EURO 2004 SPECIAL #02. やがて哀しきフェルナンド


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2004.06.24.Thu. 13: 25 p.m.
BGM : ERIC CLAPTON "461 OCEAN BOULEVARD"

 酔っぱらって日誌を書いたのはたぶん昨日が初めてだったが、あらためて読んでみると、シラフで書いているときと大して調子が違わない。どんな状態でもパフォーマンスが安定している、といえば聞こえはよいが、酔っていてもシラフのように書けると考えるか、シラフでも酔っているようにしか書けないと考えるか、それが問題だ。イタリアだって、安定しているといえば安定している。安定していればいいというものではない。そういえば今朝のニッカンによると、勝ち越しゴールに歓喜する自軍の選手に「あっちはドゥエドゥエ」を伝えたのはトルドだった模様。そういや、そんな人もベンチにいたんだよな、あのチーム。ペルッツィも含めたGKの総合力ならどこにも負けないわけだが、しかし肝心のブッフォンが女の子とちゃらちゃら遊んでいるようでは、この結果も仕方がない。イタリア敗退決定直後にも流されたプーマのCMは、とても皮肉だった。逆宣伝だろ、それ。


●デンマーク×スウェーデン(グループC)
 さて、「八百長疑惑」などとも言われているその試合である。いかにしてドゥエドゥエ物語は完成したのか。試合前も試合後も当事者たちの口からは「狙ってできるものじゃない」といった言葉が聞かれていたようだが、ふつうに考えて、双方の利害が一致している以上は、狙って2-2にするのは簡単である。難しいのは、偶然を装って2-2に持ち込むことだ。前半10分までに2-2にして80分間パス回しをするというわけにはいかない。べつにそうしたってルール違反でも何でもないわけだが、まあ、松井の5打席連続敬遠をはるかに上回る騒ぎになることは間違いなかろう。下手すりゃ国際問題だ。世間を敵に回してしまったら、グループリーグを突破したところで、それ以降の試合が戦いづらくなる。キャッチャーを座らせたまま、臭いコースをつきながら2-2にしなければいけないのである。

 では、本当に彼らが2-2を狙って大芝居を打ったかといえば、おそらく本人たちにも真相はわからないのではないだろうか。どちらも勝利より「2点を取る」がこのゲームの最優先課題だったはずで、その意味では双方が初期の目的を達しただけの話である。ただ、2-1以降のデンマークの攻撃には、どこか「手ぬるさ」を感じなかったわけでもない。3点目を取りには行っていたが、「ボールになってもかまわない」という深層心理の働きで、フィニッシュが無意識のうちに寸止めになっていたようにも見えた。まあ、要は「神の見えざる手」ってやつでしょうか。2-2になってからは思い切りキャッチャー立たせてましたが。しかし、あそこでデンマークがボールを奪いに行っていたら、かえって芝居っぽく見えたと思う。正直でよろしい。そもそも「当事者間の総得点」より「3試合の得失点差」を優先する決まりにしていれば、こういうことにはならなかったようにも思われる。ともあれ、どっちもスペクトラムみたいな帽子を被ったサポーターが「2-2 NORDIC VICTORY」なんて掲げていたぐらいだから、これ以外の結果は最初からあり得なかったのかもしれない。あの帽子、欲しいな。どっかで売ってないのかな。この両国が決勝で決着をつけるというのも、また一興かと思う。ところで、スウェーデンのW監督の2ショットを見て、夢路いとし喜味こいしを想起したのは私だけだろうか。


●オランダ×ラトビア(グループD)
 何だかんだ言いながらこちらを先に見てしまうあたりが、愛憎半ばする微妙な心理だ。昨日も同じことを書いたような気がするが、そりゃあ、まあ、ドイツが残るよりはオランダのほうがねぇ。それに今回の場合は、「ラトビアン・ドリーム」を見てみたいという気持ちもなかったわけではない。とりたててチームに魅力を感じているわけでもないが、どうもあのアンパンマン似のGKが放っておけないキモチになっているのである。スイスのシュティールといい彼(コリンコだったかコロンコだったか忘れた。どっちでもないかもしれない)といい、私はアンコ型GKが好きなのかもしれない。しかしコリンコだかコロンコだかは、よく見ると、ふかわりょうにも似ていた。だがアンパンマンとふかわりょうは少しも似ていない。どうでもいい話ばかりしている。

