ASIA 2009

■大会日程&試合結果

12月16日(水)公開練習
10:00 日本
11:00 マレーシア
12:00 韓国
13:00 中国
14:00 イラン

12月17日(木)
10:00 開会式
11:00 日本 0 - 1 中国
13:00 マレーシア 0 - 3 韓国
15:00 中国 1 - 0 イラン

12月18日(金)
11:00 イラン 0 - 1 韓国
13:00 日本 5 - 0 マレーシア
15:00 韓国 1 - 4 中国

12月19日(土)
11:00 日本 0 - 0 イラン
13:00 中国 3 - 0 マレーシア
15:00 日本 2 - 1 韓国
17:00 イラン 8 - 0 マレーシア

12月20日(日)
10:30(3決) 韓国 0 (PK 1-0) 0 イラン
14:00(決勝) 中国 2 - 0 日本

■順位(全日程終了)

1. 中国    4 12 9 1 +8
2. 日本    4 7 7 2 +5
3. 韓国    4 6 6 6 ±0
4. イラン   4 4 8 2 +6
5. マレーシア 4 0 0 19 -19

※数字は左からリーグ戦の試合数、勝ち点、得点、失点、得失点差。最終順位も同じ。中国、日本、韓国が、2010年8月の第5回世界選手権の出場権を獲得した。





■今からでも読むべき本とコラム

闇の中の翼たち
ブラインドサッカー日本代表の苦闘
(岡田仁志/幻冬舎/1500円+税)







はばたけ、闇翼たち!
最終回 そこにサッカーがあった
(12/24更新)





■バックナンバー
第1回 野望 / 第2回 代表合宿の「観戦」ポイント / 第3回 関東リーグの「矛」と「盾」 / 第4回 新型1-2-1 / 第5回 カベを作ろう / 第6回 伝説のゴール / 第7回 アジアのライバルたち〜中国編 / 第8回 韓国編 / 第9回 イラン編 / 第10回 胸を張ろう



■各大陸選手権の結果
欧州選手権 EURO 2009
南米選手権 Copa America 2009

扉(目次) / 深川全仕事 /
大量点計画 / 江戸川時代 / mail
This Moment to Arise
第3回ブラインドサッカー アジア選手権2009スペシャル
The 3rd IBSA Asia Five a Side Football Championships - B1




※1 12月21日に紹介した「プレス・アワード」のスピーチ原稿の中で、マレーシアの6番のお名前を「Muhammad Aiman Jahya Sibintang選手」としていましたが、大会パンフレットの背番号と名前に不一致があり、本当は「Saihul Izwan Rostam選手」だそうです。すみません。公式記録を確認すべきでした。闇翼コラム最終回にも同じ誤記がありますが、当局に訂正をお願いしてあります。ご指摘どうもありがとうございました。レセプションではナンバーしか口にしなかったとはいえ、ごめんね、Saihul君。
※2 12月14日のイラン情報は、後日、同じネタ元から訂正が入りました。イランにはクラブチームも国内リーグもあるそうです。詳しくは2010年1月14日の日誌をご覧ください。
※ 12月25日以降の日誌は倦埋草(うみうめぐさ)レギュラー版のほうでどうぞ。


 2009年12月24日(木) 11:00
 さらばアジア選手権

 おととい「週刊サッカーダイジェスト」の原稿を書き、きのうは闇翼コラム最終回を書いて、この大会で自分のやるべき仕事をすべて終えた。ライターとして本来やるべき仕事(素粒子物理学関係の原稿)に戻らないといけないので、この特設ページも本日でおしまい。これから、年末年始返上の激務が待っている。最後に、マレーシア戦のゴールラッシュ映像を埋め込んでおこう。何度見ても、気持ちがいい。佐々木の先制ゴールの少し前、シュートコースを空けるためにジャンプした黒田のプレイには、鳥肌が立ったのを覚えている。ちなみに、ゴールした瞬間にプレスエリアで飛び跳ねているのは私だ。撮影して公開してくれたT.Wings関係者に感謝いたします。それでは皆様、お疲れ様でした。……あ、そうそう、レセプションでプレスアワードを贈呈したときにマレーシアの6番と一緒に撮った写真がほしいので、誰かくださ〜い(※付記 仙台の増田さんが送ってくださいました。どうもありがとうございました)。あと、明日(25日)の「めざましテレビ」は必見。たぶん7時台の「ヒト調」コーナーで、黒田選手中心にアジア選手権が取り上げられる予定です。







