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    波照間島あれこれ

    はてるまのしまうた・その2
    ―波照間のうたの工工四―

    「はてるまのしまうた」では、波照間の民謡の概要などについて、紹介しましたが、こちらでは唄三線の演奏に使われる楽譜「工工四(くんくんしー)」をいくつか紹介します。以下に記した譜面は、波照間の方の唄を録音したテープから採譜したものです。歌詞、三線譜については「波照間島のムシャーマ〜南国の豊年祭と祖先供養の祭典〜」(波照間民俗芸能保存会編)掲載の工工四を参考にしました。声楽譜は完全に自力による採譜であるため、多少ニュアンスの違いといった程度の間違いはあるかもしれません。 また、一番入手しやすい 「声楽譜付 八重山古典民謡工工四 上下巻」(大浜安伴著)とは、三線譜、声楽譜共に違っている部分がありますが、これは唄が島から他地域に伝播した際に変化したものだと思われます。

    なお、三線について、入門的なことなどを知りたい方は「三味線をひこう」を参照して下さい。

    凡例

    上段:声楽譜 ライン上○は声出し、□は声切り
    中段:歌詞
    下段:三線譜 ○は休符、’は打音
    枠は一マス一拍

    
    
    三線の調弦(本調子)
    
    女絃 工┌───五───六───七───八────
       ド│   レ   ミ   ファ  ソ   (男絃の1オクターブ高音)  
    中絃 四├───上───中───尺────────
       ファ   ソ   ラ   シ(ややフラット) 
    男絃 合└───乙───老───下老───────
       ド    レ   ミ 
    

    「合乙老・・・」の下に書き加えてある「ドレミ・・・」は、調弦が「本調子」、音高が「四」、キーが男絃の場合に対応する音階です。下記2曲はいずれもそれに該当しますので、三線をお持ちでない方は上記に対応させて譜面をドレミに置き換えれば曲がほぼわかると思います。

    なお、声楽譜の「勺」は「合」の半音下となります。

    波照間島節
    波照間民謡を代表する曲といえる。

    1.波照間ぬ島やよ ハリ だんじゅ ユイナ 豊まれ ショウライ

    2.下八重山(すぃむやま)ぬ島やよ ハリ だんじゅ ユイナ 豊まれ ショウライ

    3.肝(しむ)ん受(し)き願(にが)より ハリ 胸(んね)に受(う)き 願より ショウライ

    4.首里(しゅい)ぬ上(うぃ)が願より ハリ 上(うい)ぬ上(うぃ)が 願より ショウライ

    5.白水(しらみじぃ)ば給(たぼ)らり ハリ 甘水(あまみじぃ)ば 給らり ショウライ

    
    
                                      上 尺 尺   工 五 工  
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬─○─┬───┬───┬───┐
    │ ┌        (前 奏 2回)           ┐   は てぃる       ま 
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 合 七’五   尺   工   工 老’上   尺 老’工   ○   工   五   工
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
        尺 工 尺 上     上   四 老 四 上     尺 四   老   合     老
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┐
    │     ぬ         し         ま       や       よ
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 五   工 老’上 尺’上   工   老   上   尺   四   老   合   合 老’
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
       四  上   四   乙   合   合 老 四     上四老       上   尺
    □──○┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬─□─┬─○─┬───┐
    │  は  り   だ   ん   じゅ  ゆ い な       あ       とぅ  う 
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 四   上   四   乙   合   合 老’四   工   老   合 老’上   尺  
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
      工       尺工    五 工       尺   上  四上 尺 工
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬─□─┬───┐
    │ ゆ       ま       れ       しょ      ら   い   ┌(後 奏)
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 工   合 尺’工   五   工   ○   尺   上   尺   工   合 七’五
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┐
    │                     ┐  
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 尺   工   工 老’上   尺 老’工 │ 
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┘
     
    
    祖平花節(しぃびらぱなぶし)


    祖平花道は港と公民館を結ぶ西北西の道。曲調は沖縄本島古典曲の「南嶽節(なんだぎぶし)」と似ている。 古典の楽曲は各地の民謡に手を加えたものが少なくないので、「南嶽節」も「祖平花節」が改作されたもの かもしれない。(逆に、「南嶽節」が伝播、改作された可能性もある。)