 自国サポーターからベルギー行き航空券をプレゼントされたとかいうアドフォカート監督は意外なことにまだベンチにいたが、オランダはふつうにオランダらしかった。何をされたのかよくわからないダビッツの転倒で主審がペナルティを取らなかったらどうなっていたかわからないとは思うが、ファン・ニステルローイの2発とマカーイのゴールで3-0。オランダにとって幸運だったのは、3戦目ですでにくたびれているラトビアと当たったことと、ドイツが自分たちよりも深刻な度合いで死んでいたことか。しかし、もっと深刻なのはクライファートである。ベンチに座っているところが何度か映されていたが、その表情のユルさに愕然とした。おまえは遊園地に連れてきてもらった子供か。完全に物見遊山の顔である。特等席で、心ゆくまで試合観戦を楽しんでいた。出番がないことを微塵も疑っていない。おまけに試合が終わって準々決勝進出が決まると、率先して歓喜の輪に加わって飛び跳ねている。おまえがはしゃぐなよ。おまえがスタンドに向かって拍手するなよ。9番なんか背負ってて恥ずかしくないのかよ。少しは憮然としてみろよ。

 コラムの掲載誌が二つとも届いた。どちらも苦労したので嬉しい。『サッカーズ』の写真をいつもより大きくしているのは、私がマラドーナ好きだからではなく、実はちょっとプライベートな用件で岩本編集長やすずき君にご迷惑をかけているので、せめてものお詫びとして大々的に宣伝しようと思ったからだ(お二人とも、お忙しいときにホントすみません)。いつも立ち読みの人も、今月は『サッカーズ』を買おう。マラドーナの特大ポスターもついてるよん。




2004.06.23.Wed. 17: 45 p.m.
BGV : ゴジラ×メカゴジラ

 いま午後4時半だが酔っぱらってまーす。でへでへ。自宅で朝8時からマッキー事務所の小仕事を一本片づけ、10時半からイタリアの試合を見、大笑いしながら愚妻と蕎麦屋で昼飯を食ったらセガレから学校から帰ってきて、いまさら用もないのに仕事場に行く気にもならず、近所の公園でセガレとサッカーの練習をしたら汗だくになったのでシャワーを浴びたらビールを飲まずにいられるかってんだこの野郎。あははー。うまいうまい。ビールはうまい。発明した人にはノーベル賞をあげておきなさい。枝豆もかなりうまいぞ。ビールと枝豆は最高だ。これ以外に何が必要だっていうんだ。愛か。そうだよな。愛は必要だよ愛は。あした読んだら猛烈に後悔しそうな勢いで書いているような気がするが、しかしアクセス数を見るとふだんの1.5倍以上はあり、さすがにEURO効果は侮れないのであって、「まだかよ〜」という声が聞こえてきそうなので、久しぶりに自宅で更新中。横ではセガレがゴジラのビデオを観ている。周期的にそういう時期が訪れるのだが、このところセガレはゴジラに夢中なのだった。次作でとりあえずシリーズ打ち止めだと聞いたが、こうして観ていると、もったいない話だと思う。もしかしたら日本の生んだ最大のロック・スターはゴジラかもしれない。がおー。吐け吐けもっと吐けー。がおーがおー。

●スイス×フランス(グループB)
 そうは言っても観ないわけにはいかないのであるが、ゆうべ観たのであんまり覚えてません。ジダンめ。そして私はピレスの走り方がどういうわけか好きになれない。ちょっと忍者っぽいと思う。だからといって忍者が嫌いなわけではないのであって、じゃあなんで嫌いなのかというとよくわからないのだが、嫌いなものは嫌いだ。文句あっか。フォンランテンだかファンロンタンだかフィンランディアだか何だか忘れたしそもそも覚えようとする意欲に欠けているとしか思えないが、いきなりルーニーの最年少記録を更新した何者かのゴールで1-1に追いついたスイスだったものの、まあ、そりゃ、勝てんわふつう。1-3。さらばシュティール。俺はおまえが好きだよ。ラツィオに来てくれてもいいよ。俺は許すよ。


