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Compagnie Off: Les Girafes: Opérette Animalière around 六本木ヒルズ, 東京, 2013

Text Last Update: 2012/05/14 | 撮影 on 2012/04/28,29 in 六本木ヒルズ界隈
六本木ヒルズ界隈
2013/04/28 16:30〜18:00, 2013/04/29 18:00-19:30.
Concept, scénographie et mise en scène: Philippe Freslon.
Musique originale: Benoît Louette & François Joinville.
Avec: Irina Tiviane (La Diva), Emmanuel Raoul (Monsieur le Directeur).

Compagnie Off は、1986年にフランス中部のトゥール (Tours, Centre, FR) で設立された、 “Arts de la Rue” (野外・公共の空間で行われるパフォーミング・アーツ) のカンパニー。 当初は小規模なものだったが次第に規模を拡大し、 巨大な装置も駆使しつつオペラやサーカス、生演奏の音楽といった要素を取入れた街頭でのパフォーマンスを上演している。 六本木ヒルズ十周年イベントの一環として、ゴールデンウィーク前半の4月26日から29日にかけて、 彼らは Les Girafes と題した 高さ6〜7mはあろう赤いキリンを象った人力で動く装置を使ったパフォーマンスを展開した。 26日から28日にかけては66プラザ等で『キリンの放牧』と題したウォーキング・アクトを行い、 29日の18時からはけやき坂とアリーナを使って『キリンたちのオペレッタ』 (Les Girafes: Opérette Animalière) を上演した。 そのうち、28日の16時半頃から66プラザやウェストウォークで行われたウォーキング・アクトと、 29日の『キリンたちのオペレッタ』を観てきた。

赤いキリンは、鉄フレームに車輪を付けた台車の上に、 軽い素材のフレームに布を張った長い首と胴を乗せたような構造。 高足を履いた2人がその胴のなかに乗り込み、彼らの足がキリンの4本足となる。 移動は、高足で地面を蹴って行う。 頭からは持ち手のついたワイヤが2本下がっており、 前に乗った人がワイヤを引くことにより首を上下左右に動かすことができる、という仕掛けだ。

ウォーキング・アクト『キリンの放牧』は、 屋外のテラス 66プラザはもちろん、 屋内のショッピングモール ウェストウォークの吹き抜けのあるエリアにまで入り込んでいた。 歩きまわって子供を中心としたヒルズの買物客と触れ合ったりするだけだろうと予想していたが、 最後の66プラザではウェディングドレス姿の女性と燕尾服姿の男性が登場。 ひとしきり歌い踊った後、女性はキリンに乗って退場していった。 その時は特にオペレッタ風にということはなく、むしろ。フラメンコ風だった。

アリーナとけやき坂を舞台とした『キリンたちのオペレッタ』では、 主要な役はカンパニーのパフォーマーが演じていたが、 地元の中学校の生徒達もサーカス団員などのエキストラとして参加していた。 おそらくフランス語と思われる歌詞が判らなかったので誤解もあるかもしれないが、 登場するのはサーカス団長率いるキリンの群れとその美しい若妻である歌姫の一団、 その中の団員の女性の一人が団長を誘惑、嫉妬に狂った歌姫はサーカス団長を殺して無理心中というメロドラマ。 そんなストーリーをセリフを用いず身振りとサーカス団長と歌姫のオペラ的な発声の歌で演ずる、 という意味でオペレッタ風だった。 タイトルにあるオペレッタはあくまでレトリックだろうと予想していたので、 歌い出したときはちょっと驚いた。 また、キリンや歌姫らの立つ円筒状のステージだけでなく、サーカス団長の乗る傾いたベッド、 投光器、打楽器などを備えた音楽車や、紙吹雪を吹き出す車輪付き装置なども一緒に移動して パフォーマンスが繰り広げられた。

観客が全体像や細部を捉え辛い大規模な野外パフォーマンスで微妙で複雑なことを描くことは難しく、 ストーリーや登場人物が単純で類型的になるのは仕方ないとは思う。 しかし、そんな単純さにオペレッタ的な派手さが加わり、少々キッチュに感じられたのも確か。 しかし、商業施設でのイベントだというと考えると、 アイドルやキャラクターなどのポピュラリティに依存したイベントに比べたら、 遥かに意欲的な内容だったとも思う。

