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PC処世術 - 雑感:パーツ購入で考えるヤフー・オークションの虚実


 先週故障を報告したモバイルPCは、写真左のようにバラした後,マザーボード(IBM方言では“プレーナー・ボード”)を交換する事で写真右のように無事復活した。ノートパソコンとはいえ、アッセンブリーされたパーツを交換する程度のことはさほど難しくはなく、出来合いのプラモデルを組み立てるような要領だ。むしろ「パーツを(安価で)入手できるかどうか」の方が重要なのであって、そのカギは先週も書いた通り,やはりベンダの情報公開に対する姿勢にあるようだ。

 さて、今回そのノートPC用マザーボードを,筆者はいわゆる“ヤフオク”で入手した。昨今では、このヤフオクに参加している中古パソコン業者なども数多く存在し、企業で利用されていたパソコンなどが安価で大量に出回っていたりする。ヤフー・オークションというものが、中古PC市場の一つを形成しているようだ。そういえば、今回修理した筆者のノートPCそれ自体も、ヤフオクで入手したものだった。

 その一方で、このヤフオクにおいては,最近詐欺団が跋扈して社会問題化していたり、必ずしも完動品が来るとも限らなかったりと、なかなか安心して“買い物”するという訳にも行かなくなりつつあるようだ。また、オークションで付けられる価格の“相場”が果たして高かったのか安かったのかもなかなか分かりにくい。オークションでエキサイトしながら入札していると、場合によっては普通にショップで買った方が安くなってしまうことだってあるかもしれない。

 そんな中で、高値掴みせずに,また詐欺にも遭わないためにはどうしたら良いのだろうか。一般に言われているように出品者の過去の行いをウォッチする事くらいしかないのだろうか。もちろん、出品情報にある商品の写真や説明文,そして過去の取引履歴が醸し出すオーラには相当な情報が含まれており、それと分かるような詐欺は看破できるだろう。だがその一方で詐欺の手法も巧妙化しているようで、必ずしも説明文や取引履歴だけから見極めることが難しくなりつつあるとの情報もある。

 そこで,筆者は「オークション価格を決めているのは需要と供給のバランス」だという当たり前の基本に立ち返ることこそ重要だと考えるようになった。オークションというのは「欲しい」と思っている人が多ければ値段は上がる仕掛けなのである。決して,何でも安く手に入れられる市場というわけではない。対象がパソコンなら、おそらく“1年でおよそ3割引”という中古PCの価格下落スピードからそう離れていない相場値で取引されるのだろう。
 したがって安いモノを買おうとすれば,当然「あまり皆が欲しがらないもの」を選択するのが近道だということになる。逆にいうと、「皆が欲しがっているもの」はそんなに安くは買えないか、あるいはヘタをすると相場より高い価格で掴む可能性もはらんでいる。筆者が今回入手したのは、旧式ノートPCのマザーボードというマニアックなパーツであったから比較的安価に入手できたのであって、完成品の新型人気ノートパソコンだったならそうは行かなかったかもしれない。
 更に、この価格形成プロセスは詐欺に遭う危険性とも同源だと筆者は睨んでいる。(飽くまでも筆者の個人的な思い込みだが、)詐欺師だって「高値がつくものでカモを釣りたい」と思っているはずだ。チマチマと数で稼いでいたら、大して儲かりもせずに捕まるリスクだけが高まってしまうからだ。価格がいくらもしないマニアックな中古PC部品なんぞ、相手がマニアの可能性も高くて逆襲の恐れもあるし,筆者が詐欺師だったら絶対に出品のネタにしない。
 逆に,もし筆者が詐欺師だったら、皆が欲しがる「(スペック信仰・中級者向け)高速CPUと最速何某採用のパソコン」とか、「(初級者向け)某社製人気ノートパソコンがこの価格」とか,「人気の高画素デジカメ」とか,「大容量HDD内蔵オーディオプレーヤー」あたりを出品するところだ。勿論こうした商品であっても、現在出品されているの多くは詐欺などではなく正当な商売なのだとは思う。ただ、こうした人気商品は落札価格を見るとそれほど安いとは言えないことが多いように思うので、筆者はリスクを勘案の上人気商品は普通の店や普通の通販で買うことにしている。

 さて、では何故オークションに(筆者も含めて)多くの人が群がるのだろうか。それは、「オークションなら安く買える」というある種の錯覚があるからではないだろうか。確かに、ヤフーをはじめとするオークションサイトを覗くと,「現在の価格」欄には相場より数段安い価格が並んでいて期待が膨らむ。しかしながら、実際にオークションに参加された方はご存知と思うが、価格は終了直前で急激に上がる
 どのくらいの勢いで価格が上昇していくものか、試みに調べて見たのが右のグラフだ。データは筆者が独自に調査したノートPC(落札価格3〜9万円)のオークション価格の推移であり、全16回分の取引のデータである。縦軸は最終的な落札価格に対する比であり、横軸はオークション終了までの残り時間である。
 グラフを見れば明らかだが、オークション終了まで1日以上残っている案件の価格は意味が無い。1割引〜9割引の激安まで広く分布しており、この時点の価格は最終的な価格とあまり関係が無いのである。
 さらにグラフを読むと、落札の3時間前では大体2割引き,1時間前だと大体1割引き価格くらいが表示されていると思って差し支えない(このタイミングで100%に達しているケースもあるし、終了10分前から急激に2割程度価格が上がるケースもあるが)。であるので,「安い」と思っていたオークションの実のところは、相場より数段安い落札前の価格が並ぶ表が見せる蜃気楼だったのではないか、との疑いを筆者は深めている。
 さて、そうするとオークションの魅力は何なのだろうか。それはきっと、今回筆者が入手したようなマニアックなパーツなど、従来のショップや通販では入手が困難だった物件の流動性が向上することではないだろうか。そう考えると、ヤフオクで高値掴みや詐欺に引っ掛かりづらい利用方法が見えてくるような気がする。(17. Apr, 2005)

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