●イタリア×ブルガリア(グループC)
 そぼ降る雨の中で流れるブルガリア国歌はとても寂しかった。ものすごく湿っぽいオープニングである。スウェーデン×デンマークが最大の見物だと思いながらも結局はイタリアを先に観てしまうあたりが愛憎半ばする微妙な心理だ。スタメンにコラーディとフィオーレが名を連ねていた。スウェーデンとデンマークには消えてほしくないが、おまえらは頑張れ。そんな支離滅裂な心境で観ていたら、やりやがった。マテラッツィだ。何かやるに違いないとは思っていたが、さっそく倒してPK配給。人々の不安に応えさせたら天下一品である。いわば不安実現大王だな。何のことだか全然わからないが、とにかくブルガリア先制。これで私は吹っ切れた。もうええわ。フィオーレはそこそこ頑張っていたのでえらいが、この大会にはイタリア要らん。帰ってよろし。そして画面左下には、2-2へ向けて着々とスコアを重ねるスウェーデンマーク戦。いいぞいいぞー。

 で、後半だ。あろうことか、懸命にポスト役をこなしていたコラーディを引っ込めてビエリ投入である。アホの上塗りじゃ。前半を休んで少しはバネが戻ったかもしれないビエリだったが、おつゆ(雨)を吸ったせいか、またどんどん伸びていった。そもそもあの人はあんな顔してるくせに肝っ玉が小さいのであって、大事なゲームでゴールを決めたところを観たことがない。なので、今日もダメだった。どさくさ紛れに決まったペロッタのゴールで試合は振り出しに戻ったものの、ブルガリアは意外に粘る。勝てば3位だもんな。どっちでもいいっちゃどっちでもいいけど、ビリより3位のほうが気分いいよな。ともあれ、くんずほぐれついろいろあって、大爆笑のロスタイムに突入だ。「スウェーデン同点」の報が入るやいなやカッサーノの勝ち越しゴールが決まるんだからすごい。今大会二度目の漫画である。こんな漫画がアリなら、CFコウトのゴールが決まってもよかろうと思う。それにしても感心するのは、「イタリア勝ち越し」→「スウェーデン同点」の順序ではなかったことだ。そこに最低限の慎み深さを感じるのは私だけではあるまい。あとでスウェーデン×デンマークを観るのが楽しみだ。ともかく、まあ、笑いました。歓喜から悲嘆に突き落とされていたカッサーノ君は、いくら私でもさすがに気の毒だと思ったが。問題は、ベンチの誰が彼にその現実を伝えたかということだ。私には、それがファバッリの役目だったように見えた。「あー、ダメダメ。あっち、ドゥエドゥエ(2-2)だから」とか素っ気なく言ってそうな気がする。あー、おもしろかった。EUROは最高だ。これ発明した人にもノーベル賞をやっとけ。




2004.06.22.Tue. 12: 25 p.m.
BGM : ERIC CLAPTON "FROM THE CRADLE"

●ロシア×ギリシャ(グループA)
 スペインはどれぐらい惜しかったのかを知るために、一応、観た。敗退の決まったチームの3戦目について、われわれ外野は往々にして「モチベーションがない」などとシタリ顔で決めつけてしまうわけだが、国歌斉唱時のロシア選手やサポーターの表情を見ると、そう単純なもんでもないように思われてくる。屈辱や恥辱を雪ぎたいという人間の感情を侮ってはいけない。欧州マーケットに自分を売り込みたいというアンビシャスも侮ってはいけない。しかもロシアにとってギリシャ戦は、「正教ダービー」とも呼べる重要な試合である。ごめんなさい。意味よくわかんないで軽率に言ってます。ともあれロシアは、(こっちが結果を知っているせいかもしれんけど)あんがい気合いが入っているように見えた。少なくとも、ジャマイカ戦の日本よりは「こころの薪」をたくさん燃やしているように見えた。こころの薪だなんて、詩人だなぁ俺って。書いていてとても恥ずかしい。