 2009年12月22日(火) 10:55
 テレビを見て思ったこと3つ

 今朝の「めざましテレビ」が、5時台のスポーツコーナーでアジア選手権を報じた。もちろん録画してチェック。たいへん短い時間だったので、「せっかく早起きしたのに」と不満を抱いたファンもいると思うが、私はそれが短かったことに大きな意義があると思う。障害をめぐるお涙頂戴は一切なく、単なるスポーツの大会として、ハイライトシーンをはさみながらあっさり結果を伝える内容。しかもメッシやクリスティアーノ・ロナウドの活躍を伝えた後に、だ。画期的なことだと思う。こんな報道が出てきただけでも、日本で国際大会を開催した意味があるのではないだろうか。「ほらボールに鈴が入ってるんですよ。シャカシャカ」というシーンのないテレビ報道は、初めて見たような気がする。そういえば大会期間中、「めざまし」のディレクターが調布駅からアミノバイタルまでタクシーに乗った際、ブラインドサッカーの取材だと話すと、運転手が「ああ、ゴールの後ろにコーラーっていうのがいるやつでしょ?」と言われて驚いたという。「ボールに鈴」と「ゴール裏にコーラー」の説明をはしょってブラインドサッカーを書ける時代も近いのかもしれない。とはいえ私はこれから、ルール説明を含む原稿を書く。「週刊サッカーダイジェスト」に載せる記事。掲載誌は、来年1月6日発売だそうです。

 テレビといえば、私は途中から見たのだが、きのうのTBS「イブニングワイド」でも加藤選手メインのドキュメンタリーを放送していた。最後にアナウンサーがスタジオで紹介したカトケンの言葉は、「闇翼」が初出のはず。本人が同じ話をしたのならいいが、もしそうでないなら、「この本によりますと」ぐらい言ってくれてもいいような気はした。ディレクターには現場でいろいろ教えてあげたんだし。私は「中の人」じゃないんだから、タダで取材に協力する筋合いはない。ひょっとして、協会の広報担当者みたいな存在だと勘違いしてないか?

 正しく伝えてもらうのが選手たちのためだと思う(ほっとくとウソばっかり伝える奴が多い)から協力しているが、ほかのプレスは私にとって競争相手である。3年前の世界選手権のとき、私より先に取材を始めていたテレビが二つあったが、私は彼らにいっさい教えを請わなかった。頼んでないのに向こうが教えてくれたことはあったが、基本的にはゼロから全部自分で調べた。北岡さんだってそうだと思う。自費で地球の裏側まで行って撮った映像を、クレジットなしで「めざまし」に使われたのは、ほんとうに気の毒だ。AD氏が私にも詫びてくれたのでもういいが、これから世界選手権に向けて、プレスのあり方もちゃんと考えなければいけない。ちなみにそのアナウンサーは、来年の世界選手権開催地が「ロンドン」だと言ったと記憶しているが、違います。英国のヘレフォード(Hereford)です。

 もちろん人間はミスをするものだし、私もしばしば間違う。もっとも正確な記録者でありたいと願っているので、どんなに細かい誤りでも、見つけたら厳しく指摘してほしいと思う。そうそう、佐々木選手本人によれば、マレーシア戦の先制ゴールは「トゥキック」ではなく「インフロントキック」だったとのこと。お詫びして訂正します。なにしろ選手本人が読んでるんだから、私も辛い立場なのである。

