『多摩川アートラインプロジェクト』は、 2007年に始まった地元密着型のアートイベントだ。 東急多摩川線沿線と多摩川駅前の田園調布せせらぎ公園を会場としている。 去年は見逃してしまったが、今年は9月に観た Florian Claar, The Flying Dutchman Project 2008 [写真集] の続きを目当てに足を運んでみた。 といっても、観たのは多摩川駅と田園調布せせらぎ公園の界隈だけだが。 せっかく行くなら多摩川線回送列車内で開催されるパフォーマンス 柴 幸男・中野 成樹・山下 残 『多摩川劇場』 を観ようかと思ったのだが、整理券売切。けっこう盛り上がっていたようだ。
多摩川駅の改札を出てすぐに、 アトリエ・ワン (Atelier Bow-Wow) + 山崎 徹也 『インフォトンネル』。 このイベントのインフォメーション・ブース。 枠には、渡辺 元佳 『多摩川"猿"』が掴まっている。
改札から後を振り返ると、階段の照明が 逢坂 卓郎 『Rainbow steps — 虹の階段』。
改札を出て左、田園調布せせらぎ公園入口脇には、 隋 建国 『Made in China』が。 公園内の広場にでも設置されるとおもいきや、 入口に檻に入れられて置かれているとは。それもちょっとした皮肉か。
その隣では、間島 領一 の 食アート『マジマート』の一環『羽田焼き』の屋台。 公園内を観終えてからと思っていたのだが、 公園を出るときには既に撤収中だった。残念。
ポスターやパンフレット表紙にフィーチャーされている 今年のメインとも言える作品は、もの派の作家 関根 伸夫 の 『位相・大地』 の40年ぶりの再制作。 田園調布せせらぎ公園の最も奥まった所に作られていた。 周囲を木立に囲まれた空間に置かれているためか質量感があまり感じられなかった。 むしろ、地面に空いた穴から崩すことなく土の円柱を抜く方法が気になった。 おそらく鋼の円筒を地面に打ち込んで抜くのだろうが、 ここまできれいにやるには、それなりのノウハウが必要だろう。 周囲を柵で囲って立入禁止にしており、近付いて観られなかったのは少々残念。
この作品の制作の様子を、次の blog でレポートしている: 「関根伸夫 「位相 - 大地」の再制作」 (『TABlog』, Tokyo Art Beat, 2008-11-03)。 このレポートを見ると、土の円柱を抜いたのではなく、 円形の穴も土の円柱も型枠を使って整形している。 土の円柱の横縞は、突き固めのステップによって生じたものだろうか。 もっと特殊な工法で作っていることを期待していたのだが、 普通にストレートな手法で、少々肩透かしされたような気分にもなった。 (2008/11/09追記)
n北川 貴好 『繋がりの庭 tyre-plant』 は、タイヤを敷き詰めた中に細木を立てたもの。 まるでタイヤ公園であるかのように、普通に子供の遊び場になっていたのが、 面白かった。
公園の入口近くの広場には、浅葉 克己 + 内田 繁 『木・林・森』。 野外彫刻としては繊細に過ぎるかなあ、と。
Florian Claar の Flying Dutchman は、 田園調布せせらぎ公園入口近くの広場の奧、木立の中に半ば身を隠すように置かれていた。 ライトアップの設備も無く、日が暮れたらすぐに暗闇に沈みそうだ。 それも幽霊船らしいのかもしれない。 ところで、作品のタイトルが The Vessel Project II - Fáfnir となっていた。"Flying Dutchman" を使うのはNG、ということになったのだろうか。
The Flying Dutchman / Vessel Project に連なる Florian Claar の作品 Thing 1 + Thing 2 が、東急の蒲田駅のホーム図上にも設置されている。 蒲田駅のホームにまるで列車のように "Flying Dutchman / Vessel" が停車している イメージが大きくプリントされて掲げられている。 この駅にも幽霊船がやってきたかのように。 このように、虚実を含めて、あちこちに幽霊船を登場させていくのだろうか。