 そんなこんなで、キックオフから2分でロシアが先制。ギリシャのCBがぶちかました盛大な空振りによるものだった。クロアチア戦におけるデサイーの空振りと双璧であろう。空振りだから壁になっていないわけですが。双穴、か。デサイーがこの大会で代表入りしていることが、いまだに私には信じられない。話が逸れた。あのバカげた空振りで先制され、さらに2点目も豪快に叩き込まれたにもかかわらず、ギリシャはよく壊れなかったものだ。ふつうにスペインがポルトガルから勝ち点を奪うと思っていたわけでもなかろう。いや、思っていたのか。思ってたかもなぁ。ギリシャとやったときはものすごく弱かったもんな、ポルトガル。

 しかし、いずれにしろ、前半終了間際に決まったブリーザスのゴールがギリシャを踏みとどまらせた。所属するフィオレンティーナもセリエA昇格を決めたようだし、ブリーザスとしては盆と正月がいっしょに来たような気分であろう。ギリシャ正教に盆や正月があるかどうかよく知らないが、私はロシア×ギリシャよりもフィオレンティーナ×ペルージャが観たかった。なにしろディ・リービオ対ラバネッリだ。どんなことになっていたのか想像するだけでワクワクする。話が逸れてばかりだが、スペインはかなり惜しかった。スペイン人がこの試合を観たら、後半の決定機にしくじりまくったロシアの選手に殺意を抱いたかもしれない。私も何度か「バカ」と言った。サッカーを観るとき、人は人のことを「バカ」と言い過ぎる傾向があるので気をつけなければいけない。


●イングランド×クロアチア(グループB)
 どっちを先に観ようか迷ったが、ビデオ観戦でスイスに念力を送っても意味がないし、朝っぱらから強いフランスを観て不機嫌になるのもどうかと思ったので、こちらを観戦。ポルトガル的にはクロアチアが2位通過してくれたほうがありがたいが、ここでイングランドが消えるのも面白くないのであり、どっちに肩入れするか決めかねていたのだが、試合が始まってみると、私はクロアチアの選手がミスパスしたときに「バカ」と口走っていた。どうやら私は本当にポルトガル優先モードに入ってしまったらしい。しょうがねぇなぁ。どうしてああいう人たちに惹かれてしまうのかなぁ。だがイングランドは意外に強かった。ルーニーが得点王を狙えるレベルにまで本格化しているとは知らなかった。セットプレイでクロアチアに先制を許したものの、慌てるそぶりを微塵も見せず、前半のうちに逆転。ここで私は考え方を変えた。イングランドが残るならそれはそれでよい。ならばいっそのこと、準々決勝でポルトガル×フランスが観たい。ポルトガルが4年前の雪辱を果たすところを観たい。今の状況なら果たせそうな気がする。

 しかし結局のところ、サッカーなんてものは私の思惑とは無関係に進行していくのであった。スイスは一時的に同点に追いついてみせたものの、トゥドールの失敗菌は当たり前だが不発だったようで、ジダン、アンリ、アンリというきわめて不愉快な3ゴールでフランスが1位通過である。観たくねーな、そんな試合。んで、こっちは4-2でイングランド。どうなんだポルトガル。アンドラーデとカルヴァーリョのCBコンビがいいのでルーニーとオーウェンはそこそこ抑えられそうな気がするが、イングランドがセットプレイの守備に不安を抱えていることを考えると、コウトも使ってみたいところだ。ウソである。使っていいわけがない。しかし私は夢想するのである。同点で迎えた後半40分、ポルトガルがCKを得たところで、センターフォワードとして投入されるフェルナンド・コウトの雄姿を。一発のヘディング。仕事はそれだけでいい。やってみろコウト。見せてみろコウト。なんか知らんが、やけに興奮してきた。




2004.06.21.Mon. 14: 25 p.m.
BGM : CREAM "WHEELS OF FIRE"

