愛と幻想のフットボール
2002 FIFA WORLD CUP Korea/Japan special #01.

朝、夜。
fantastic sunrise and realistic sunset with 64 football games.

text by EDOGAWA koshiro
e-mail : h_okada@kt.rim.or.jp


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5月29日(水)大会2日前の午前中

「フランス×セネガル戦のチケット2枚あるんだけど、行かない?」という電話がG先輩からかかってきたのは、昨夜8時頃のことだった。ひょえー。ものすごい緊急事態じゃ。先輩もお知り合いから持ちかけられたそうだが、なんで今頃そんなモンが余ってんだ。「いやああああああああああああ」と呻きつつ約3秒間、頭をフル回転させてあらゆる可能性を探ったが、結論は「無理」。子持ちでなけりゃ、速攻で支度し始めたかもしれないけれど。でも、いまから開幕日のソウル行き航空券なんて取れるんだろうか。と思っていたら、深夜にチワ姉さんから電話。「G君から電話もらって、行くって言っちゃったんだけど、パスポート切れてたぁ〜ん」とのこと。あー。「で、G君の携帯の番号、知らない?」と訊かれたのだが、わからなかった。お役に立てず、すみません。なんというドタバタ。いろいろなことが起こる開幕直前である。みんな、浮き足立ちながら右往左往している。とはいえ、無理して落ち着く必要はない。それもワールドカップ、これもワールドカップでしょう。たぶん。

*

 『ワールドカップで国歌斉唱!』(いとう やまね著/ベースボール・マガジン社)という新刊を購入。ほんのちょっぴり著者と縁があるから言うわけではないのだが、昨今のサッカー本ラッシュの中でも、最高に「使える一冊」であろう。ある意味、選手名鑑より使えるかも。なにしろ本書には、出場各国(全部じゃないけど)の国歌が(原語&対訳はもちろん)カタカナ表記で載っているのである。ものすごく親切。これさえあれば、フランス語だろうがポルトガル語だろうがウルグアイ語だろうが、「いっしょに歌える」わけだ。え、ウルグアイ語って無いの? ともかく、いっしょに歌いたいじゃないか、国歌。むろん、それぞれの国歌(家)成立の経緯なども書いてあって、とても勉強になる。ちょいと真面目な話をすれば、W杯のテレビ中継では、国歌斉唱時に訳詞を字幕で流すべきだと思った。各国の国歌を知れば、自由だ民主主義だ共和制だ何だかんだを手に入れるために、人々がどれほど血腥(なまぐさ)いコストを払ってきたのかがよく判る。平和ボケの解消に、これほど有効なものはない。



語る人シリーズ#02



周囲から拒絶され、はみ出した者、
つまりフリーク(変人)に頑張ってほしいんだ。

アナスタシア(歌手)


 これも27日の朝日新聞夕刊から。「ほしいんだ」でいいんだろうか。「ほしいの」「ほしいわね」と翻訳すると、「女性の描き方が一面的」とかってフェミニストから抗議されちゃうのかな。だったら「ほしいです」でいいと思うが。ともあれ、アナスタシアだ。よく知らないが、この人はW杯の公式テーマソング『ブーム』を歌う米国の女性シンガーであるらしい。何だろう、公式テーマソングって。必要なのか? まあ、たぶん、公式ウーロン茶や公式金魚鉢や公式ゴーストライターよりは必要なんだろう。

 さて、お言葉である。そのテーマソングも収録した新作アルバム『フリーク・オブ・ネイチャー』の宣伝用コメントだから、とくにサッカー選手を念頭に置いたものではないかもしれないが、もしかしたら彼女、ロマーリオのファンなのかもしれない。もう頑張りようがないけどね。ロマーリオ。いまごろ何してんでしょうか。バッジョとPK合戦してたりして。一方、頑張る余地がないわけではないのが、アイルランドの変人ロイ・キーンである。「人は病気にもなるし、間違いも犯すし、不完全なもの」というアナスタシアの言葉をマッカーシー監督に聞かせたい。はよ呼び戻さんか。ニッポンには「土下座」とか「みそぎ」といった文化がある。水に流す、という言葉もある。ここは開催国のカルチャーに学ぶべし。謝れ。そして、許せ。

 ところでアナスタシアは、「日本と韓国を想像していたら、日韓の太鼓の音、サッカーボールの音、客席の爆発するような歓声がイメージとして浮かんできて、『ブーム』という言葉が頭の中で鳴り響いてきた」そうだ。なんだとこの野郎、アジアにはサッカー文化がないから一過性のミーハーイベントで終わるって言いたいのか……などと怒ってはいけない。この場合、「ブーム」は「とどろく」とか「ぶーんと鳴る」とか、そういう意味ですね。きっと。あなたは、日本と韓国を想像すると何がイメージとして浮かんできますか。私は……………えーと……………ダメだ。カズのへなちょこゴール@ドーハや加茂監督のへなちょこ采配@国立しか思い浮かばない。




5月28日(火)大会3日前

 朝っぱらから、O君よりメール。英単語の綴りが違っとるとのご指摘。どうもありがとうございました。恥ずかしいので、何が間違っていたのかはナイショ。カッコつけて、できもしない英語を使うとこういうことになるのである。校正ingマシーンやらスペルチェッカーやら親切な友人が多くて助かります。

