EURO 2004 SPECIAL #02. やがて哀しきフェルナンド |
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2004.06.24.Thu. 13: 25 p.m.
では、本当に彼らが2-2を狙って大芝居を打ったかといえば、おそらく本人たちにも真相はわからないのではないだろうか。どちらも勝利より「2点を取る」がこのゲームの最優先課題だったはずで、その意味では双方が初期の目的を達しただけの話である。ただ、2-1以降のデンマークの攻撃には、どこか「手ぬるさ」を感じなかったわけでもない。3点目を取りには行っていたが、「ボールになってもかまわない」という深層心理の働きで、フィニッシュが無意識のうちに寸止めになっていたようにも見えた。まあ、要は「神の見えざる手」ってやつでしょうか。2-2になってからは思い切りキャッチャー立たせてましたが。しかし、あそこでデンマークがボールを奪いに行っていたら、かえって芝居っぽく見えたと思う。正直でよろしい。そもそも「当事者間の総得点」より「3試合の得失点差」を優先する決まりにしていれば、こういうことにはならなかったようにも思われる。ともあれ、どっちもスペクトラムみたいな帽子を被ったサポーターが「2-2 NORDIC VICTORY」なんて掲げていたぐらいだから、これ以外の結果は最初からあり得なかったのかもしれない。あの帽子、欲しいな。どっかで売ってないのかな。この両国が決勝で決着をつけるというのも、また一興かと思う。ところで、スウェーデンのW監督の2ショットを見て、夢路いとし喜味こいしを想起したのは私だけだろうか。
自国サポーターからベルギー行き航空券をプレゼントされたとかいうアドフォカート監督は意外なことにまだベンチにいたが、オランダはふつうにオランダらしかった。何をされたのかよくわからないダビッツの転倒で主審がペナルティを取らなかったらどうなっていたかわからないとは思うが、ファン・ニステルローイの2発とマカーイのゴールで3-0。オランダにとって幸運だったのは、3戦目ですでにくたびれているラトビアと当たったことと、ドイツが自分たちよりも深刻な度合いで死んでいたことか。しかし、もっと深刻なのはクライファートである。ベンチに座っているところが何度か映されていたが、その表情のユルさに愕然とした。おまえは遊園地に連れてきてもらった子供か。完全に物見遊山の顔である。特等席で、心ゆくまで試合観戦を楽しんでいた。出番がないことを微塵も疑っていない。おまけに試合が終わって準々決勝進出が決まると、率先して歓喜の輪に加わって飛び跳ねている。おまえがはしゃぐなよ。おまえがスタンドに向かって拍手するなよ。9番なんか背負ってて恥ずかしくないのかよ。少しは憮然としてみろよ。
![]() コラムの掲載誌が二つとも届いた。どちらも苦労したので嬉しい。『サッカーズ』の写真をいつもより大きくしているのは、私がマラドーナ好きだからではなく、実はちょっとプライベートな用件で岩本編集長やすずき君にご迷惑をかけているので、せめてものお詫びとして大々的に宣伝しようと思ったからだ(お二人とも、お忙しいときにホントすみません)。いつも立ち読みの人も、今月は『サッカーズ』を買おう。マラドーナの特大ポスターもついてるよん。
2004.06.23.Wed. 17: 45 p.m.