 週末に更新をサボっていると各試合の印象がどんどん薄れていくので困るが、しかし大会そのものの印象はどんどん濃密になっていくのであって、この欧州選手権はめちゃくちゃ面白い。W杯よりも大会前の準備期間が長かったので選手のコンディションがいいのか、ドラマチックな熱戦やファインゴールが多く、毎日毎日、キャーキャー言いながら観戦している。今月が暇で本当にヨカッタと思う。数ヶ月後に家計が火の車(WHEELS OF FIRE ?)になるかと思うと憂鬱にならなくもないが、将来のことより目先の快楽が大事だ。そんなふうに思わせてしまうサッカーって、ほんとうに罪深い。


●クロアチア×フランス(グループB)
 強い者がツキに恵まれているのを見るのは実に腹立たしいのである。ジダンのへなちょこFKがトゥドールのオウンゴールを誘い、さらにはトレゼゲのハンドが見逃されて2-2のドロー。そのトレゼゲの同点ゴールもトゥドールのバックパスからで、クロアチアにとっては貧乏神のような存在だったが、試合終了後、そのトゥドールとジダンが元チームメイトのよしみでシャツを交換しようとしているのを私は見逃さなかった。失敗菌がフランスへ伝染したのである。言っていることがまるで子供だが、短期決戦では、ああいう縁起の悪いことはしないほうがよい。ジダン失敗しろ〜ジダン失敗しろ〜。


●デンマーク×ブルガリア(グループC)
 妙なスタジアムだった。ゴール裏が岩山でスタンドがないので工事が間に合わなかったのかと思ったら、あれで完成品であるらしい。どこがどう「芸術品」なのか私にはさっぱりわかりません。「工事中」のように見えた時点で建築家の負けだと思うのだがどうだろうか。マルセル・デュシャンの 「泉」じゃあるまいし、こんなところでコンセプチュアル・アートなんか見たくない。試合のほうは、えーと、トマソンのごっつぁんゴールでデンマークが先制したような記憶がある。イタリア戦のようなキビキビ感には欠けていたような気がするが、デンマークは前半途中から投入されたグロンキアが頑張っていた。チェルシーの日常では見られない豊富な運動量だったと思う。終了間際にはトマソンとのワンツーからゴールもゲットして2-0。のちのち大きな意味を持ちそうな1点である。


●スウェーデン×イタリア(グループC)
 ビエリは伸びきっていた。ヘディング・シュートのときだけではない。全てが伸びきっている感じ。「伸びきったビエリ」って、かなりヤなビエリだ。歯応えなさすぎ。半日前に茹でたうどんみたいなものである。しかし悪いのはビエリ本人ではなく、誰の目にも伸びきっているのが明らかなビエリを最後まで使ったトラパットーニであろう。ウノゼロで逃げ切ろうと守備を固めるのはいつものことだから今さら驚かないにしても、デルピとカッサーノを下げてビエリを残したのはどうかしているとしか思えない。とくにデル・ピエーロは、トッティ不在効果で実に活き活きしていたように見えた。彼が前線に残っているだけで、スウェーデン守備陣にとっては相当な脅威だったに違いない。伸びきったビエリでは、脅しにならないのである。結果、どうぞ攻めてくださいと言わんばかりに退きまくったイタリアにスウェーデンが襲いかかる。あれで守りきれると思っていたのは、世界中でトラパットーニただ一人だけだと思う。ネスタの「まだ守れっていうのかよ」と言いたげな表情が印象的だった。私はスウェーデンに肩入れしていたので別にいいが、アホですわな。それにしても、最後は「スウェーデンの決定力 VS ブッフォンの反射神経」という勝負になるような気がしていたが、イブラヒモビッチにあんな秘技があるとは知らなかった。CKのこぼれ玉に反応し、ブッフォンを背中で抑えながら右足のアウトだかヒールだかよくわからない部位で回し蹴り。これが信じられないコースに飛んで1-1のドローである。すげえゴール。興奮したよなぁ。ファイナリストを当てる枠連馬券があるなら、私はグループCから流したい。ところでイブラヒモのシュートが自分の頭上を通過したとき、ビエリはやはり伸びきっていた。