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 きのう書き忘れたのだが、日曜日の韓国×フランス戦は、かねてから懸念されていた深刻な問題が改めてクローズアップされた試合だった。雷雨の影響でスカパーがダウンし、録画されていない時間帯があったのである。梅雨入りしたら、毎日こんな心配をしなきゃならない。大半の試合を録画して観戦するであろう私にとって、これはたいへん困ったことだ。再放送があるからやり直しはきくとはいえ、ビデオ観戦中に録画不調が発覚し、次の再放送を待つといったことが頻発すると、観戦効率がきわめて低下する。なんだかんだで6月が忙しくなってしまいそうなので、効率はとても大事だ。嗚呼、どうして6月を休みにできなくなってしまったのだろう。1年半ぐらい前から、ここを休むために汗水垂らしてきたというのに。末端労働者はスケジュールを思うように組めないのであった。W杯前の2週間がヒマだったって、一体どーゆーことだっ。憂鬱である。W杯を全試合見ながら、いつ仕事すればいいのか。

09 : 30〜14 : 00 観戦(2試合)
14 : 00〜19 : 00 仕事
19 : 00〜21 : 30 入浴・食事・セガレの相手
21 : 30〜24 : 30 観戦(1〜2試合)

 こんな感じか。1日に5時間しか机に向かえない。そのうち1.5〜2時間は日誌執筆に費やされるだろうから、仕事は3〜3.5時間だ。そのうち集中力の神様が降臨するまでに小1時間は費やされるだろうから、まあ、ざっくり言って2時間だね。たぶん1日に5〜6枚しか書けない。全部で250枚書くとして、50日ぐらいかかる計算だ。おいおいワールドカップが終わっちゃうじゃないか。っていうか〆切に間に合わないんですけどね。やれやれ。

*

 ピッポ君は第2戦目標、ジダンは決トナから、との噂。現地入りしてから怪我すんなよなー。ともあれ、強豪国の通過順位が読みにくくなってきた。いまさら「FWトッティ」を試そうとしてるイタリアも、司令塔ジョルカエフのフランスも、2位通過があり得ないわけじゃない。フランス1位通過なら、ジダンがフィットしていないうちに1回戦で叩こうと考えたアルゼンチンが2位通過を選択する可能性もある。するとF組1位はどこになるかというと、3戦目でアルゼンチンから勝ち点3を恵んでもらえるスウェーデンだ。えらいこっちゃ。準々決勝で日本とリターンマッチですわ。とても運が良ければ勝てるかも。うほほ。ベスト4が見えてきたぜベイベ。イタリアが2位通過してると、3決の相手はカメルーンか。最後の試合を韓国で戦うってのも妙な話だ。いっそのこと中津江村でやったらどうか。主審は坂本休村長だ。わっしょい、わっしょい。

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新企画:語る人シリーズ#01



サッカー中継には良いか、悪いか、
どちらかしかない。

ピーター・エンジェル(HBS制作責任者)


 きのうの朝日新聞夕刊一面に掲載されたもの。HBSとは「ホスト・ブロードキャスト・サービセズ」の略で、ここが大会の映像を一手に引き受けるらしい。W杯やCLでの中継実績を持つ7人のトッププロを束ね、総監督として「勝つための戦術を練る」のが、制作責任者たる彼の役目だ。ありがたい話じゃのう。七人の侍を雇った村人のような心境である。ほいじゃが、不安もないわけではない。なにしろピーター・エンジェルだ。責任者の名前が胡散臭すぎるじゃないか。米国の監督ブルース・アリーナ(音痴だったら笑うぞ)に勝るとも劣らない胡散臭さだ。このセリフも、一見すると自信に満ちてはいるが、聞きようによっては「成功するかどうかは五分五分」と言っているようにも思えるのだった。しかしまあ、真のプロフェッショナルだけに許される発言ではある。日テレの人間がこれを口にしたら、生タマゴ投げられるよな。私も、「ゴーストの原稿には良いか、悪いか、どちらかしかない」と口走ってもタマゴを投げられないようなライターになりたい。実際には、「ごくフツーか、全然ダメか、どちらかしかない」ですが。ちなみにエンジェル氏は、「私たちの映像を忘れてもらうことが一番の成功です」とも語っている。なるほど。たしかに、名実況は記憶に残るが、名映像は名映像としてではなく「名プレイ」として記憶に残る。存在していないように思われるのが一番だなんて、幽霊ライターとしては共感しちゃうなぁ。もっとも、私のようなゴーストライターにかぎらず、世の中の大半の仕事はそういうものなのかもしれない。黒子の美学、である。「よくできました」とホメられて喜んでるようじゃ、まだまだ半人前ってことだ。誰にも気づかれず、やるべきことをやって静かに去っていく。殺し屋に求められる態度ですね。だとすると、新聞記者のインタビューなんか受けちゃいけないような気もするけど。ふつう、殺し屋は取材を受けない。ところでアナウンサーの場合、名実況だけでなくダメ実況も記憶に残ってしまうところが厄介だ。私たちは、「船越ゴルゴル事件」を永遠に忘れないだろう。




