PC処世術 - 中古パソコンを考える

中古パソコンのカンどころ

 パソコンを購入する際に,その選択肢はなにも新品・最新鋭PCに限られることはない。また古くから中古パソコン市場は存在し、けっこうな品揃えになっている。家電や自動車に比べて買い替えサイクルの短い傾向があるパソコンにおいては、かなりの量のUsedマシンが市場に出回っているのである。
 中古パソコンの価格を眺めるとピンキリであって,特にキリのほうを眺めると激安であったりするので、「掘り出し物があるのでは」などと考えて心が傾きがちである。その一方で、耐久性やセットアップについて不安があったり、なにより「使い物にならないのではないか」という心配も頭をよぎる。
 新品のパソコンは当サイトで示してきたように比較的製品寿命に大差がないものが販売されているのに対し、中古パソコンは相当な性能差があるものに相当な価格差をつけられて販売されているので、その選定には哲学と眼力が要求されるものである。

 筆者も中古パソコンを購入したことはあるし、知人から「何でもいいから激安で見繕って購入しておいて欲しい(金は後で払うから)」などと相談を受けて中古パソコンを見回した機会もあった。飽くまでも筆者の経験ではあるが、どのようなところに着目してきたかを書き連ねてみたい。
 まず、購入しようとするパソコンの使用目的(要求する機能)は本来,第一に考えるべきことかもしれないが、これは考えるだけ無駄なことも多い。新品激安PCがデスクトップなら本体価格で3万円程度からあることを考えると,最新の機能を求めた場合、中古では選択肢がありえないという結論になることが殆どだ。かといって、よほど特殊な目的でもない限り,最近のPCからかけ離れた(古すぎる)ものを選択することもできない。
 中古PCを購入しようとする場合に求める機能は、大体現在常識化している機能なのではないだろうか。そうだとすると、それが実現できるPCの選択肢はかなり広いことが多く、絞り込むことが難しい。したがって、筆者は中古PCを選定する際には、その機能が実現できるかどうかを最後にチェックするに留めている。

 それでは第一に重視することは何であろうか?それは、中古パソコンが発売された時代のフェーズと現在のフェーズとの関係である。少なくとも革命フェーズ以降(できれば躍進フェーズ)のものを選択したいところだ。
 革命フェーズ以降のパソコンが十分お買い得感を持って市場に出回るのは、躍進フェーズ後半から終焉フェーズにかけてである。逆にいうと、試行フェーズに出回るPCは前時代のものであり、革命フェーズに出回る中古PCはたとえ激安に見えてもすぐに使い物にならなくなる虞があるということだ。

 次に重視することが,付属ソフトウェアまで含めたコスト・パフォーマンスである。前述したように新品でも激安品がある現在において、中古パソコンを導入することに対して果たして意味があるか、ということを考えてみよう。中古PCは確かに本体価格は新品よりも安くなっているのだが、その価格差と言うのは存外大きくない。ところが中古PCの場合(特にメーカー製パソコンの類では)、付属ソフトの価格までいっしょに下がっていることがあるのである。
 新品パソコンでも、OSをはじめとしたソフトを揃えていくと結構な額になり、場合によっては本体より高くなることも少なくない。中古パソコンにおいても、ソフトを新品で揃えると,新品セットPCを買うのと価格的に大差なくなってしまうこともある。中古PCを選ぶ際には,どうしてもスペックvs価格の一覧表に目が行きがちではあるが、ソフト込みの価格(少なくともOSだけでも)で考えるべきであり、注意したいところだ。或いは,付属ソフト類抜きのメーカー製中古PCなどはドライバなども付属CDのみに収まっていることがあり、要注意な点でもある。

 最後にスペックを見ていくことになる訳なのだが、筆者はあまり中古PCのスペックを重視しない。まずCPUが早いのを選択したくなるところだが、そもそも本当にCPUパワーを必要とする分野に中古PCはそぐわないので、あまり気にかけないことにしている。
 次にメモリーが多いのを選びたくなるのが人情だが、メモリ規格はコロコロ変わり続けてきた歴史があるので、旧式PCのメモリは中古で激安になっていたりする。勿論、最新PCレベルまで増設する必要はなく、中古PCに付属する旧式OSのレベルに合わせた増設を行えばよい。
 そして HDDに目をやることになるが、HDDの容量の増加スピードから言って、4, 5年前のPCなら現在の1/20〜1/10程度の既に命数尽きたものが搭載されていることだろう。また筆者の経験からすると、よく使われたPCのHDDの機械的寿命は4,5年から切れ始める(勿論、使用状態やに大きく左右されるが,HDD故障の悲鳴を聞いたときにその導入時期をみると4、5年前のものであることが多いように思う)ようなので、出来れば HDD は賞味期限切れ新品を激安で入手しておきたいものである。このとき、本体のBIOSが新品HDDの容量に対応していないと厳しいので、やはり本体が革命フェーズ以降の物であることが必要である。

 2004年現在は、32bitの終焉フェーズを迎えており,躍進フェーズのPCが激安中古として出回っている。筆者も最近、老いた両親からインターネット用のPCが欲しい(but お金は掛けたくない)と言われて,中古用のPCを一台入手した。それは躍進フェーズの省スペース型PCであり、K6-300MHz, 64MB, 4.3GB にOSとオマケソフト類がついて 3500円ほどだった。これに 850円で 64MBのメモリを増やし、5000円少々で20GBのHDDに入れ替えた。恐らくこんなPCでも、インターネット(Webブラウズ)とメールだけなら 32bit 時代を乗り切ってしまうことだろう。そしてその寿命が完全に潰えるのは,パワーユーザーが使う最新・最速PCの命数が尽きるのと同じ頃だったりするのかもしれない。(10. Jul, 2004)