●ラトビア×ドイツ(グループD)
 スコアレスドロー。とくに感想はなし。まあ、そんなもんじゃろ。ドイツは監督がピッチに立ったほうが点が入りそうだ。そうえいば数日前に「ヴェルちゃん(ヴェルバコフスキス?)がチェルシー入り」と書いたが、あれは私の聞き間違いだったらしい。前の試合でWOWOWの実況アナがそんなことを言っていたような気がしたのだが、この試合では「ここで活躍すればビッグクラブへの移籍も」とか言っていたので、そういう立場なのであろう。お詫びして訂正。


●チェコ×オランダ(グループD)
 チェコが、2試合連続の逆転勝利。PL学園みたいだ。相変わらず、ポボルスキーがえらいことになっている。ラツィオは、彼がキャリアの中で最低のコンディションにあったときに雇用していたように思えてならない。というか、故郷のクラブに戻ったのが大正解だったということか。あと、コレル&バロシュの2トップは、ラーション&イブラヒモと双璧かも。浮き球を上から激しく叩いたバロシュの同点ゴールは、ジャストミート感が画面のこちら側まで伝わってくるような快感があった。オランダのほうは、序盤に連続ゴールを決めて仮死状態を脱したかのように見えたものの、さすが棺桶に片足を突っ込んでいるだけあって、やることがデタラメ。ロッベン→ボスフェルトの交替には目を疑った。あのね。イタリアだって、そういうことすると守りきれないんだよ。あんなにサイドを突いていたロッベンを引っ込めちゃったら、ポボルスキーの背中を押してやってるようなもんじゃないか。今からでも遅くないから、ヒディンクあたりに監督やってもらったらいいんじゃないかと思いました。っていうか、帰国する前にクライファート見せろ。


●スペイン×ポルトガル(グループA)
 どうも私はこの作家のサッカー観がいつもいつも理解できず腹立ちさえ覚えるのであり、今回も初戦で負けただけで「ポルトガルはもう終わってしまったチームなのだと思い知らされた」などとホザいていて業腹だったのだが、そうはイカの金科玉条(意味不明)である。オランダのダメさ加減とポルトガルの(初戦における)ダメさ加減はぜんぜん意味が違う。ホスト国であるがゆえの心理的なメリットとデメリットをナメてはいけない。人間を見ずにサッカーだけを見てもいけない。作家ならなおさらである。まあ、人がサッカーについて何を語ろうと私の知ったことではないが、ともあれポルトガルは(チームも国民も)初戦のショックから見事に立ち直り、ロシア戦に続いてこのスペイン戦でもすばらしいゲームを見せてくれた。後半から登場したヌーノ・ゴメスが決めたハートフルなゴールを守りきって0-1。終わってみればグループ1位だ。熱いぜポルトガル。終盤にコウトが投入されたときはどうなることかと思ったが、ちゃんとヘディングしていてホッとした。ヘディングしかしていなかったような気もするが、それはそれでそういう仕事である。一時はロシアがなぜか2点差をつけており、「どっちも通過」を期待したものの、ギリシャに悲劇は起きずスペイン敗退。あれだけの攻撃陣を抱えながら3試合で2ゴールは寂しすぎる。哀しきフェルナンドはコウトではなく、モリエンテスであったか。トーレスもフェルナンドだが、こちらは自業自得。そんなにプレイを見たことがあるわけではないのだが、ちょっと過大評価されているように思う。




2004.06.18.Fri. 17: 00 p.m.
BGM : DEREK AND DOMINOS "LAYLA"


