スコットランドを拠点とする演劇アーティストによる作品の招聘公演です。 演出の Matthew Lenton (Vanishing Point) は2024年に KAAT との共同制作で 『品川猿の告白』 Confession of a Shinagawa Monkey を上演していますが観ておらず、 作者や演出者のバックグラウンドには疎いものの、聾者 (耳が聞こえない人) が作、出演し、 英語とイギリス手話のセリフはあるもののむしろノンバーバルな演技で描いているという所に興味を引かれて、観ました。
認知症のためケアホームに入った耳の聞こえない Harry と手話のわからない介護士 (nurse) May の交流を描く1時間余の作品です。 といっても、最初 May は手話を理解せず、May が手話を使えるようになった頃には Harry は痴呆症でそれを理解できなくなってしまう、 そんな言葉による会話が不能な中でも行われる細やかな交流が描かれます。 フィジカルで演技や抽象的な演出で象徴的に演じられる場面がもっと多いかと期待しましたが、 この部分についてはストレートプレイに近い演出で、会話の不可能性を示すよう。 むしろ、印象に残ったのは、Harry の回想として若い頃の Harry と亡き妻 Elise との記憶がハーフミラー越しで演じられるところ。 ライティングによって闇の向こう浮かび上がっては鏡となって消えることにより、 そんな回想が認知症によって現実と混濁し崩れ落ちていていく様を表現しているかのようでした。