    1.祖平花道からよ サーサー
     かりゆしぬ道からよ サーサー
     シュラヨイシュラヨイキユシディルダキヨ(以下囃子同じ)

    2.かりゆしぬ道からよ サーサー 
     名石北方(ないしょね)道からよ サーサー

    3.誰(たる)ぬ主ど案内(ちかい)すよ サーサー
     何人(じぃり)ぬ主ど御供(うとぅむ)すよ サーサー

    4.我島(ばしま)主ど案内(ちかい)すよ サーサー
     村(ぱな)ぬ主ど御供(うとぅむ)すよ サーサー

    5.宿(やどり)までん案内(ちかい)すよ サーサー
     殿内(どぅんち)までん御供(うとぅむ)すよ サーサー 

    
    
                                      上 尺 尺   工 五 工  
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬─○─┬───┬───┬───┐
    │ ┌        (前 奏 1回)           ┐   し び ら       ぱ 
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 五 七’工 老’上 尺’工   五 七’工 老’上 尺’工   ○   工   尺   工
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
        五 工 尺 工   尺 上 上   尺   工 五 工     五 工   尺   上 
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───□
    │         な   み   ち   か   ら   よ       サー  サー
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 五   工 尺’工   尺   上   尺   工 五’工   五   工   尺   上 
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
      上   四     老 四   上   尺   工 五 工 尺 上 尺 上 四 老   四
    ┌─◯─┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┐
    │ か   り     ゆ し             ぬ み     ち か   ら   よ 
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 尺   四   老   四   上   尺   工 五’工   上 尺’四   老   四  
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
      四 上 四   乙   合   乙 乙合合     勺   合 合 老 上   尺
    ┌───┬───┬───┬─□─┬─◯─┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┐
    │     サー  サー      しゅら よ     い   しゅら   よ   い     
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 上   四   乙   合   尺   合   工 尺 合   合 老’上   尺   合
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
      工    五七 五   工   尺   上   尺 工 四   老 老 四
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───□───┬───┐
    │ き       ゆ   しぃ  でぃ        る だ     き よ
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 工   ◯   五   工   尺   上   尺 工 四   老   四 (後奏は前奏と同)  
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
    
     
    波照間ぬみんぴぃが(ちょうが節)


    八重山で広く唄われている「月ぬ美しゃ(つきぬかいしゃ)」の原形となった「ちょうが節」の、そのまた原型といわれている。(尺を半音下げると「月ぬ美しゃ」のメロディーとなる。)「月ぬ美しゃ」の前半部を「ちょうが節」と呼ぶこともあるようだ。また、石垣の古典民謡としての「ちょうが節」は、歌詞は「波照間ぬみんぴぃが」に近いものの3拍子の全く違うリズムとなっている。

    1.波照間ぬみんぴぃが 夫婦(みうと)美(かい)しゃみんぴぃが ホーイチョウガ

    2.波照間ぬ上(うい)なか 下八重山(すぃむやま)ぬ上なか ホーイチョウガ

    3.弥勒世(みるくゆ)ば給(たぼ)らり 神(かん)ぬ世(ゆ)ば給らり ホーイチョウガ

    4.稔(なう)り世(ゆ)ば給らり 実(みぎ)り世ば給らり ホーイチョウガ

    
    
                                      四四  四   尺 工尺工 
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬─○─┬───┬───┬───┐
    │ ┌        (前 奏 2回)           ┐   はてぃ る   ま   ぬ
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 四   上 尺’工 五’尺   工   五 七’工   尺   四   ◯   尺   工
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
      五 七 五 尺 工     七 五 五 工 尺 尺 尺 上 尺 四 四 老   四
    ┌───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬───┬─□─┐
    │ み ん ぴ ぃ が       み う と   か い しゃ  み ん ぴ ぃ が    
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 五 七’五   工   七’  五   工   尺   上   四   老   四   ◯
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
      尺 工 五   工   尺
    ┌─○─┬───┬───┬───□───┬───┬───┬───┐
    │ ほ   い   ちょ  が 
    ├───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┼───┤
    │ 尺   五 七’工   尺  (間奏、後奏1回;前奏と同じ)
    └───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┴───┘
    
    
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    波照間島あれこれ

    HONDA,So 1998-2000 御感想はこちらへ