満月の光 (星空観測タワー屋上から)/95/8/12


波照間島滞在記8/11pt.3

8/11晴れ
その3

夕方になり、宿に帰る。
夕食。いわゆる普通の民宿の夕ご飯の水準は満たしているのだが、たましろの食事のあ とではひどく貧相に見える。常連客に混じって食べるのが肩身が狭い。そうそうに部屋 に戻りたましろからの迎えを待つ。島の最南端にある星空観測タワーに皆で行く約束を していたのだが、結構集落から離れているうえ、夜道なので、ワゴンで送ってもらう事 になっていたのだ。時刻に遅れて車が来る。主人が寄るのを忘れていて、途中で気がつ き引き返してきたのだという。やはり昨日笑ったのは失敗だったのだろうか。
島のど真中にある灯台がサーチライトの様に光を放っている脇を通って、島の最南端にある星空観測タワーへとにぎやかに向かう。

星空観測タワーは、タワーといっても小さな3階建ての建物で、その上に、望遠鏡のドームがある。ちょっと華奢にも見える建物だ。この場所は海が荒れている時には地面が打ちつける波で揺れるというくらいの、厳しい環境で、建てる時には無謀だという声もあったとか。
着いてみると、予想外にも物凄い数の客であふれかえっていた。お盆ということで、帰 省した家族連れやらなにやらが押しかけていたのだった。2階にあるプラネタリウム で、まず夜空の説明を受ける。プラネタリウム、といっても天井が丸い以外はただの小 さな部屋で、椅子もなく、皆狭い中を床に座って天井を見上げる。
その後は、隣の部屋で、今日見える星の説明。今の時期は残念ながら南十字星は見えない。そして、今日は満月なので、星も殆ど見ることが出来ないという。ここの館長は冗談好きの変人だと聞いていたが、この人数(特に子供と年寄り)に圧倒されていた。

いよいよ屋上に上がり、望遠鏡へと行く。月がまぶしい。確かに星はあまり見えないが それでも東京と同じくらいは見えた。ここの売りは、天体望遠鏡をじかに覗くことが出 来ることである。しかし、このような事態なので、一人数秒しか覗けない。木星の縞模 様と、月を見て、時間がつきた。館長によれば、月も満月の時が一番つまらないとい う。確かに真正面から光が当たっていては、陰が出来ないので立体感に乏しい。

屋上に戻る。周りには何もなくあたりが見渡せる。それにしても本当に満月の明りとい うのは強烈だ。海面が照らし出されて、ぎらぎらと輝いている。空に浮かぶ雲も白く浮 かびあがっている。周囲の風景もくっきりと見渡せる。これではたしかに月夜の晩には 夜逃げ出来ないし、月のある夜は気をつけなくてもよい。沖縄にはかつて、満月の夜に 毛遊(もーあしび)という夜遊びをする習慣があったのだが、なるほどこの月明りには なにかかきたてられるものがある。

帰りもひとりさびしく途中下車。宿に戻り、部屋で寝転んでいるうちに眠ってしまっ た。


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