 それにしても、二つの番組で韓国戦のゴールシーンをあらためてじっくり見たが、ほんとうに素晴らしいプレイである。あの2ゴールで、トモさんはアルゼンチンの主将シルヴィオ・ヴェロに肩を並べたと言っても過言ではない。2点目のターンの切れ味とシュートのタイミングは、ヴェロそっくりだった。しかし私がより感動したのは、むしろ1点目のほう。蹴り出したボールにDFより先に追いつき、そのままシュート。足元にないボールをジャストミートしたのだから、2点目より難度が高いはずだ。こちらはヴェロというより、同じアルゼンチンのルカ・ロドリゲスか。

 あの1点目の映像を見て、中国の4枚ディフェンスを突破するには、この手しかないような気もした。ボールを持っていくら切り返しをしても、あいつらは、まるで外部から侵入した抗原に群がるNK(ナチュラルキラー)細胞のようにベッタリついてくる。しかし、蹴られたボールより速く移動するのは難しい。ヨーイドンでそれに追いつくスピードなら、日本も勝負になるだろう。韓国戦の1点目のようにボールをDFの裏に出し、そこに走り込めば、あの免疫システムDFを引きはがせるのではないか。と、「次の戦い」へ向けていろいろ考えることができるのも、選手たちが世界選手権行きを決めてくれたお陰である。楽しくてしょうがない。来月、代表合宿ないの?





 2009年12月21日(月) 16:00
 業務連絡

 さきほど「国境ある記者団」(下の日誌参照)の一員だった「めざましテレビ」のAD氏から連絡があり、明朝(22日)のスポーツコーナーでアジア選手権が取り上げられる予定とのこと。時間帯は5時台か6時台か7時台か未定。まるごと録画するのがベスト。関係各位は、メールやブログ等で広報に努められたし。






 2009年12月21日(月) 13:15
 プレス・アワード

 激しい二日酔い。山と積まれた仕事。大会の総括はしばらく後回し。とりあえず昨夜の酔っぱらいの補足だけしておく。アジア枠が2から3になったのは、来年の世界選手権出場国数が8から10に増えたため。日本の選手たちは、決勝進出を決めたあとに知らされたようだ。もうひとつの枠はアフリカに与えられる。今のところモロッコの参加が有力だそうだが、できればアブディンさんが普及に努めているスーダンと地区予選をやらせてあげたいものだ。

 閉会式後のレセプションで発表した「プレス・アワード」は、記者団が選出する個人賞である。大会前から意欲的に取材を続けていた5名に主催者から声がかかり、私がその取りまとめを依頼された。当初は投票で決める予定だったが、私の提案で、話し合いによる選出に。理由はいろいろあるが、日本人だけの「国境ある記者団」なので、まあ、そのほうが開催国らしいような気もしました。記者団の総意に基づいて、以下のような話を(一文ごとに英語の通訳つきで)させてもらった。レセプションに出席できなかった関係者にも読んでいただきたいので、ここに公開します。


 たいへん僭越ながら、プレスを代表してご挨拶を申し上げます。4日間にわたる、驚きに満ちたエキサイティングな試合の数々は、われわれが人々に伝えるべきたくさんの報道価値を持っていました。この大会を通じて、多くの日本国民が、ブラインドサッカーのスポーツとしての素晴らしさを理解したに違いありません。

 しかし、われわれジャーナリストは、批判精神を忘れてはいけません。残念ながら、今大会で、スポーツマンシップに欠けるゲームがあったのも事実です。選手、指導者の皆様には、常に全力でプレイすることを忘れず、この競技のさらなる発展に努力していただきたいと思います。

 そこで今回、われわれはこのプレス・アワードを、この大会でもっともサッカーをエンジョイした選手に与えることにしました。

 その選手は、この大会でひとつのゴールも決めていません。もちろん、アシストもありません。チームの成績も、あまり良くありませんでした。

 しかし彼のプレイからは、ボールを蹴るのが楽しくてしょうがないという思いが伝わりました。心の底からサッカーを楽しんでいるように見えました。彼を見ていると、このサッカーがあって本当に良かったと思います。われわれも、彼のプレイを大いに楽しみました。寒い中で、何時間も立っていた甲斐があるというものです。

 その感謝の気持ちを込めて、このプレス・アワードを、マレーシアチームのナンバー6、Muhammad Aiman Jahya Sibintang Saihul Izwan Rostam選手(※1)に贈ります。