5月27日(月)大会4日前

 というわけで、体裁をW杯モードにチェンジしてみたのである。中身は通常どおりですが。あと四つ寝るとワールドカップだ。念力と脱力の祝宴だ。

 きのうの韓国×フランス(国際親善試合)は、何かの拍子に誤ってスイッチが入り、どちらも念力を早く行使しすぎてしまったような印象。2-3なんて派手な試合してる場合なんだろうか。おかげでジダンが負傷。フランスに暗雲。ま、準決勝までに治れば問題ないと思うけど。ルブーフでさえアンリ並みの決定力を持っているフランスは、やはりつおい。

 アントラーズ×イタリア(練習試合)のほうは、基本的に念力なしの脱力マッチだったのだが、ひとり念力込めていたピッポがゴール後に故障した模様である。しかし、FW陣てんこ盛りのアズーリにそう大きな痛手はあるまい。なにしろベンチにデルピエーロとデルベッキオとモンテーラが座ってるチームだ。だが心配なのは、DF陣の層が薄いこと。ファイナル進出の条件は、ネスタとカンナバーロが故障しないことか。しかしそのネスタも、平瀬や本山に軽く抜かれて、シーズン中の不調を脱していないような感じだった。脱力モードだったならいいけどねぇ。

 そういえば、土曜日に見たサンフレッチェ×アイルランド(練習試合)では、竜彦くんがヘディングでゴールを決めていた。やっと呪文を覚えたか。間の悪い人である。



5月26日(日)大会5日前

 きのうはセガレの祖父母(×2)を招いてお誕生パーティ。旋風神(ハリケンジャー関係のロボット)とチームアイズアタッシュ(ウルトラマンコスモス関係のガラクタ)をゲットして、セガレはご満悦であった。料理は、このあいだ練習(?)したスパニッシュ。これまでセガレの祖父母に食べさせた料理の中では、いちばん評判がよかった。高齢者の口にはイタリアンよりもスパニッシュのほうが合うようだ。パエリアはタイ米のほうが旨いかも。

*

 宴の後、日本×スウェーデン(国際親善試合)をビデオ観戦。メンバー表では服部がDF登録になっていたので、「ふふふ、やはりそうであったか」と納得したのだが、試合が始まってみると、いくら数え直してもバックが3人しかいなかった。あれえ、おっかしいなぁ。どうやらトルシエは、本番まで手の内を隠し続けるようだ。もしかしたら2006年まで隠し続けるのかもしれない。その守備陣が一対一の弱さをさらけ出して先制されたものの、アレックスのクロスと中田英のジャンプが相手の自滅点を誘って1-1のドロー。久々に、新しい念力ゴールのオプションを見せてくれた。中田は触らずにボールのコースを変えたに違いない。真空投げの要領ですね。どんな要領だ。



5月25日(土)大会6日前

 ゆうべは吉祥寺で、高校時代の友人Mとおよそ7年ぶりに会食。Mは、某H堂勤務の広告マンである。CFに出演するタレントさんのわがままに右往左往させられる日々らしいが、プレッシャーとやり甲斐がほどよく均衡したポジションで、わりかし居心地良く働いているらしい。良いことだ。部下は4人。「最近の若いモンはガマンの閾値が低い(諦めが早い)」とこぼしておった。実に正しくオヤジ化している。オヤジ化することは正しい。オヤジ化せずに何の人生ぞ。よくわかりませんが。「自己実現したがり屋さんの勘違い女」の話題で盛り上がる。勘違い女の話はどうして面白いのだろうか。



5月24日(金)11:15 a.m.

がっかりだ。何がってロイ・キーンだ。監督に悪態ついてサイパンから本国に強制送還だ。遅かれ早かれレッド食らう奴だとは思っていたが、まだ試合もしてないのに(っていうか日本に入国もしてないのに)退場させられるとは何事だ。私はサウジ×アイルランドを見に行くのだ。それが唯一のナマW杯なのだ。キーンだけ目で追ってればいいやと思っていたのだ。私にとっては、ロイ・キーンこそがW杯だと言っても過言ではなかったのだ。だいたい、奴がいないんじゃ第3戦が完全無欠の消化試合になってしまう公算が大だ。ケンカしたなら、監督のほうが帰ればよかったのだ。監督とロイ・キーンと、どっちがアイルランドにとってロイ・キーンだと思ってるんだ。ばか。

*

 きのうの愚問に、お答えをいただきました。


Readers' Mail No.124「なぜ福井がレギュラーなのか」(5/24)

 サッカートトの専門家でありながら内外野球事情にも詳しい私がご説明申し上げます (苦笑)。

 福井選手はレギュラーというわけではないです。ただ昨日の試合に彼が先発出場したことについては、普通以上の巨人ファンであれば誰もが納得したことと思います。なぜなら、彼は「井川キラー」だからなのです。「○○キラー」という言葉の使われ方も随分インフレ気味ですが、この場合の「井川キラー」は昨年の時点における「桑田キラー」や「藪キラー」とかいうのとはおよそ訳が違います。現在ハーラートップの7勝(しかも「打線の援護で勝った」試合は2つのみです)を挙げている井川は「江夏2世」の呼び名が決して恥ずかしくないほどの大投手に成長しつつあります。この破格の投手から、福井という(はっきり言って無名の)選手は昨日の試合以前にたった5打数中2本もの本塁打を放っているのであります。もちろんその背景には清原、仁志、江藤といったレギュラー選手の故障による戦線離脱→それによって出場機会をつかんだ福井や斉藤といった選手の台頭、というダイナミックな動きがあります。現在の巨人の快進撃は清原選手の脇腹痛から始まっていると言っても良いでしょう。清原自身は故障前にはガンガン打ってたんですがねえ。不思議です。