以下、パフォーマンスの様子を写真で紹介。

28日の16時半頃。 66プラザに面した森タワー入口でスタンバイして待機中のキリン。 見張りのサーカス団員が子供を呼び寄せて、キリンに触らせたり。

66プラザを動き回るキリン2匹。 Louise Bourgeois の雌蜘蛛の彫刻 Maman と。

単に動き回っているだけだろう、と、一旦66プラザを離れてアリーナへ。 別のパフォーマンスを小一時間観た後、 イベントのフライヤでも配布していないかとウェストウォークに寄ってみたら、中にもキリンが2匹。

66プラザにいた2匹がウェストウォークへ入り込んできたのかと思いきや、66プラザへ出たら、こちらにも2匹。 そして、花嫁姿の女性が出てきて歌い出します。

さらに、燕尾服姿の男性も出て来て、フラメンコ風に歌い踊ります。

そして、花嫁はキリンの背に乗って、去っていきました。 これで、この日のパフォーマンスは終了。 これは翌日のオペレッタの伏線かもしれない、と思いながら観ていたのですが、 結局関係は判りませんでした。

アリーナでは翌日に向けてパフォーマンスの準備中。

29日の夕方17時過ぎ。まだ人が乗り込んでいない足無しのキリンが9台、アリーナに駐車中。

パフォーマー達の準備風景。 キリンに乗り組むパフォーマー達が、スティルト (高足) を装着中。 高足に赤いカバーを付けたものが、キリンの足の部分となります。

パフォーマンスが始まる前のけやき坂。 路面の一部はチョークの落書きで飾り付けられていました。

アリーナからけやきへ移動を始めるサーカス団とキリンたち。 まだこの時点では静かに淡々と。

けやき坂を交差点まで下りきらないレジデンスD棟とテレビ朝日の間のあたりで開演。 傾いたベッドの上で寝るサーカス団長。その安眠を妨げるかのように、ベッドが動き出します。

シーソー状の人力で動く昇降機を使い、歌姫がステージの上へ。

そして、オペラの発声で歌い始めます。 歌詞がわからずとも、団長のベッドの動きと歌姫の歌声は、それから起きる不穏な出来事を予感させます。

三人目の登場人物、サーカス団長を誘惑するサーカス団員の女性が、昇降機に乗って登場。

この女性は団長のベッドに入り込みます。 この時の団長はこの女性を殴り倒し、昇降機に乗ってベッドから逃げ出します。 これで第一幕は終了、でしょうか。

団長が火の輪を使い、キリン達を操ります。

団長の叩くリズムに乗って、サーカス団とキリン達はけやき坂を上へと移動し始めます。

昇降機に乗って観客たちに金の紙吹雪を振り撒く女性サーカス団員に先導され、移動するキリン達。

アリーナ入口前で一旦止まって。歌う歌姫。

キリンへの餌やり。餌はドライアイスのスモーク。

ヒルサイドとレジデンス棟を結ぶブリッジをくぐって、さらに Grand Hyatt Tokyo の裏まで移動。

団長が歌姫へ愛の赤薔薇の花束を贈ります。祝福するよう紙吹雪も吹き上がります。幸せの絶頂。

アリーナ入口へ向かって引き返すよう移動する一団。 歌姫の幸せもつかの間、背後から件の女性サーカス団員が赤薔薇の花束を持って迫ります。

今度は団長は女性サーカス団員の誘惑に負け、ドラムのステージで情事。 それに気付いた歌姫は怒り狂い、キリン用の笞で打ちのめします。

さらに歌姫は剣を手に、逃げる二人を置います。 逃げ先はアリーナのステージ。 キリン達もサーカス団員も一緒にアリーナへ集まってきます。

ついに団長を追いつめる歌姫。

団長を殺して、歌姫も自死。 悲劇のクライマックスに舞台がせり上がり、血の紙吹雪が吹き上がります。 これで閉幕。

カーテンコールでは、一転して和やかに。

l'Éléphant Vert [写真集] や Strange Fruit [写真集]、 World Street Performance [写真集] など、 六本木ヒルズで大道芸や野外パフォーマンスのイベントを長年担当されていた方が辞められた、という話を聞いたのは、約一年前。 実際、ここ数年は一時に比べ大道芸のイベントが減っていましたし、予算が付き辛くなっているという噂を耳にすることもありました。 六本木ヒルズではもうこういうパフォーマンスはやらなくなってしまうのかな、と思いつつあったので、 十周年とはいえこのような野外パフォーマンスをやってくれたのは、嬉かったです。 東京の商業施設でもこのようなパフォーマンスを呼ぶところは他にほとんど無いので、 六本木ヒルズには今後もこのような野外パフォーマンスや大道芸の上演を続けて欲しいものです。