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Review: 『逝ける映画人を偲んで 2023-2024』「久里洋二 短編アニメーション作品集」「田名網啓一 作品集」 @ 国立映画アーカイブ (映画)
2026/03/29
嶋田 丈裕 (Takehiro Shimada; aka TFJ)

国立映画アーカイブでおよそ1年ごとの頻度で開催されている映画人追悼企画 『逝ける映画人を偲んで 2023-2024』で、 実験アニメーション関連の以下のプログラムを観てきました。

『久里洋二 短篇アニメーション作品集』
approx. 87 min.
「人間動物園」
1961 / 久里実験漫画工房 / 2 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二; 詩: 谷川 俊太郎; 音楽: 武満 徹; 声: 水島 弘, 岸田 今日子.
「LOVE(愛)」
1963 / 久里実験漫画工房 / 5 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二; 詩: 谷川 俊太郎; 音楽: 武満 徹; 声: 水島 弘, 岸田 今日子.
「THE BUTTON(ボタン)」
1964 / 久里実験漫画工房 / 3 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二.
「アオス/AOS」
1964 / 久里実験漫画工房 / 3 min. / 35 mm / B+W
監督・撮影: 久里 洋二; アニメーション: 古川 肇郁, 林 政道; 声: 小野洋子; 撮影: 古城 紀久子, 乃村 知子.
「SAMURAI/侍」
1965 / 久里実験漫画工房 / 7 min. / 35 mm / B+W
監督: 久里 洋二.
「FLOWER(花)」
1967 / 久里実験漫画工房 / 1 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二.
「The ROOM(部屋)」
監督・撮影・アニメーション: 久里 洋二; 音楽: 一柳 慧.
1967 / 久里実験漫画工房 / 5 min. / 35 mm / color
「WHAT DO YOU THINK?/あなたは何を考えているの?」
1967 / 久里実験漫画工房 / 5 min. / 35 mm / color
監督・撮影・アニメーション: 久里 洋二; 詩: 谷川 俊太郎; 音楽: 山崎 宏; 声: 水島 弘, 岸田 今日子.
「AU FOU!(オー・フー!/殺人狂時代)」[カラー版]
1967 / 久里実験漫画工房 / 10 min. / 35 mm / color
監督・アニメーション: 久里 洋二; アニメーション: 古川 肇.
「二匹のサンマ」[カラー版]
1968 / 久里実験漫画工房 / 13 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 撮影: 古川 タク; 音楽: 山上 路夫.
「THE MIDNIGHT PARASITES/寄生虫の一夜」
1973 / 久里実験漫画工房 / 10 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 音楽: 冨田 勲.
「LIVING ON THE BOUGHS(木の上の生活)」
1974 / 久里実験漫画工房 / 2 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 音楽: 武満 徹.
「POP(ポップ)」
1974 / 久里実験漫画工房 / 3 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; アニメーション: 佐々木 一恵.
「MANGA(漫画)」
1977 / 久里実験漫画工房 / 7 min. / 35 mm / color
監督: 久里 洋二; 音楽: 山崎 宏.

1950年代に活動を始め2024年に亡くなった一コマ漫画、イラストレーターで主に知られる作家 久里 洋二が、 1960年に設立した久里実験漫画工房の映画部で制作した短編アニメーションを回顧する上映です。 映画祭などでの受賞作を中心に1960年代から1970年代にかけて制作した14作品が年代順に上映されました。

彼の主要な仕事の一つである一コマ漫画のスタイルで描かれた絵を使ったドローイングの切り紙によるアニメーションです。 線画を基本として、彩色されている場合もありましたがほぼ白黒で、余白多めの画面です。 声が付けられていても叫び声のようなほぼ抽象的なもののみで、 シュールでユーモラスなオチのある寓話的というか一コマ漫画的なスケッチを連ねたような作風です。 悲鳴から声を連ねて音楽を作っていくかのような「人間動物園」でも、短いながら檻の中の男女のSM的な関係を思わせる状況を描きます。 そんな寓話的なシチュエーションから開発を皮肉に描いた物語を作り出した「二匹のサンマ」、 悪夢的なイメージの連鎖に仕上げた「THE MIDNIGHT PARASITES/寄生虫の一夜」が、特に印象に残りました。

「人間動物園」のような作品に典型的ですが、抽象的な音使いというか声使い音楽的です。 音楽クレジットに 武満 徹 や 一柳 慧 の名前があがり、小野 洋子 のパフォーマンスでの声が使われたり。 これらの実験的なアニメーションは草月ホールが発表の場としていたということで、 当時の前衛がジャンルを越えた狭いサークルで、まだ前衛たりえていた20世紀半ばという時代も感じました。

『田名網敬一作品集』
approx. 51 min.
「Commercial War」
1961 / 5 min. / 16 mm / color
監督・アニメーション: 田名網 敬一; 撮影・アニメーション: 田中 邦彦; 編集: 杉山 忠夫; 音楽: 山崎 宏.
「Artificial Paradise/人工の楽園」
1975 / 14 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: 遠藤 正.
「Crayon Angel」
1975 / 3 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: スタジオU; アニメーション: 佐藤 由美; 彩色: 田里 美紀.
「Sweet Friday/優しい金曜日」
1975 / 3 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: スタジオU; アニメーション: 佐藤 由美; 彩色: 田里 美紀.
「WHY」
1975 / 10 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: 遠藤 正; 音楽: 西岡 たかし.
「4 EYES」
1975 / 9 min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 撮影: 遠藤 正.
「闇の記憶・夢の陰影」
2000 / 4min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 動画: 相原 信洋; 音響: 稲垣 貴士.
「風の呼吸(アニメーションによる往復書簡)」
2000 / 4min. / 16 mm / color
監督: 田名網 敬一; 監督・撮影: 相原 信洋; 音響: 稲垣 貴士.

1950年代後半から主にデザイナー、アートディレクターの文脈で活動し、田名網 敬一 が制作した短編映画の回顧上映です。 2024年に国立新美術館で大規模な回顧展 『記憶の冒険』 が開催されましたが (残念ながら見逃しました)、その会期中に亡くなりました。 上映された作品は1971年、2000年、2001年制作が1本ずつ、残り5本は1975年の制作のものと制作時期に偏りがあり、その上映順も年代順ではありませんでした。

久里 洋二 の下でアニメーションを学んだと言われ、アニメーション技法を使った表現も使われていますが、 写真などのイメージを加工してコラージュする技法も多用されます。 ナラティブの要素は排除され、カラフルで画面を埋め尽くすようなイメージは、シュールというよりサイケデリックです。 一コマ漫画と商業美術のディレクターというバックグラウンドの違いもあるかもしれませんが、 20世紀半ばのモダニズム的な表現から、1960年代後半以降のカウンターカルチャー色濃い表現へ。 久里 洋二 と続けて観て、そんな時代の移り変わりを感じました。