 ところで、井川が左利きのファンタジスタというのはちょっと違うような気がしますが。どっちかというと「大型の服部」という感じの左サイドバックではないかと。そして井川も服部と同様、トルシエには大変重用されそうな選手に思えます(やっぱり清原は使わないだろうな)。(バリー・タボンズ/って昔のフォークグループみたいだ)


 まるで巨人ファンのような丁寧な解説(笑)、どうもありがとうございました。ふうん。福井という選手を見たことも聞いたこともないのだから当然だが、ぜんぜん知らなかった。やるじゃないか福井。さすが張本似。でもなぁ。私は福井×井川の対戦を1打席しか見ていないが、いとも簡単に三振していたぞ。福井自身、最初っから打てるとは微塵も思っていない感じの脱力的三振だった。山倉の三振を思い出した。5打席で2本塁打という実績は、「率」で見るか「絶対数」で見るかによって評価が変わるのではないか。「本塁打率4割」と見れば起用したくなるけれど、「あの破格の投手から、もう2本も打ってしまった」と見れば、ちょっと使いづらい。井川からの一生分の本塁打をすでに打ち終わったかもしれないからである。あれは西鉄時代か大洋時代か忘れてしまったが(っていうか、どっちにしろ生まれる前の話だが)、三原監督が4打数4安打の選手に5打席目で代打を送ったのも同じ理屈だったと思う。ただし、その代打策が成功したのかどうかは知らないけど。

 トルシエが井川や清原を重用するかどうかはけっこう興味深いテーマなので、本人と話す機会があったら訊いてみたい。っていうか、誰か訊いてくれ。記者会見で。野球、見たことあるのかな。内野も外野もフラットに守ってないから、イライラするかもしれないけど。4年もいるんだから、本気でニッポンを理解するつもりがあるのなら、一度くらい東京ドームか甲子園に足を運んでもよさそうなもんだ。あれ、運んでたっけか? そんなことがあったような気もするし、なかったような気もする。国技館はどうだったっけ。大相撲、見たことあんのか。トルシエがいちばん好きなお相撲さんは誰? あんがい千代大海?

*

 なんだか無性に反芻したくなって、日本×アルゼンチン(フランスW杯1次リーグ)のビデオを引っぱり出して、見た。日本人、いっぱい行ってたねぇ。今回はホームアドバンテージがあるって言うけど、これを見ると、「4年前もあったんじゃん」と言いたくなる。それでも3敗かー。うーむ。当時はイライラしながら見ていたが、いま見ると、なかなかよく鍛えられたメイド・イン・ジャパンな好チームという印象。あの過酷なアジア予選を経ただけのことはある。ま、いつだって「昔はよかった」なんだけどね。トルシエも、このビデオを見て中山&秋田を選出したに違いない。でも、だったら中西永輔も召集すべきだったのではないか。などと愚にもつかないことを考えながら見ていたらグッタリと疲労したので、前半だけでビデオを止めた。クラウディオ・ロペスは4年前のほうが老けていた。



5月23日(木)11:50 a.m.

 ゆうべは、なんとなく(ホンモノの)阪神×巨人を横目で観戦。ものすごく久しぶりに、松井のホームランをリアルタイムで見た。ジダンのアレを思い起こさせるような、抑えの効いたいいシュートだった。サッカーをやっていたら、日向小次郎になれたかもしれない。もしくは和製ビエリ。少なくとも、西澤と中山を足して3倍にしたぐらいのストライカーにはなっていただろう。惜しいことをしたものだ。左サイドを深くえぐったヨシノブからのクロスを、ニアポストに詰めていた松井が胸でトラップし、DFをブイブイなぎ倒しながら振り向きざまにシュート、GKが弾いたボールを2列目から飛び込んだイチローが押し込んでニッポン先制!というシーンが目に浮かぶ。井川というレフティも良い選手だが、たぶん、「寡黙な左利きファンタジスタ」が嫌いなトルシエの構想からは外れたと思う。

 試合のほうは1-2で巨人の勝ち。タイガースは、送りバントを何度も失敗して自滅していた。できないなら、しなきゃいいのにね。失敗した送りバントほど間抜けな利敵行為がほかにあるだろうか。どうでもいいが、送りバントという行為を2年ぶりぐらいに見たような気がする。久しぶりに「送りバント」と書いてみると、なんかヘンな感じ。なぜ走者を次の塁に進めることを「送る」というのだろうか。「進めバント」じゃいけないのかな。英語では何と言うんでしょうか。幼稚園もそうだけど、送ったら、後でちゃんと迎えに行かないとね。あ、それがスクイズなのか。迎えバント? ところで、武田はいつから巨人の選手になっていたのじゃ。聞いてないぞ。私は、背中に4番をつけてた頃の武田がわりと好きだった。投手の4番はカヌの4番と同じくらい違和感があるが、なんだかカッコいい。永久欠番なんてカタイこと言わないで、バンババン(表記忘れた)にすればいいのに。あと、あの張本みたいな顔した35番の選手は何者じゃ。福井? 見たことも聞いたこともないぞ。彼、レギュラーなの? なんで?

