今日は波照間での最終日。昼の船で石垣へ戻る。それまでの間、島を一周することにし
た。『けだもと』から自転車で『みのる荘』に行き、原付を借りる。自転車でまわって
もよかったのだが、このほうがてっとりばやい。『たましろ』の前を通ると、皆がくつ
ろいでいた。早稲田のI君はもう一泊、Hさんは同じ昼の船で島をでるそうだ。
製糖工場をちょっと外から覗いた後、島一周道路にでる。この道は海岸からは一定の距離を保ったまま、ちょうど島よりひとまわり小さい楕円を描いて一周している。島の北側から東へと向かう。風が心地よい。
とちゅうシムスケーという、牛がみつけたという井戸に寄ろうとするが、場所がよくわからない。海へと下っていく砂利道をいくと道端に湧き水の、小さな水場があって、軽トラックで乗り付けたおじいさんがタンクに水を汲んでいた。そこで、これがシムスケーなのかと尋ねてみる。おじいさんはにこにこしながら、答えてくれた。しかし、しかし何を喋っているのかは全く理解できなかった。どうやらここではないらしいということはわかったのだが。しょうがないので、愛想笑いをして、礼を言い、その場を去った。やはり、年寄りはヤマトゥーグチ(標準語)を喋らないのだろう。
結局、シムスケーの場所はわからないまま、さとうきび畑を進んでいるうちに空港への
分岐にきてしまった。そのまま空港へと向かう。空港は島の東端にある。暫くして目の
前に現われた空港の建物は噂以上のものだった。ローカル線の無人駅に毛が生えたよう
な、小さな平屋。ちょうど石垣行きの飛行機が客をのせたところで、建物の中に入ると
見送りの人が数人がいた。眼の前に青いアーチがあって、それが手荷物検査機兼改札
口、そしてそれをくぐるといきなり滑走路にでるようになっている。後は売店が一軒
と、甲子園の中継を流しているテレビ、いくつかのベンチだけ。小さな飛行機が飛び立
った。ゆっくりと小さくなって、ラジコンの模型のように青空に吸い込まれていく。こ
の一本を迎え、送出すためだけにこの空港は開いている。10時半にして今日の空港の
仕事は終わりだ。