 「ナンバーシックス!」と口にした瞬間、場内に大歓声が沸き起こったおかげで、最後の名前を読まずに済んだ。どう発音するのかわからず、しかし事前にマレーシア関係者に教わるわけにもいかない(だって授賞がバレる)ので、テキトーに誤魔化そうと思っていたのである。ちなみに、ドトールで書いた草稿では、「スポーツマンシップに欠けるゲームがあったのも事実です」の後に、「勝利のためにサッカーを否定するようなそのプレイは、公平や誠実を重んじる日本の観客を悲しませました」とあったが、パーティを険悪なムードにしてはいけないので、やめておきました。

 二次会で落合さんから聞いた話も披露しておこう。彼はレセプション会場で、韓国の14番キム・キュンホ選手に声をかけ、たぶん通訳を介して日韓戦を振り返った。2年前は地元の韓国が勝ったので「やっぱりホームで戦うのはいいよね」と意気投合したらしいが、やがて話は4番の退場シーンに及び、あのとき起きたことをようやく把握した(見えないから味方が何をしたかよくわからなかった)キム選手は、いったん落合さんの前を離れた。そして4番の選手を連れて戻ってくると、自分のラフプレイを謝罪させたという。すてきなエピローグだった。





 2009年12月20日(日) 27:15
 タイムアップ

 現在、午前2時である。べろんべろんなのである。10時にアミノに行って、PK戦を14番の一発で勝った韓国が、実は(私は3日前に知っていたが)3に増えていた世界選手権アジア枠をゲットするのを見届けて、名波さんのサッカー教室を見ていたマレーシアの美人コーラーと握手したら手がとっても柔らかいのに感動して、やがて決勝戦が始まり、なんかもう中国のドリブル見飽きたよなあ、見飽きちゃうサッカーってけっこう珍しいよなあと思い、そうこうしているうちに0-2で負けて、逆サイドのフェンスの向こうで盲目のブッフバルトが泣いてるのを見てもらい泣きして、閉会式が終わって、クタクタだったのでタクシーで原宿まで行って、ドトールでスピーチ原稿を書いて、ラフォーレの前にあるなんとかというレストランに移動して、各国の選手団が一堂に会したレセプションでたいへん光栄なことに「プレス・アワード」のプレゼンターをやらされて、マレーシアの6番に賞を贈ったらものすごく喜んで「どうもありがとう」と日本語で言ってくれて、彼と握手できたことが(手は柔らかくなかったけど)私も嬉しくて、レセプションが終わってからも日本選手団と飲んで、タクシーで家に帰って、今日の杉並Aリーグで久我山イレブンがセガレのファインセーブもあって2戦2勝したことを聞いて、「それで何、父さん、これからブログとか書くわけ?」と妻に呆れられて、妻が寝て、そして午前2時になったわけである。原宿の居酒屋で「今日はブログ書かないからな!」と言ったら「え〜〜〜〜!!」と大ブーイングを食らって嬉しかった。だから書いてる。私は書くことしかできない。

 第3回ブラインドサッカーアジア選手権大会は、スタンドを埋めた約700人の観客が、クロスバーを越えた黒田智成のロングシュートに深い溜息をついたところで、全日程のタイムアップを迎えた。シュートを撃ってピッチに倒れ、しばらく立ち上がれなかった黒田の姿を見て、私は日本チームがこの大会で全力を出し尽くしたことを確認した。全力を出し尽くすことは素晴らしい。たぶん、勝利よりも素晴らしい。だから日本チームは素晴らしい。短くて申し訳ないが、私もいま、全力を出し尽くした。現在、3時15分。もう、タイムアップとさせてください。トモさんのラストシュートは枠を逸れたけれど、それは私の目に、来年のイギリスへと続く虹の架け橋のように見えた。





 2009年12月20日(日) 8:25
 友人からのメール

 きのうアミノバイタルに来てくれた小中学校時代の同級生(元生徒会長)からメールが来た。当時、部屋にベッケンバウアーのポスターを貼っていたような奴である。今も熟年サッカーチームでプレイしているらしい。選手にも読んでほしいので、勝手に転載しておく。