●イングランド×スイス(グループB)
 どうやらスイスのGKシュティールは今大会のボケ役を一手に引き受けることになったようで、前回の腹這いヘディングに続いて、今回はポストを直撃したジェラードのシュートを後頭部でゴール内に弾き返してみせたのだった。いいぞいいぞ。そういう形で人々の記憶に残るのも才能のうちだ。シュティールはそれ以外にも、ブーイングするイングランド・サポーターにガンを飛ばすシーンなどあり、ちょっと目が離せない存在になっている。3試合で帰国させるのは惜しい。試合のほうは、そのシュティールのバックヘッドも含めてイングランドの3-0。あんまり面白くなかった。ある知り合いが「スイスの勝ち点6以上」に5000円も賭けるという信じがたい暴挙に出ていたらしいのだが、ご愁傷様でした。本人の名誉のために言っておくと、彼は賭けをしたときに酔っており、グループリーグがホーム&アウエイで行われる(つまり各国6試合やる)のだと錯覚していたそうだ。名誉のためになっていないような気もする。

 朝8時から上記の試合をビデオ観戦した後、愚妻と吉祥寺へ出かけて映画『デイ・アフター・トゥモロー』を鑑賞。学生さんみたいな生活である。きのうで単行本の口述作業が一段落したので、暇なのだ。午前中の映画館はもちろん空いているのだが、どういうわけか、やけに老夫婦の姿が目についた。合計120歳以上のカップルは割引とか、そんなようなことでもやっているのだろうか。年寄りの多い映画館が困るのは、みんなトイレが近いということだ。上映時間が1時間を過ぎた頃から、ひっきりなしに客が出入りしていた。終盤の良いシーンを見逃した人が多いのではないかと心配にもなるが、それより、戻ってきたときに自分の席がどこだかわからずウロウロする者がいるのが迷惑なのである。邪魔だっつうの。ガラガラなんだから、そこらの空いてる席に座っとけっつうの。

 濡れ落ち葉のように愚妻にくっついて行ったような次第で、作品に関する予備知識はほぼゼロだったのだが、ふつうに面白かった。というのはかなり控え目な表現なのであり、ほんとうのことを言うと、泣いた。フィーゴによく似た父親が、カンナバーロによく似た息子を助けに行く話だったからだ。私はコレに弱い。からっきし弱い。いや、フィーゴとカンナバーロに弱いのではなく、「父子モノ」に弱いのである。「私は息子に、必ず助けに行くと約束した。約束は守る」なーんて言われた日には、それだけで涙腺の準備が整ってしまう。単純なのである。クライマックスにもうちょっとヒネリが欲しかったような気もするし、たまたま数日前に地球温暖化論の胡散臭さを指摘する文章(温暖化すると南極の氷はかえって厚くなるらしい)を読んだばかりだったので設定自体に鼻白まないでもなかったのだが、泣いてしまったら何を言っても無駄ですな。あと、カンナバーロによく似た息子のガールフレンドは、クレスポによく似ていた。

 元サッカーズYさんが暇な私に小仕事をくれるというので、数週間前に六本木へ引っ越したばかりのフロムワンへ足を運んだのは一昨日のことである。六本木一丁目の改札を出た瞬間に、茫然とした。あんなビルの中に雑誌の編集部が存在するはずがないと思ったからだ。しかし移転通知ハガキの住所には、たしかに「泉ガーデンタワー」と書いてある。マジすか。巨大なエレベーターを前にしたときは、踵を返して帰ろうかと思った。外国に来たわけでもないのに、なぜかそのビルの中では自分の言葉が通じないような気がしたのである。しかし帰ると小仕事がもらえないので不安に駆られながら乗り込んだのだったが、途中でエレベーターを乗り換えないとたどり着けない編集部ってどういうことだ。そんなことで庶民たる読者の生活感がわかると思っているのか。などと八つ当たりしながら7階で乗り換えてみたら目的階の押しボタンが見当たらず、どうやらその階は通過するエレベーターだということがわかって慌てて降りたので恥ずかしかったじゃないか。泉ガーデンタワーは人に恥をかかせるビルなので、初めて行く人は気をつけたほうがよい。ようやく「おまえら外資系コンサルティング会社か何かにでもなったつもりか」とツッコミたくなるような佇まいの編集部に到着すると、そこにはテレビで見知ったお顔の人物がいらっしゃって、ますます現実感が遠のいた。ジャンルカ・トト・富樫さんである。すずき君に紹介してもらって、名刺交換をさせていただく。かなり嬉しかったが、生ダジャレを聞けなかったのが少し残念だった。

