8月20日(旧暦7月10日)
5ヶ月ぶりの石垣空港、雨で濡れた滑走路に降り立つと湿気を含んだもわっとした空気に包まれる。途中の那覇では晴天だったのだが、400kmの距離は天候を変える。昨日発生した台風が台湾付近にやってきている。今日から波照間島の宿、「たましろ荘」に7泊する予定なのだが、果たして今日中に渡れるだろうか。
市内に出てA&Wで昼食。留守電のチェックのため携帯の電源を入れるとちょうど、たましろ荘にいるはずの羽生さんから電話が入る。夕方から船が欠航しそうなので、泊まっていた人の大半が昼の船で石垣に引き上げてきたとのこと。離島桟橋に行くと、いた。4年前のムシャーマの時に会って以来、ほぼ毎年波照間で一緒になっていたのだが、今回はそうならなかった。
海からの風は確かに強まってきている。だが、雨は降っておらず、晴れ間も覗いているので、希望を託す。
しかし、15時30分発の3便(最終便)は、「ニューはてるま」は早々と欠航を決め、「安栄」も、船長がぎりぎりまで迷ったあげく欠航となった。明日もわからないとのこと。いつもの安栄観光なら出港しているのだろうが、最近事故が何度かあったせいか弱気だ。
仕方ないので、たましろ荘に電話。明日、下手すれば明後日まで欠航になるのではないかと言われる。船が動き次第行く事にする。
石垣の宿の手配をする。4年前に泊まった八洲旅館YHが取れる。激しい通り雨が降るが、すぐにやんだ。宿に荷物を置いた後、市立図書館で八重山関係の文献を読み漁る。
公衆電話から波照間の「けだもと荘」に泊まっている木綿子さんに電話。今日島で会うはずだったのだ。彼女達は明後日には東京に戻らなければいけない。困ったねえと話す。
図書館を出ると、空は晴れ渡っている。こんなよい天気なのに渡れないとは。
夕食。最近できた居酒屋「南風」(パイカジ)でやけ酒を呑む。従業員は大半が内地の人のようだ。こぎれいな店内は地元の人と観光客が入り乱れて賑わっている。
宿に戻る。ときおり激しいスコールが屋根を叩く。明日は大丈夫なのだろうか。
8月21日(旧暦7月11日)
安栄観光、ニューはてるまとも朝の時点で全便欠航が決まる。他の島への便は順調に動いているそうなのだが。与那国行きも出港するという。やはり波照間海路は別格なのか。飛行機は飛ぶとのことだが、満席。木綿子さん達はその飛行機で奇跡的に波照間を脱出できることに。石垣で合流し、いっしょに八洲旅館に泊まることになった。
11時頃、木綿子さんとその知り合いの大橋さん、関さんの3人がレンタカーでやってきた。
空港へ向かい、横浜から来る康恵さんを出迎え。彼女とは3月にたましろで知り合いになった。今日波照間へ渡る予定だったのだが、同じく足止めをくらうこととなった。同じく八洲旅館に泊まることになる。
そのまま5人で石垣島一周に向かう。雲は切れ、日が差してきた。
白保のマエサト食堂で昼食。ここは民宿も併設しており、「たましろ」並に食事の量が多いらしい。白保海岸の船着場に寄る。リーフエッジに砕ける白波が見える。さすがに船影は見当たらない。
国道を北上。のどかな風景がひろがる。めったに車とすれ違わない。
玉取崎展望台。ハイビスカスの咲き乱れる小高い丘。目の前に石垣島のリーフ、そして平久保崎、船越方面が見える。心地よい風が抜ける。定期観光バスが到着し、急ににぎやかに。バスガイドさんの解説は島のおしゃべり好きのおばさんのゆんたくそのもの。
島の北側に回りこむと、風がぴたりと止んだ。吹通川河口のマングローブの小群落に寄る。小規模なマングローブ林がひっそりと。澄んだ水、赤みがかった砂、森の濃緑。音のない静かな風景だ。
米原のヤエヤマヤシ群落へ。何十本ものヤシの木が天に伸びる。幹に耳を寄せると、風の音がする。やしの木の根元は、ふくれあがった椰子の実のかたち。なぜあんな形をしているのか。
ここの売店の生ジュースは水を加えない、おいしいものだった。その場で1杯ずつ、時間をかけてつくってくれる。
すぐ近くの米原ビーチへ。相変わらずキャンパーが多い。ここのキャンプ場は長期生活をしている人が多いことで有名だ。さとうきび収穫の季節や葉たばこ収穫の季節には働き手のスカウトが来るという。曇ってきて、あまり条件がよくないが、木綿子さん達は最後の八重山を楽しむべくシュノーケルに。どんどん遠くまで泳いでいってしまう。
急に激しい通り雨に見舞われる。調理場で雨宿り。米原キャンプ場を主な舞台にした小説の単行本が山のように、打ち捨てられてある。ぱらぱらと目を通してみる。どこか宗教じみた、「向こう側」の感じがする内容。著者が配るために持ってきたものだろうか?
引き上げるころには雨は止み、水に濡れた緑が夕陽に輝く。
夕暮れの川平湾へ。昼間は観光客で賑わう場所だが、この時間はもうひっそりとしている。緑色をした海は確かにきれいだが、波照間のニシハマビーチにはかなわないと思う。
すぐに後にし、日没を眺めに御神崎へ。着いて見ると太陽はすでに雲の中へ沈んでしまっていた。海が菫色に染まっていく。灯台の明かりが回り始めている。丸い明かりがサーチライトのように、そばの山の斜面を走っていく。
宿に戻り、美崎町に呑みにいく。なんくる亭。地元の人でにぎわう居酒屋。ここで絵日記の引継ぎをする。順調にいけば、9月12日まで、波照間で人から人へと引き継がれていくはずのものだ。
閉店まで居座り宿に一度戻った後、近所の駐車場、その名もわくわく駐車場で花火。寝床に着く頃には2時を過ぎていた。明日こそ波照間に渡りたいものだ。
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