*

 台湾のmanamiさんよりメール。「先日、近所の野球場でダイエー×オリックスの試合がありました。2日間、道路は大渋滞。全く迷惑なイベントでしたよー。どうして台北なんだよう。高雄とかでやればいいのにーとか思ったんですけどっていうかなんで今? 野球界には野球界の事情があるんでしょうが」とのことですが、上記のとおり野球事情に疎いので、私にはよくわかりません。しかしまあ、道路が大渋滞するぐらいの大イベントだったんですね。凄いじゃないかダイエー×オリックス! 世が世なら南海×阪急の関西ダービーだ! それが今じゃ、ほとんどCLファイナル並みのオミコシわっしょいだ! あと、「日本代表メンバーにはびっくりです。特に中村俊輔。特に秋田。なんで秋田なんですか!? さっぱりわかんないです」とのことですが、私はサッカー事情にはめっぽう詳しいので、これは説明できます。ちゅんちゅけ落選は、前述のとおり、トルシエは寡黙な左利きファンタジスタが嫌いだから。名波落選も同様です。なので、おそらくラウールやリバウドが日本人だったとしても、彼は自分のチームに入れなかったことでしょう。寡黙な左利きファンタジスタが嫌いな理由は知りませんが、幼少時に、寡黙な左利きファンタジスタにいじめられた経験でもあるのかもしれません。秋田選出は、当然、4バック(もしくはフラットじゃない3バック)にするため。くどいようですが、トルシエのフラット3理論は、サッカー史上最大の三味線(ブラフ)だったのです。



5月22日(水)11:00 a.m.

 風呂場における親子の会話。

子「ねえねえ父さん」
父「んー?」
子「父さんは、わーるどかっぷより好きなものって何?」
父「へ?」
子「ないの?」
父「……あ、いや、そ、そんなことないぞ。ワールドカップが世の中でいちばん好きだなんて、そんなことがあるもんか。お、おまえは、いったい父さんを何だと思ってるんだ。もっと好きなものがあるさ」
子「何?」
父「そ、そりゃあ、おまえ…………えーと…………あーと…………んーっと…………あ、そ、そうだそうだ、父さんは、おまえと母さんのことがいちばん好きに決まってるじゃないか。ど、どうだ参ったか」
子「わーるどかっぷより?」
父「うん、ワールドカップより」
子「そっかー。でもなぁ……」
父「で、でも何だ。何かモンダイでもあるのか」
子「百歳になったら、ほかの人とケッコンしちゃうかもよ」
父「だ、誰がじゃ」
子「おれ」
父「あー、なんだ、おまえか。母さんのことじゃないのね。いいよいいよ。遠慮しないで、どんどん結婚しなさい。でも、もう少し早くしてくれると嬉しいなぁ。おまえが百歳だと、父さんは百三十三歳だからなぁ。ケッコン式に出られないかもしれんなぁ」
子「じゃあ、二十歳くらい?」
父「言うことが極端なんだよ、おまえは」
子「きょくたんって何?」
父「すごく端っこ、ってこと。まあ、翼もそうだったから二十歳でもいいけど、もう少し遅いほうがいいかもしれない。最近の日本人は、一人前のオトナになるのに昔よりも時間がかかるからね」
子「ふうん。父さんはいつケッコンしたの?」
父「三十歳のとき」
子「だったら、おれは四十八歳にしようかな」

 なぜ「だったら四十八歳」なのかはわからないが、そんなセガレは今日が誕生日。満五歳になった。挙式まで、あと四十三年だ。私は、生きていれば八十一歳になっている。実質的に、百三十三歳と大差ないような気がしないでもない。八十一歳の人に失礼な言い方をしたかもしれないが、少なくとも二十歳と七十二歳ほどの差はないであろう。やっぱり、もう少し早く結婚してほしい。

