ダイビング初心者の方へ
Cカードを取ってすぐに、ハウスリーフをバディ同士で潜りたいと おっしゃる方や、アリ環礁の多くの島のようにボートダイブが原則バディ同士という島に 行きたいとおっしゃる方からのメールを、 最近になって、とみに多くいただくようになり、気になるので うるさいことを書かせていただきます。以下、私見ですが、
ガイド無しでダイビングするということを、安易には考えないでください。
オープンウォーターのCカードを取得したということは、講習を受けたのと同程度 の環境で潜れるだけの、知識と技術を身に付けたことを認定されたに過ぎません。
(少なくともPADIではそうですし、ほかの多くの団体についてもそうでしょう。)
多くの方は講習は、深度の浅い、流れもほとんど無い、やさしい海で 受けられたと思います。それだけでは、ガイド無しで潜るには不十分であると、私は考えます。
海は、流れが急にとても早くなることも、波が高くなることもあります。 ダウンカレントと言って、潮が下向きに流れて深場に引きずり込まれそうになることもあります。
これは、ハウスリーフでも同じです。ボートで迎えに来てもらえるボートダイブと違って、自力でエグジットポイントまでたどり着かなくてはいけないハウスリーフの方が、むしろ潮の流れには注意する必要があります。
また、ファンダイブでは、講習よりずっと深く潜ることもあります。 初心者は一般的に、水中で無駄な動きが多い分、慣れた人よりエアの消費も早いので、 うっかり他の人と同じ調子で潜っていると、慣れた人よりずっと早く エアが無くなってしまうということは多々あります。
フィンキックの上手な人には、どうってことのない強さの流れでも、フィンキックが うまくない人は、逆らって泳ぐことが出来ずに、流されてしまうというだってあり得ます。ガイド無しで潜るということは、自分やバディに何らかのトラブルが起こった際に、 事故に結び付かないように自分たちだけで対処して、生還しなければいけない ということです。
トラブルの種類には、器材のトラブル、水圧による体調の変化、海況の変化など いろいろあります。
潮の流れの微妙な変化でも、すぐに気付かずにいると、極端な話、気付いた 時には、逆らって泳ぐことが出来なくなっていて、外洋に流されてしまう、というような 事故にもつながりかねません。中性浮力や水中での無駄のない動きなどは、理論だけで身に付くものではなく、 最初は実際に何度か潜って、試行錯誤を重ねながら身に付くものです。
まずは、そういった基本的なスキルを、自分のレベルに合った穏やかなポイントで 練習して身に付け、それに加えて更に色々な環境の海で潜って経験を重ねて初めて、 ガイド無しで潜っても起こり得る様々なことに対処できるように なるのだと思います。 (ダイビングの基本的なスキルとは)
ましてボートダイブでガイド無しで潜る場合、今まで1度も潜ったことのない不慣れな ポイントを、いきなりガイド無しで潜ることになります。十分な注意が必要だと思います。モルジブは、最近は日本人イントラが常駐してブリーフィングが日本語で受けられ、 ガイドさんが引率してグループでまとまって潜るという日本的なケアを する島が増えて来たので、 初心者でも行けるような書き方が増えて来ましたが、
バディ同士のダイビングが多く行われていること、流れが早くなったり複雑になったりすること があることなどから、 つい2〜3年前のダイビング雑誌には、最低50本は経験してから行くようにと書かれて いた、基本的には中上級者向きの海です。
自分のスキルや経験に合った、島やポイントや潜り方を選ぶ必要があると思います。私は、リゾートダイバーを否定するつもりはまったくありませんが、 ダイビングは、基本的なことをきっちりこなせてはじめて安全と言える スポーツだと思うので、初心者の頃は初心者なりに、 自分のスキルに合った穏やかな場所で、ガイドさんについて潜る必要はあると思います。