●スイス×フランス(グループB)
で、後半だ。あろうことか、懸命にポスト役をこなしていたコラーディを引っ込めてビエリ投入である。アホの上塗りじゃ。前半を休んで少しはバネが戻ったかもしれないビエリだったが、おつゆ(雨)を吸ったせいか、またどんどん伸びていった。そもそもあの人はあんな顔してるくせに肝っ玉が小さいのであって、大事なゲームでゴールを決めたところを観たことがない。なので、今日もダメだった。どさくさ紛れに決まったペロッタのゴールで試合は振り出しに戻ったものの、ブルガリアは意外に粘る。勝てば3位だもんな。どっちでもいいっちゃどっちでもいいけど、ビリより3位のほうが気分いいよな。ともあれ、くんずほぐれついろいろあって、大爆笑のロスタイムに突入だ。「スウェーデン同点」の報が入るやいなやカッサーノの勝ち越しゴールが決まるんだからすごい。今大会二度目の漫画である。こんな漫画がアリなら、CFコウトのゴールが決まってもよかろうと思う。それにしても感心するのは、「イタリア勝ち越し」→「スウェーデン同点」の順序ではなかったことだ。そこに最低限の慎み深さを感じるのは私だけではあるまい。あとでスウェーデン×デンマークを観るのが楽しみだ。ともかく、まあ、笑いました。歓喜から悲嘆に突き落とされていたカッサーノ君は、いくら私でもさすがに気の毒だと思ったが。問題は、ベンチの誰が彼にその現実を伝えたかということだ。私には、それがファバッリの役目だったように見えた。「あー、ダメダメ。あっち、ドゥエドゥエ(2-2)だから」とか素っ気なく言ってそうな気がする。あー、おもしろかった。EUROは最高だ。これ発明した人にもノーベル賞をやっとけ。
2004.06.22.Tue. 12: 25 p.m. スペインはどれぐらい惜しかったのかを知るために、一応、観た。敗退の決まったチームの3戦目について、われわれ外野は往々にして「モチベーションがない」などとシタリ顔で決めつけてしまうわけだが、国歌斉唱時のロシア選手やサポーターの表情を見ると、そう単純なもんでもないように思われてくる。屈辱や恥辱を雪ぎたいという人間の感情を侮ってはいけない。欧州マーケットに自分を売り込みたいというアンビシャスも侮ってはいけない。しかもロシアにとってギリシャ戦は、「正教ダービー」とも呼べる重要な試合である。ごめんなさい。意味よくわかんないで軽率に言ってます。ともあれロシアは、(こっちが結果を知っているせいかもしれんけど)あんがい気合いが入っているように見えた。少なくとも、ジャマイカ戦の日本よりは「こころの薪」をたくさん燃やしているように見えた。こころの薪だなんて、詩人だなぁ俺って。書いていてとても恥ずかしい。 そんなこんなで、キックオフから2分でロシアが先制。ギリシャのCBがぶちかました盛大な空振りによるものだった。クロアチア戦におけるデサイーの空振りと双璧であろう。空振りだから壁になっていないわけですが。双穴、か。デサイーがこの大会で代表入りしていることが、いまだに私には信じられない。話が逸れた。あのバカげた空振りで先制され、さらに2点目も豪快に叩き込まれたにもかかわらず、ギリシャはよく壊れなかったものだ。ふつうにスペインがポルトガルから勝ち点を奪うと思っていたわけでもなかろう。いや、思っていたのか。思ってたかもなぁ。ギリシャとやったときはものすごく弱かったもんな、ポルトガル。 しかし、いずれにしろ、前半終了間際に決まったブリーザスのゴールがギリシャを踏みとどまらせた。所属するフィオレンティーナもセリエA昇格を決めたようだし、ブリーザスとしては盆と正月がいっしょに来たような気分であろう。ギリシャ正教に盆や正月があるかどうかよく知らないが、私はロシア×ギリシャよりもフィオレンティーナ×ペルージャが観たかった。なにしろディ・リービオ対ラバネッリだ。どんなことになっていたのか想像するだけでワクワクする。話が逸れてばかりだが、スペインはかなり惜しかった。スペイン人がこの試合を観たら、後半の決定機にしくじりまくったロシアの選手に殺意を抱いたかもしれない。私も何度か「バカ」と言った。サッカーを観るとき、人は人のことを「バカ」と言い過ぎる傾向があるので気をつけなければいけない。
しかし結局のところ、サッカーなんてものは私の思惑とは無関係に進行していくのであった。スイスは一時的に同点に追いついてみせたものの、トゥドールの失敗菌は当たり前だが不発だったようで、ジダン、アンリ、アンリというきわめて不愉快な3ゴールでフランスが1位通過である。観たくねーな、そんな試合。んで、こっちは4-2でイングランド。どうなんだポルトガル。アンドラーデとカルヴァーリョのCBコンビがいいのでルーニーとオーウェンはそこそこ抑えられそうな気がするが、イングランドがセットプレイの守備に不安を抱えていることを考えると、コウトも使ってみたいところだ。ウソである。使っていいわけがない。しかし私は夢想するのである。同点で迎えた後半40分、ポルトガルがCKを得たところで、センターフォワードとして投入されるフェルナンド・コウトの雄姿を。一発のヘディング。仕事はそれだけでいい。やってみろコウト。見せてみろコウト。なんか知らんが、やけに興奮してきた。
2004.06.21.Mon. 14: 25 p.m.