中古PC - 価格の下落曲線を見る

 中古パソコン市場と言うのを眺めていると、パソコンの進化の過程をサンプルすることができてなかなか興味深いものである。激安価格となっている中古パソコンなどを見ると、それがかつて最強マシンだった時代に思いを馳せることができたり、当時のスペックなどを思い出してノスタルジーの世界に浸ることもできる。
 特にその価格に目をやると、かつて栄光のスペックを誇ったパソコンの価格としては甚だ寂しい値札がつけられている。このことは、自分が所有するパソコンも,やがてその価値は下落し、その値札程度のものになってしまうことを意味している。

 では、パソコン価格の下落はどの程度のスピードで進行するのだろうか。そしてお買い得ゾーンはどの辺りの中古PCになるのだろうか。気になったので調査してみたのが右のグラフだ。調査はとあるメーカーのデスクトップPCの中古価格に対して行い、モニタやプリンタなどが付属しているものは除いた。なお、縦軸は対数であり、横軸はそのパソコンの発売時期である。
 グラフをみると、スペックなどに応じたばらつきはあるものの,経過した年数に対して相関が見られる。そして価格下落のスピードを読み取ると、およそ -3.3db/年(係数は20),つまり 1年経つとおよそ3割引,あるいは半額になるのに1年と10ヶ月かかるというスピードだ。
 このグラフ中で、中古としては比較的新しい 2003年頃のものスペックを見ると,現代に充分通用するスペックである。そしてその価格に目を移すと 3〜4万円程度であり、新品PCに近い価格帯になっている。このことからすると中古PCの価格は、新品パソコンの価格との間に連続性があるように思われる。つまり、USED であること自体による値引き余地はあまりないということかもしれない。
 したがって、あまりに「新し目」のハイエンド中古というのは、はたして中古にする意味があるのか再考の余地がある。そのPCがどのような使用のされ方をしていたのかは不明なのであり、HDDの機械的寿命などのリスクと値段とを天秤にかけながら良く考える必要があるだろう。

 その一方で、底辺級中古に目を向けて見る。価格は数千円〜1万円以下と、パソコンの価格としては非常に安い。そしてその年代をみると、2005年現在の調査によれば 1998〜1999年頃のPCであり、およそ6〜7年前のものが底辺級中古になっていることが分かる。この辺りのPCに搭載されているCPUは既に論理的寿命を迎えているものであり、HDDやメモリの容量も少なく、今風の使い方には堪えないスペックになっている。
 したがって、底辺級中古は使い方が限定されることを念頭に置いて購入する必要がある。もっとも、2005年現在は32bit時代の中でも終焉フェーズを迎えており、底辺級中古には躍進フェーズのものが並んでいる。したがって使い方が限定されるとは言っても充分実用に供することができ、HDD等の機械的寿命が近いことに留意すれば格安パソコンと捉えることができる。

 さて、中古PCのボリウム・ゾーンは1万円〜3万円の価格帯になるだろうか。この辺りは価格のばらつきも大きく、選定には頭を悩ませるところだが,CPUの消費電力やHDDおよびメモリの容量と付属ソフトウェアなどを勘案して選ぶと良さそうだ。特に、この価格帯のPCにはオマケでOSが付属していることがある。OSは新たに購入すると結構値段が張って中古パソコン本体より高いこともままあるし、まともに安く入手する方法はあまりない。ライセンスの空いたOSが既に手元にある場合やフリー系のOSを使用する場合を除けば,OSが付属するかどうかは重要なポイントとなるだろう。
 更にグラフを注意深く眺めると、似たスペックでも高いものと安いものがあるようだ。筆者の見立てでは、セレロン何某というのが安く,消費電力の大きい“当時最新”系のペンティアムが高値をつけることが多いようだ。中古価格は定価の影響も少なからず受けているようだが、筆者の感覚からすると,古い“最新・最強”系PCは旧い“人柱系トラブル”を現世に持ち越している場合もありそうで手が出ない。例えば、“高級多プラッタ超高速回転HDD”など当時としては頑張ったスペックだったりすると、現代の安物に性能で劣る上に機械的寿命も短い場合もある。あるいは、メモリを増設しようにも、現代では入手し難くなっている上に相性問題が炸裂するという場合もある。注意したいところだ。
 このような局面では、何よりも(当時として)無理したスペックでないPCを選んでおくことが、この手の問題を避ける術だと筆者は思っている。多くの場合、PCは習作たるハイエンド機で出たマイナートラブルや相性問題が、“廉価版化”の過程で解決されるものだ。何も今更、昔の習作に悩まされる必要は無い。

 最後に、右上のグラフの調査の過程で多くの中古ショップの価格を眺めたのだが、明らかに高値を付けているショップもあるようだ。もちろん、きっと清掃などが行き届いて品質などにも差があるのだと信じたい。だが中古の場合、価格レンジが広くスペックと価格の関係が分かりにくくなっているので、複数のショップで価格や相場などをスペック込みで調査しておいた方が良いかもしれない。(4. Jan, 2005)

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