ガイド無しが普通の島でも、頼めばガイドさんが付いてくれるかも知れませんが、 そういう島では、ガイド無しという潜り方に見合った人数のガイドさんしか いない訳で、必ずガイドさんに付いてもらえるかどうかはわからないと思います。一方、バンドスやヴァドゥのように、ハウスリーフがバディ同士で潜れて、 かつ初心者や自信のない人向けにはガイド付きのハウスリーフ・ダイブが 制度として整っていて、 ボードダイブにもガイドさんが付く島もちゃんとあります。
とはいえ、モルジブなんて、そうそう何度も行けるところではありませんから、 ハウスリーフをバディだけで潜りたい、 希望の島に行きたいという気持ちもわかります。
私が言いたいのは、初心者であれば、ガイドの付く島を選ぶか、 もしガイド無しで潜りたかったら、 それなりに経験を積みましょうということです。
もし、あまり遠くないところに海があるような環境にお住まいならば、 出発前に出来るだけたくさん、ガイド付きで潜っておくことを おすすめします。 ダイビングの技術は、少なくともごく最初のうちは、理論だけで身に付くものでは なく、実際に潜ってこそ身に付くものだと思いますので、 最初だけは頑張って練習しておくことをおすすめします。 (初心者向け伊豆のショップのご紹介)周りの人を見ていると、ブランクが無いとして20〜30本位潜っていれば、 水中である程度の余裕が出来始めるように思うので、 ハウスリーフをバディ同士で潜りたい方はとりあえずその位を、 当面の目標にされてはどうかと思います。
Cカードを取ってから最初の20本位を、ブランクを空けずに集中して潜った人なら、 20本位でも結構上手になっていると思いますが、 途中でブランクが空いた人は、もう少し練習した方が良いと思います。
ボートダイブでもバディ同士で潜る島に行かれる方は、それまでの潜り方にもよりますが 40〜50本位は潜っておいた方が良いのではないでしょうか。本数的にそれが無理であっても、なるべくたくさん潜っておくことをおすすめします。
5本よりも10本、10本よりも15本。
個人差はもちろんありますが一般論として、9本のアドバンス・ダイバーより20本の オープンウォーター・ダイバーの方がずっと上手だと、私は思います。
もし、ブランクが空いている 人なら、プールでリフレッシュコースを受けておくだけでも、受けないよりはずっと ましです。ただし、単に本数をこなせば良いというものでもありません。 ばくぜんとガイドさんについて潜るのではなく、 毎回テーマを設けて、自分の苦手なことを練習するようにすれば、上達が早いと 思います。 自分では弱点がわからないのであれば、潜る前にガイドさんにお願いしておけば、 簡単なアドバイスはしてくれるでしょう。
また、Cカードを取ってから、なるべく間をおかずに継続的に潜りに行きましょう。 目標は、最初の頃は月1〜2回です。 初心者の頃にブランクが空くと、せっかく覚えた水中での感覚を 忘れてしまいます。 一般的には、同じ本数でも、途中でブランクが空いた人より、集中して潜った人の方が ずっと上手です。
それから、アクアプラン社から出版されている「ダイバーズバイブル」 という本をぜひ読んでみてください。(著者:小出 康太郎)
これは、初心者でない方にもおすすめします。
1冊2400円位と値段は高いのですが、ダイビング中の事故やその対処方法の実例が たくさん載っています。トラブルを事前にシミュレートしておくことによって、 適切な対応を出来る可能性は高くなると思います。
Part-1から5まで出ていますが、Part-1、Part-2くらいはお読みになると 良いと思います。
あってはならないことですが、万一、小さなトラブルが大きなトラブルに結び付いた場合、 バディやダイビングスタッフにも、迷惑がかかります。そのトラブルがきっかけで、 その島やポイントでのダイビングに制限が加えられでもしたら、 全世界のダイバーの楽しみを奪うことになります。
トラブルまでにならなくても、実力以上のダイビングは、自分がつらい 思いをします。スキルや経験に応じた安全ダイビングを楽しみましょう。
Yuka Yoshizawa yukay@kt.rim.or.jp