2004.06.18.Fri. 17: 00 p.m. ●イングランド×スイス(グループB) どうやらスイスのGKシュティールは今大会のボケ役を一手に引き受けることになったようで、前回の腹這いヘディングに続いて、今回はポストを直撃したジェラードのシュートを後頭部でゴール内に弾き返してみせたのだった。いいぞいいぞ。そういう形で人々の記憶に残るのも才能のうちだ。シュティールはそれ以外にも、ブーイングするイングランド・サポーターにガンを飛ばすシーンなどあり、ちょっと目が離せない存在になっている。3試合で帰国させるのは惜しい。試合のほうは、そのシュティールのバックヘッドも含めてイングランドの3-0。あんまり面白くなかった。ある知り合いが「スイスの勝ち点6以上」に5000円も賭けるという信じがたい暴挙に出ていたらしいのだが、ご愁傷様でした。本人の名誉のために言っておくと、彼は賭けをしたときに酔っており、グループリーグがホーム&アウエイで行われる(つまり各国6試合やる)のだと錯覚していたそうだ。名誉のためになっていないような気もする。
![]() 朝8時から上記の試合をビデオ観戦した後、愚妻と吉祥寺へ出かけて映画『デイ・アフター・トゥモロー』を鑑賞。学生さんみたいな生活である。きのうで単行本の口述作業が一段落したので、暇なのだ。午前中の映画館はもちろん空いているのだが、どういうわけか、やけに老夫婦の姿が目についた。合計120歳以上のカップルは割引とか、そんなようなことでもやっているのだろうか。年寄りの多い映画館が困るのは、みんなトイレが近いということだ。上映時間が1時間を過ぎた頃から、ひっきりなしに客が出入りしていた。終盤の良いシーンを見逃した人が多いのではないかと心配にもなるが、それより、戻ってきたときに自分の席がどこだかわからずウロウロする者がいるのが迷惑なのである。邪魔だっつうの。ガラガラなんだから、そこらの空いてる席に座っとけっつうの。 濡れ落ち葉のように愚妻にくっついて行ったような次第で、作品に関する予備知識はほぼゼロだったのだが、ふつうに面白かった。というのはかなり控え目な表現なのであり、ほんとうのことを言うと、泣いた。フィーゴによく似た父親が、カンナバーロによく似た息子を助けに行く話だったからだ。私はコレに弱い。からっきし弱い。いや、フィーゴとカンナバーロに弱いのではなく、「父子モノ」に弱いのである。「私は息子に、必ず助けに行くと約束した。約束は守る」なーんて言われた日には、それだけで涙腺の準備が整ってしまう。単純なのである。クライマックスにもうちょっとヒネリが欲しかったような気もするし、たまたま数日前に地球温暖化論の胡散臭さを指摘する文章(温暖化すると南極の氷はかえって厚くなるらしい)を読んだばかりだったので設定自体に鼻白まないでもなかったのだが、泣いてしまったら何を言っても無駄ですな。あと、カンナバーロによく似た息子のガールフレンドは、クレスポによく似ていた。
![]() 元サッカーズYさんが暇な私に小仕事をくれるというので、数週間前に六本木へ引っ越したばかりのフロムワンへ足を運んだのは一昨日のことである。六本木一丁目の改札を出た瞬間に、茫然とした。あんなビルの中に雑誌の編集部が存在するはずがないと思ったからだ。しかし移転通知ハガキの住所には、たしかに「泉ガーデンタワー」と書いてある。マジすか。巨大なエレベーターを前にしたときは、踵を返して帰ろうかと思った。外国に来たわけでもないのに、なぜかそのビルの中では自分の言葉が通じないような気がしたのである。しかし帰ると小仕事がもらえないので不安に駆られながら乗り込んだのだったが、途中でエレベーターを乗り換えないとたどり着けない編集部ってどういうことだ。そんなことで庶民たる読者の生活感がわかると思っているのか。などと八つ当たりしながら7階で乗り換えてみたら目的階の押しボタンが見当たらず、どうやらその階は通過するエレベーターだということがわかって慌てて降りたので恥ずかしかったじゃないか。泉ガーデンタワーは人に恥をかかせるビルなので、初めて行く人は気をつけたほうがよい。ようやく「おまえら外資系コンサルティング会社か何かにでもなったつもりか」とツッコミたくなるような佇まいの編集部に到着すると、そこにはテレビで見知ったお顔の人物がいらっしゃって、ますます現実感が遠のいた。