年の映画です。 当時は自分の興味のスコープ外という感もありましたが、4K版による再上映がロングランしていることもあり、観てみました。
20世紀初頭、サイレント映画時代のハリウッドで働いていたものの大怪我で下半身付随となり、恋人を主演俳優に奪われ、自棄的になったスタントマンと、同じ病院に入院していたオレンジの農場で働くインド移民の労働者の娘の交流と心情の変化を、 彼が彼女に話して聞かせる劇中劇の山賊を主人公としたおとぎ話と重ねて描いた映画です。 石岡瑛子が衣裳デザインを手がけ、世界遺産をロケ地に撮られた、劇中劇の場面でのスタイリッシュでファンタジー的な映像美は、さすがミュージックビデオ出身と思ったリオしました。 やはりミュージックビデオの文脈でも知られる Spike Jonze や David Fincher が presenting としてクレジットされているというのもあるでしょうか。 また、ナラティブの面でも病床のスタントマンや少女の心理描写も期待以上に丁寧。 サイレント映画時代の冒険活劇やスラップスティック・コメディにおけるスタントへのオマージュも感じられました。 しかし、おとぎ話などそんなものかとも思いますが、そこでの男女関係や主従関係の描写はステロタイプで内面描写に欠け、社会的背景の描写も薄く、少々空虚で引っ掛かりに欠けたでしょうか。