*

 セネガルの名産品もカメルーン代表もW杯のチケットも私の確定申告も遅れまくっている。物事は何だって予定どおりに進まない。日本人はしばしばラテン系やイスラム系の人々を「時間を守らない」と名指しで非難するが、あれは予定は未定で決定ではないことを知らない人間の身勝手な言い草だ。なぜ身勝手と決めつけるかというと、他人が自分の思ったとおりに動くと思い込んでいるからである。極端な話、これは、自分が飲みたいときに必ず母親のオッパイが出ると思い込んでいる赤ん坊並みの万能感だと言っていいのではないだろうか。私は外国人との交流がほとんどないので、外国人とつきあうときはそんな思い込みを捨てなければいけない、などと陳腐なことを訳知り顔で言いたいわけではない。思い込みを捨てなければいけないのは、「外国人とつきあうとき」ではなく「人とつきあうとき」だ。日本人だって、みんながみんな時間を守るわけではない。その証拠に、私はラテン系でもイスラム系でもないが、いつも原稿は予定より遅れる。いつもだ。しかし私の担当編集者の中に、自殺した人はまだいない。私を殺害しようと試みた人も(たぶん)まだいない。自分のせいでもないのに頭を下げて謝ってしまう人もいない。私がこんなことを言ってはいけないと思うが、たぶん、遅れたって「何とかなる」からだろう。私も「何とかなる」と思っているから、何ともならなくなるまで執筆ペースが上がらない。この「何とかなる」と「何ともならない」の微妙かつスリリングなタイミングを阿吽の呼吸で巧みにコントロールするのが編集者の仕事(の重要な一部)だ。キャンプを招致した自治体もJAWOCも、編集者が仕切ればよかったのかもしれない。おそらく日本でいちばん「遅れ」に慣れてるからね。だから、おまえがそーゆーことを言うなってば。ごめんなさい。私を殺さない編集者は、ほんとうにえらい。藁人形に五寸釘ぐらいは打ってるかもしれないけど。その手の呪いは「不能犯」といって、殺意があっても殺人未遂罪にはなりません。でも、釘は打たないでくれ。



5月21日(火)11:50 a.m.

 日曜の晩に酒を飲みながらタボン君とヤマちゃんと一緒に(カラオケボックスではなく自宅ダイニングで)1コーラス歌ったせいで、2日たっても『青春時代』が頭の中で鳴り響いて困っている。「チャッチャッ、ジャララランラランラーン」というイントロを思い出した時点で、もうダメだ。「道に迷おーって、ジャン、いるばかりぃ〜」まで一気に内心で歌い切ってしまう。さあ、あなたもご一緒に。チャッチャッ、ジャララランラランラーン、チャッチャッ、ジャララランラランラーン、(メゾピアノ)チャラチャラチャラチャラ(クレッシェンド)チャラチャラチャラチャラ、(フォルテ)ジャ〜〜〜ン、ジャジャッジャッジャジャ、ハイ、そつぎょーおまーでのー、はんとーしでぇ〜、いったい何の「答え」を求められているかよくわからない、謎めいた歌である。若い読者のために説明しておくと、『青春時代』というのは、「森田公一とトップギャラン」という人たちが25年くらい前に歌った大ヒット曲だ。当時は大して良い歌だと思っていたわけではなかったのに、しかもカラオケなんて存在しなかったのに、今でも1コーラス歌えるというのが凄い。歌謡曲の浸透力おそるべし。今の小学生は、四半世紀後に友だちと一緒に歌えるJポップがあるのだろうか。ちょっと心配だ。べつに、なくてもいいんだけど。ところで「トップギャラン」って何?

 さて、それまでサッカーの話をしていたのに、なぜ唐突に『青春時代』を歌うことになったかというと、タボン君が「トップメラーとトップギャランは似ている」と言い出したからなのであった。そりゃ、まあ、似てるっちゃ似てるけどよ。で、これを私が実に酔っ払いらしく「森田公一とトップメラーのデュエットだったら怖いよね」と受け、さらにヤマちゃんがドラマーらしく指でテーブルを叩きながらイントロを歌い始めたら、もう止まらなくなったという次第だ。酒席のリポートって、ほんとうにバカバカしい。その後、私たちは成り行きに任せて学生時代に自分たちが出演したライブのビデオを観賞し、青春時代の思い出に浸ったのであった。かなり情けない酒の飲み方である。情けない酒の飲み方は楽しい。17年前の私たちは、全員がいまより激しく痩せていた。正確にいうと、17年かけて激しく太ったということだが。たぶん3人合わせて小柄なオトナ一人分ぐらい体重が増えている。ただでさえ日本は国土が狭いんだから、そんなに太ってはいけない。ヤマちゃん夫人は、私の顔があまりに小さかったことに驚愕していた。「江戸川さんって、昔はホスト系だったんですね」とも言われた。今まで、そんなふうに言われたことも思ったこともない。ちなみにベースのO君は、ヤマちゃん夫人によれば「楢崎にそっくり」だそうです。そう言われれば、たしかに。いまはチラベルトだけどね。生涯一GKって感じ? 20年後にはオリバー・カーンになっているかもしれない。しかも頭がバルテズになってたりして。冗談です。あと、ヤマちゃんの髪型は、ちゅんちゅけそっくりだった。それも青春、これも青春である。

*

 フランス×ベルギー(国際親善試合)を途中までビデオ観戦。前半は、互いにセットプレイからゴールを決めて1-1。最終的には、ベルギーが1-2で勝ったらしい。フィジカルの強さが大事だということを、あらためて実感。スキルの面で劣っていても、ガタイの大きさ&強さで互角なら、あんがいサッカーは何とかなってしまうことがあるのだった。古い話だが、たしか世界クラブ選手権に出場していた豪州のクラブもそんな感じで、ブラジルのクラブと接戦を演じていたように記憶している。そりゃあベルギーだって、ショルダーチャージでプティを軽く吹っ飛ばせる奴が中盤にいれば、そこそこ戦えるわなぁ。日本も、早い時間帯にそのあたりがヘコまされると辛い。踏ん張れ稲本。負けるな戸田。半日ぐらい、どっかの相撲部屋に入門してぶつかり稽古しといたほうがいいかも。どすこい。