ジャンルカ・トト・富樫さんである。すずき君に紹介してもらって、名刺交換をさせていただく。かなり嬉しかったが、生ダジャレを聞けなかったのが少し残念だった。 小仕事の資料を受け取ったあとは、新旧担当者と3人で「季菜」という和食屋へ。コースターに筆文字で書かれた店名がなぜか「雪葉」に見えてしまい、オーダーを取りに来た女将さんらしき女性に「ユキハとお読みするんですか?」とバカげた質問をしてしまった。ほんとうに、人に恥をかかせるビルだ。ちなみに正解は「キナ」です。旨い料理に舌鼓を打ちつつ、マンチーニの去ったラツィオの今後についてすずき君と話し合ったものの、われわれが話し合ったところでどうなるものでもないということに気づいたので、途中からラツィオ来日時の行動に関する作戦会議に変更。何の作戦かはナイショだが、とにかく私は仙台に行く。マンチーニが何人かインテルに連れて行くという話もあり、そうなるとどんなラツィオが来るんだか心許ないかぎりだが、それがラツィオであるかぎり私は見に行く。来季はスカパー!でもほとんど中継がないかもしれないし。うう。
![]() ここからは親バカ系の父子モノになるので、そういうのが嫌いな人は読まないでほしいのだが、セガレが算数のテストで100点を取ってきた。しかも二つだ。でへへ。うれしいんだなぁ、わが子の100点って。初めて受けた試験を二つともノーミスで乗り切ったのはえらい。私は中学時代、最初の英語のテストでピリオドを一つ書き忘れて100点を逃したことがあり、それが英語への苦手意識の遠因になっているようにも思われるので、セガレも一つや二つはケアレスミスをやらかすのではないかという予感があったのだが、意外に落ち着いているようだ。一年生の最初の算数だから、ちゃんと数が数えられるかどうかを試すような単純な問題ではあるものの、中には引っかけ問題クサイものもある。クルマが8台ほど一列に並んだ絵があり、1問目は「ひだりから4だいめを、あかでぬりましょう」、2問目は「ひだりから4だいを、あかでぬりましょう」だったりするのだ。「4だいめ」と「4だい」だからまだ親切だが、2問目が「ひだりから3だいを」だったら、3台目だけ塗ってペケを食らう生徒が続出することだろう。こうして、ミスをしないことだけが取り柄の人間が優等生として世に出て行くのだった。役所で役人を育成しているようなものである。 しかし公立の小学校というのは、そういう教育内容を云々する以前の問題がやはり多いようだ。セガレのクラスは先日の授業参観でもみんなふつうに教師の話を聞いて授業に参加していたのだが、あとで聞いたところによると、隣のクラスは崩壊していたらしい。おお、あの有名な学級崩壊か!などとはしゃいでいる場合ではないのである。机に足を載せている奴、床に寝そべっている奴、椅子に座ったままバタンと倒れている奴などがいたというから、かなり本格的な崩壊ぶりだ。そういう現象があると話には聞いていたが、現実にわが子の通う学校がそんなことになっているとなると、ものすごくグッときてしまう。親の見ている前で崩壊する子供たちもすごいが、それを叱りもせずに淡々と授業を続けていたという教師もすごい。それとも、親が見ているから叱らなかったのだろうか。ともあれ、ほんとうに崩壊するんだなぁ学級って。もしそれがセガレのクラスだったらと思うと、頭が痛い。いや、いずれクラス替えでシャッフルされれば、崩壊生徒や崩壊教師と同じ教室になる可能性が高いわけだから、まったくもって他人事ではないのである。授業参観でそんなものを目の当たりにしたら、黙っていられる自信がない。なにしろ私の場合、ふつうに授業をしていたセガレのクラスでさえ、退屈して隣の子とお喋りしているセガレの頭を危うく後ろからひっぱたくところだったのだ。セガレはいちばん後ろの席だったので、手を伸ばせば届いたのである。よく我慢したものだと自分を褒めてあげたい。いずれ参観した授業が崩壊していたときには、それを放置している教師をひっぱたかないように気をつけようと思う。
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