原告は、イランにおいて、同性愛という性的指向を隠さざるを得ないとすれば、それ自体が迫害であり、また、原告は、同性愛者の人権侵害を続けるイランの現体制を批判し、同性愛者に対する法的及び社会的迫害をなくすことを求めるという政治的意見を確立させたものであり、イランに帰国した場合にかかる政治的主張を表明する行動をとったならば、それを理由に迫害を受ける恐れがあるとも、主張する。

 しかし、国民の性表現について、いかなる規制を設けるべきであると考えるかは、当該国における風俗、習慣、社会情勢などを背景として形成される国民全体の価値観によって異なるものであるから、原告が望む性表現が許されないということをもって、それが難民条約1条A2にいう「迫害」にあたるとは解されないし、また、原告はイランにいた当時、同性愛者の権利擁護のための政治的な活動をしていたわけではなく、原告が主張する政治的主張を表明する行動をとったならば迫害を受ける恐れとは、将来イランにおいて、そのような活動を行った場合には発生するかも知れない仮定的なものに過ぎず、これをもって、難民条約1条A2の規定する「政治的意見を理由に迫害を受ける恐れがあるという十分に理由のある恐怖」が存在すると認めることもできない。

「平成12年(行ウ)第178号
退去強制令書発付処分取消請求事件 判決」より抜粋




司法による憎悪犯罪、ふたたび

イラン人ゲイ難民、シェイダさんに東京地裁が不当判決

シェイダさん在留権裁判 判決(全文)>>

判決を受けての原告シェイダさんの声明とチームS・シェイダさん救援グループの声明>>
ジャーナリスト北丸雄二さんからの文章>>
判決に関する報道>>
シェイダさんを救え!ニュースアップデイト第60号>>
緊急ニュースリリース(英語)Urgent News Release>>

恐れていたことが起こりました。
2月25日、提訴から3年8ヶ月後に言い渡された
シェイダさん在留権裁判の判決。
「原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」
逃げるように立ち去った裁判官。
残されたのは、腐敗の臭いの充満した一片の判決文のみでした。

正義を探し求めた3年8ヶ月の歳月は、無意味なものとなりました。
いま、私たちは、口を開いて何を言うべきでしょうか。
原理主義者によって暗殺された
アルジェリアの詩人、ターハル・ジャウート。
彼は死の前日に書き残したメッセージは、
とにかく語れ、というものでした。

私たちは彼の定言命法を受けて、2審・3審の法廷においても、
まるで飢えたツバメの子のように、
正義を求めてさえずり続けるべきなのでしょうか。

          ……沈黙は死だ
            口をつぐめば
            死に、
            口を開ければ
            死ぬ、
            それならば語り、そして死ね。

ターハル・ジャウート




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