5月20日(月)

 短い原稿の〆切を二本クリア。自由作文(エッセイ)のほうは、ほんとうに過去の本誌を(一部)コピー&ペーストしてしまった。ま、せっかく4年間もコツコツ書いてきたんだから、手抜きと言われようが何しようが使わにゃ損損である。次からは、「○月×日の日誌をふくらませて一本頼む」って依頼してくれると、もっと楽なんだけどなぁ。もう一つは、いつもの商品情報コラム。興味深かったのは、TOTOの画期的な新製品「NEWネオレスト」である。このウォシュレット一体型大便器(大きい便器、という意味ではないと思う)の画期的なところは、洗浄水の通り道である「フチ裏部」をなくして「新型フチ形状」にした点だ。きっと、フチ裏部をなくすにはプロジェクトX的な努力と根性とミラクルが必要だったに違いない。世界で初めてフチ裏部をなくしたTOTOはえらい。で、フチ裏部をなくしてどんな良いことがあるかというと、掃除がしやすくなるんである。従来のフチ裏部は凹凸があってブラシ清掃がしにくいため、汚れが溜まりやすかったらしい。そんなことも知らずに便器を使っていた私は、なんと怠惰な人間だったのだろう。おまけにNEWネオレストは、フチ裏部がなくなったことで(どういう因果関係があるのかよくわからないが)渦を巻きながら効率よく洗浄を行う「トルネード洗浄」が可能になったという。すごいなNEWネオレスト。なにしろトルネードだ。衣類の洗濯まで任せられそうではないか(※実際にはたぶんできません)。さらにNEWネオレストは、「デザイン面でも無駄な凹凸やコードを徹底的になくしたシンプルフォルムを実現」したので、「高級感のあるトイレ空間に最適」なのである。もう一度だけくり返すが、シンプルフォルムだ。今日まで便器にも「フォルム」があることに気づかなかった私は、なんと迂闊な人間だったのだろう。シンプルフォルムを実現した便器デザイナーは、とてもえらい。取材して本を作ってみたい、とさえ思った。タイトルは『常識として知っておきたい便器デザイン』かな。



5月19日(日)

 来客+家族=10人分のメシ作り。いい加減イタリア系にも飽きてきたので、今回はスペイン系で迫ってみた。ま、本質は大して変わらんけども。インターネットで出会い頭的に選んだメニューは、トルティージャ(オムレツ)、カラマーレス・フリートス(烏賊のリング揚げ)、パエリア(炊き込み御飯)、カルド・ガジェゴ(スペアリブとジャガイモとカブのシチュー。本来は白いんげん豆も入れるらしい)の4品。インターネットのレシピは不親切&説明不足の部分が多く、けっこう難儀だった。しかしまあ、いかにも日本人的な先入観で決めつけてしまえば、ツベコベ細かいこと言わないのがスペイン料理ってもんだ。そう思って作ったら、やはり細部の詰めが甘かった。パエリアは火加減がよくわからない。イタリア料理では、(リゾットでさえ)火加減を気にしたことなど一度もなかった。たぶん、イタリアよりもスペインのほうが繊細だということだ。少なくとも、ボール扱いに関してはそう断言してかまわないだろう。ラウールのシュートは細部に神が宿っているが、ピッポのポストプレイに火加減はあんまり関係なさそうだ。ラウールとピッポで比較してはいけないような気もするが。あと、米の量が足りなかったとしても、イタリア米と日本米をブレンドしてパエリアを作らないほうがよい。食感がバラバラになります。また、愚妻によれば「イタリア米は水をいっぱい吸ってリゾットになりたがるから、パエリアには向かないかも」とのことだが、果たして米にそんな意思や欲動があるのかどうか、真偽のほどは不明である。



5月18日(土)

 生まれて初めて、牛角(富士見ヶ丘店)なる焼き肉屋に行った。なぜか外食を渋っていたセガレだったが、アブラたっぷりの肉+韓国のり+ごはんの組み合わせに陶酔の表情。さんざん腹に詰め込んで「もう食べられない」と言った後に、バニラアイスをしっかり食っていた。牛角は、店員の態度があんがいよろしい。いまどき、こっちが頼んでいないのに途中で網を交換してくれる店は珍しいのではないかと思った。また、牛角の牛肉は一応ちゃんと牛肉の味がする。しかしタン塩は、やはり素材が大切だと悟った。そりゃそうか。素材を食ってんだから。あと、バターガーリック味のカルビは牛角の名物であるらしいが、30代後半の人間が食うべきものではないと感じた。最後に食った石鍋ラーメンも同様。食い過ぎだっつうの。ちなみにこのラーメンは、サッポロ一番の塩ラーメンに味が似ている。

*

 4月17日に開催された、フランス×ロシア(国際親善試合)を観戦。スコアレスドロー。たしかスポーツ紙では、アウエーで引き分けに持ち込んだロシアを「侮れず」とする論調が多かったと記憶しているが、私にはフランスの強さばかりが目についた。アネルカの幻のゴールは、ちっともオフサイドじゃなかったし。何でしょうか、あの判定は。ともあれ、少なくともEURO2000の予選でフランスを2-3と逆転で下したロシアの迫力&しぶとさはあまり感じられなかった。



5月17日(金)16:30 p.m.

