1960年代末から、その音域広いヴォーカル・テクニックを駆使し、主に現代音楽の文脈で パフォーマンス・アートやコンテンポラリーダンスの作品とも言えるような 時にサイトスペシフィックで、マルチディシプリナリーな music theater や opera 作品を 手がけてきているアメリカの作曲家/パフォーマー Meredith Monk のドキュメンタリー映画です。 彼女のドキュメンタリーとしては、Peter Greenaway が1983年にイギリスのTV局 Channel 4 のために制作したドキュメンタリーシリーズ Four American Composers の1篇として取り上げられたものを2000年頃に観た以来でしょうか。
内容は、若干の時間進展に前後はあるものの、おおよそ年代順に1960年代末から現代に至るまで、 その作品の上演の様子のアーカイブ映像に本人や関係者のインタビューを交えたものになっています。 制作の裏話や、影響を受けたミュージシャンへのインタビューだけではなく、母親やプライベートでのパートナーだった2人の話など、かなり私的な内容にも踏み込んでいました。 母親との関係は作品の題材へ影響与えているようでしたが、パートナーの話は踏み込まなくても良かったのでは。 それよりも上演のアーカイブ映像や制作エピソードにもっと集中して欲しかったでしょうか。
1980年代からレコード/CDで過去の作品へ遡りつつ新作をフォローしてきましたが、 Monk の作品はパフォーマンスの要素が大きいので、断片的であれパフォーマンスの上演の様子が高画質・大画面で観られるのは有難いです。 特に1970年代頃までの作品、Guggenheim Museum New York で上演した最初期の Juice: A Theatre Cantata In Three Installments (1969) や、 広い芝生の上で大人数で上演された Needle-brain Lloyd and the Systems Kid (1970) と思われる映像、 女性の人生を時間逆行で描く Education of the Girlchild (1972) など、 最初期のものは初見のものも多く、とても興味深く観ました。 最近のもので目を引いたのは YouTube 公式チャンネル で観られるものも少なくありませんでしたが、 1991年 Houston Grand Opera 委嘱/初演のオペラ ATLAS と、 その2019年 L.A. Phil @ Walt Disney Concert Hall での再演の映像など、 収録していたのであればフルで観たいものです。
『メレディス・モンク 踊る声、歌う身体』公開記念特別上映として、 1980年代に Meredith Monk が監督した映画2本が上映されました。 2010年代に、公式サイトで売られていた2 on 1 DVDを入手して、観たことがありましたが、 大画面で、それも Book Of Days はフィルムでの上映で観る良い機会かと、併せて観ました。
1892年から1954年の間、アメリカへの移民受入をする移民局が置かれたニューヨーク・エリス島の移民局跡の建物を舞台とした白黒の映画です。 Meredith Monk の祖父母がユダヤ系のロシアからの移民で、自身のルーツを辿るような作品でもあります。 1905-25年に Augustus Sherman がエリス島で撮ったようなヴィンテージの移民の白黒写真に着想し、 写真に撮られたような人々の様子を、半ば廃墟のようになった撮影当時の移民局の建物内で、半ば抽象化されたダンスと音楽という形をとって浮かび上がらせていました。
現代のヨーロッパの旧市街のとある建物の地下室に見つかった朽ち果てた家具や壁のドローイングから、 その街の、キリスト教徒とユダヤ教徒が共に暮らした中世の出来事を浮かび上がらせる映画です。 ユダヤ人の印である黄色い丸印を付けることを強制されるなどの差別はあれど市場でやりとりする程度には共存していた2者が、 疫病の流行を景気に暴力的に迫害されることになる様を、 具体的な演劇としてではなく、Ellis Island 同様、 半ば抽象化されたダンスと音楽という形をとって、詩的に浮かび上がらせます。 制作当時は当時のAIDSのエピデミックを想起させるものとされていましたが、今であれば、新型コロナでしょうか。 1980年代という時代の限界もあるのでしょうが中世の描写が少々キッチュにも感じられましたが、 劇映画的なリアリズムに基づく演出ではないこともあり、その点は問題には感じませんでした。