 小仕事の資料を受け取ったあとは、新旧担当者と3人で「季菜」という和食屋へ。コースターに筆文字で書かれた店名がなぜか「雪葉」に見えてしまい、オーダーを取りに来た女将さんらしき女性に「ユキハとお読みするんですか?」とバカげた質問をしてしまった。ほんとうに、人に恥をかかせるビルだ。ちなみに正解は「キナ」です。旨い料理に舌鼓を打ちつつ、マンチーニの去ったラツィオの今後についてすずき君と話し合ったものの、われわれが話し合ったところでどうなるものでもないということに気づいたので、途中からラツィオ来日時の行動に関する作戦会議に変更。何の作戦かはナイショだが、とにかく私は仙台に行く。マンチーニが何人かインテルに連れて行くという話もあり、そうなるとどんなラツィオが来るんだか心許ないかぎりだが、それがラツィオであるかぎり私は見に行く。来季はスカパー!でもほとんど中継がないかもしれないし。うう。

 ここからは親バカ系の父子モノになるので、そういうのが嫌いな人は読まないでほしいのだが、セガレが算数のテストで100点を取ってきた。しかも二つだ。でへへ。うれしいんだなぁ、わが子の100点って。初めて受けた試験を二つともノーミスで乗り切ったのはえらい。私は中学時代、最初の英語のテストでピリオドを一つ書き忘れて100点を逃したことがあり、それが英語への苦手意識の遠因になっているようにも思われるので、セガレも一つや二つはケアレスミスをやらかすのではないかという予感があったのだが、意外に落ち着いているようだ。一年生の最初の算数だから、ちゃんと数が数えられるかどうかを試すような単純な問題ではあるものの、中には引っかけ問題クサイものもある。クルマが8台ほど一列に並んだ絵があり、1問目は「ひだりから4だいめを、あかでぬりましょう」、2問目は「ひだりから4だいを、あかでぬりましょう」だったりするのだ。「4だいめ」と「4だい」だからまだ親切だが、2問目が「ひだりから3だいを」だったら、3台目だけ塗ってペケを食らう生徒が続出することだろう。こうして、ミスをしないことだけが取り柄の人間が優等生として世に出て行くのだった。役所で役人を育成しているようなものである。

 しかし公立の小学校というのは、そういう教育内容を云々する以前の問題がやはり多いようだ。セガレのクラスは先日の授業参観でもみんなふつうに教師の話を聞いて授業に参加していたのだが、あとで聞いたところによると、隣のクラスは崩壊していたらしい。おお、あの有名な学級崩壊か!などとはしゃいでいる場合ではないのである。机に足を載せている奴、床に寝そべっている奴、椅子に座ったままバタンと倒れている奴などがいたというから、かなり本格的な崩壊ぶりだ。そういう現象があると話には聞いていたが、現実にわが子の通う学校がそんなことになっているとなると、ものすごくグッときてしまう。親の見ている前で崩壊する子供たちもすごいが、それを叱りもせずに淡々と授業を続けていたという教師もすごい。それとも、親が見ているから叱らなかったのだろうか。ともあれ、ほんとうに崩壊するんだなぁ学級って。もしそれがセガレのクラスだったらと思うと、頭が痛い。いや、いずれクラス替えでシャッフルされれば、崩壊生徒や崩壊教師と同じ教室になる可能性が高いわけだから、まったくもって他人事ではないのである。授業参観でそんなものを目の当たりにしたら、黙っていられる自信がない。なにしろ私の場合、ふつうに授業をしていたセガレのクラスでさえ、退屈して隣の子とお喋りしているセガレの頭を危うく後ろからひっぱたくところだったのだ。セガレはいちばん後ろの席だったので、手を伸ばせば届いたのである。よく我慢したものだと自分を褒めてあげたい。いずれ参観した授業が崩壊していたときには、それを放置している教師をひっぱたかないように気をつけようと思う。


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