 今朝は、セガレを幼稚園に送り届けるやいなや愚妻と電車に乗って竹橋へ行き、カンディンスキー展東京国立近代美術館を観賞。平日の午前中だというのに、ちょっと邪魔臭く感じるぐらい人が入っていた。やはり、ここで対ロシア戦の秘策をつかもうと考える者は私だけではなかったらしい。展示されているのは、カンディンスキーがミュンヘンとモスクワを舞台に、徐々に抽象の道へと踏み込んでいった1900年から1920年までの作品。ごくフツーの風景画からファンタジーの世界へ、ファンタジーの世界からナンジャコリャの抽象画への変化が、ネアンデルタールやらクロマニヨンやら原人やら新人やらの進化図のように見て取れて面白かった。人に歴史あり、である。いかにもカンディンスキー的な<コンポジション6〜7>あたりの有名な大作だけ見て感心してちゃいけませんな。リアリズムあってのファンタジーだ。サッカーと同じである。このあたりに、同じロシアのファンタジスタ・モストボイ封じのヒントが隠れていることは間違いない。おそらく、

「対象が私の絵を損なっている」

 というカンディンスキーの言葉がカギだ。モストボイなら、

「ゴールマウスが私のサッカーを損なっている」

 と言うだろう。いかにもディープな言葉である。ちょっと意味がわからないぐらいディープだ。そこにあるのは、ある種のフェティシズムなのかもしれない。いっさいのフェティシズムを排除して芸術を追求するのは困難だということ?

 ともあれ、対象が自分の芸術を損なっていると感じたカンディンスキーは、絵の対象物を、説明しなければわからないような描き方で作品の中に隠した。つまりファンタジーとはリアリズムを否定するものではなく、リアリズムを内包しながら成立するものだということだろう。自分で書いていて意味がよくわからないが、そんなに間違っていないような気がする。さて、それではロシアン・ファンタジーの後継者たるモストボイはどうするか。カンディンスキー同様、説明しなければわからないようなやり方でゴールマウスをフィールドの中に隠すとしか考えられない。ゴールマウスを隠す。どういうことだろう。形而上的に隠すのか、それとも形而下的に隠すのか、それがモンダイだ。

 結論の見えないまま館外に出て、10月革命から間もない時期のモスクワで描かれた作品<二つの楕円>(Two Ovals,1919)をあしらったマウスパッド(1300円)を購入。カンディンスキーも、まさか自分の作品がマウスパッドになるとは予測できなかったに違いない。彼の絵を最終的に損なったのは、対象でもゴールマウスでもなく、マウスなのであった。二階のテラスで一服してから帰宅。東京国立近代美術館二階の屋台で売っているコーヒーとクロワッサンは、あんがい侮れない。

*

 ……などという与太話をしているあいだに、ワイドショーで日本代表23名が発表された。正確にいうと東京プリンスで発表されたのだが、私はワイドショーで見たのである。けっこうなサプライズでしたな。こういうことなら、トルシエが記者会見に顔を出したくないのも無理はないかも。大波紋必至である。二週間前に、とんでもない石を投げたものだ。ほんわかムードも、これできれいさっぱり吹っ飛ぶことだろう。いよいよ気が立ってきたでぇ〜。わっしょい、わっしょい。


GK 飢えた狼 楢崎 曽ヶ端
DF 森岡 宮本 松田 服部 中田浩 秋田!!
MF 戸田 中田英 小野 森島 福西
   三都しゅ 明神 小笠原 稲本 市川
FW 西澤 ウナギ 鈴木 中山10番!!


 というわけで、密かに期待していたコータ吉原の逆転代表入りはなかったのであった。そんなことはどうでもよろしい。驚くべきは、ちゅんちゅけ落選!!!!である。いまごろサッカー関係の掲示板はカキコラッシュでえらいことになってんでしょうね。嗚呼、ちゅんちゅけ。ゆうべの12チャンネルの特番で、なんだかヤサグレた感じの受け答えしてたからなぁ。ますますヤサグレちゃいそうで怖い。なんで選ばないかなぁ。そんなにアディダスが嫌いなのかなぁ。てっきり、彼に対する厳しいコメントはトルシエ流の大リーグボール養成ギプスだと思っていたのだが。いま一番ギンギンノリノリな日本人フットボーラーはちゅんちゅけではないの? だいたい、だったらどーして練習試合に呼ぶんだよう。あれだけ活躍しても選ばれないんじゃ、呼ぶ意味ないじゃんかよう。どうせ選ぶつもりがないなら、他の奴を使って練習させなきゃしょうがないじゃないかよう。一方、フラット3が手の内隠しのダミー&大リーグボール養成ギプスだったことは、秋田選出で完全に明らかになったのである。ただし25日のスウェーデン戦で見られるのは、どうやらフラット4ではない。フラット3と飢えた狼のあいだに、どっかり秋田。市川も入ってることだし、いまから岡ちゃんを監督にすればぁ?



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※本誌の記述は原則として事実に基づいていますが、たまに罪の(たぶん)ないフィクションが混入している可能性もないわけではありませんので、あらかじめご了承ください。


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