そんな感じで3つの行列が3方から公民館まえに入って行った。これで1時間。道端の
日陰にいた見物人達はぞろぞろと公民館の敷地内に移動する。次にそこでこんどは太鼓
や棒術などが披露される。棒術はさすがに格好良く迫力がある。そして締めに念仏踊と
かいう不思議な踊りが行われる。まずお供え物が広場の中心に置かれ、島の要人達がそ
の前に集まりなにやら呪文の様なものを唱える。そのあと棒術で活躍していた民族衣装
の者達が輪になってしゃがみ彼等を取り囲む。そして要人達が手拍子を打ちながらお経
を歌い始めると周りはしゃがんだままぐるぐると周り始めた。これは実に奇妙なものだ
った。しかも観光のためのものではなく純粋に自分達のためにやっているだけに。
これで午前の部が終了した。2時間の休息をはさみ1時から午後の部が始まるという。
人々は家に戻っていく。
宿に戻っても別にすることもないので、公民館のそばの木陰でHさんと雑談をする。彼
女は今回、祭があるということを全く知らないで来たという。そのほうが面白いかもしれない。
話していると島の人がやってきて、余っているからと言ってビールをくれた。暫くして一人の男の子が「しーっ」と口に手を当てHさんの後ろから忍び寄ってきて彼女
を
脅かした。彼は正二君という波照間小学校の5年生。Hさんは一昨日、海に居たときに
知り合ったという。とても元気でひとなつっこい子だ。暫くして3年生の男の子が自転車
に乗ってやってきて、4人で写真を撮ろうということに。辺りに何人か人がいるので彼
等にたのめば簡単なのだが正二君が「自動撮影」に凝っていて、むりやりタイマーで撮
る。しかし、押す時にずれたりと苦労する。
なんとか撮れた頃には6、7人の子供達に
囲まれていた。ちょっと太った子が私の持っていたおにぎりを欲しがる。普通ならずう
ずうしい子だと思ってしまうのだろうが、さっきビールを貰ったせいかすんなりとあげ
てしまった。暫くして彼が、何か飲みたいものがあるか、と言う。そうだなあ、コーラ
なんかいいなあ、と言うと、彼は自転車で去っていき、コーラを持って戻ってきた。そ
この自動販売機で買って来たから、おにぎりのおかえしにくれるという。なんていい子
なんだ。その後は子供達にクイズ責めになる。Hさんは幼稚園の先生をしているだけあ
っ
て子供の扱いが上手く、子供達は喜んで次から次へと質問をしてくる。その相手をして
いるうちにあっという間に午後の部の時間になってしまった。