 韓国戦、最高でした。勝負にもゲームにも完全に勝っていました。韓国の14番と4番は怖かったけど、タテに2枚でケアしていたので、正直、やられる気はしなかった。黒田の(あえて、敬称略で……)2ゴールは、いずれもパーフェクト! 5チームの中で、技術的にも戦術的にも、日本はアジアトップクラスであることははっきり実感しました。

 俺は、中学以降DFだから、ついついDF贔屓になるのだけれど、4番の選手(アキさん?)が好きです。ここで通ったら危ない!という場面で、必ずそこでパスカットして……。浦和レッズにブッフバルトが(もちろん選手で)いた頃を彷彿させるプレーでした。よろしくお伝え下さい。

 一緒に行った友人も、闇翼の世界を実感できて、楽しかったみたい。「中国があれで2軍か……!」と驚いていたけど、「スポーツマンシップ的にはどうよ?」と。俺も全く同感なんだけど、あの試合は正直いただけなかった。

 明日の決勝は、仕事で応援に行けないかもしれません……。中国を叩くところを見届けたいのだけれど……。もし、行けなくても、念はアミノバイタルに送り続けます(笑)。頑張れ日本!

追伸 試合終了後、スタンド前に選手は来られないのかなぁ? 世界を決めた後、もう一度選手に間近で声援を送りたかったのだけど……。








 2009年12月19日(土) 27:10
 美しき雪辱

 長い1日だった。代表の公式戦を1日に2試合観たのは、私にとって初めての経験である。そして私は選手たちと違って、魚住先生のシゴキを受けていない。ヨッシーさんよりは2つ若いが、スタミナはたぶん風祭監督以下だ。さっき体重計に乗ったら、きのうより2キロ近く落ちていた。私は走っていないのに、だ。『日韓戦ダイエット』という本を書いたら、売れるだろうか。でもそれが『闇翼』より売れたらアホらしいので、やめておこう。ともかく、ダウン寸前である。たぶん、明日の朝が〆切の仕事があっても、ぶっちぎってもう寝るだろう。しかし選手たちに「明日の朝もブログ楽しみにしてます」と言われた手前、これを書く前に倒れるわけにはいかない。それが楽しみにできる1日になって、本当によかった。

■第1試合 日本 vs イラン

 もう、3日ぐらい前の出来事のような気がする。つまり、よく覚えていないということだ。試合中の殴り書きメモを見ても、まるで映像が浮かばない。「イラン9シュート ゴリセーブ!」とか「トモ鼻血でアウト」とか「アキ寸前でクリア!」とか「アキ頭打った」とか「アキダウン」とか「カトケン強い突破!」とか「オチドリブルシュート左足good」とか「ヤス左足シュート浮いた」とか「ヤス右足シュートGK正面」とか「カウンター トモからぶり!」とかいろいろ書いてあるのだが、わかるのは自分がコーフンしていることだけだ。なんだ「強い突破」って。日本語になってません。まあ、「力強い突破」って言いたいんだろうけどね。というわけで、現場で試合を見た私によれば、加藤の突破は特筆したくなるほど力強かったそうです。どんな突破だったんだろう。っていうか、いまさら遅いけど、アキさん大丈夫?

 というわけで、ゼロゼロで引き分けたのである。イランは8番と10番が欠場したので弱いと思ったが、実に手強かった。しかし韓国人レフェリーが正しい仕事をしていれば、結果は違ったかもしれない。せっかくマレーシア人レフェリーがこのサッカーでは珍しくハンドを2度も取り、イランのファウルが3つになったところで葭原を投入したのに、4つめは何があっても笛を吹きやがらなかったのだ。そういうことだけはよく覚えている私。ともあれ、これで日本は韓国に勝たねばならなくなり、2年前とまるで同じ状況になった。いろんな人に会うたびに「まあ、どっちにしろ韓国に勝たなきゃ雪辱したことにならないんだから」などと強がりを言っていたが、そこから重苦しい午後が始まったのである。

■第2試合 中国 vs マレーシア

 中国は韓国戦の終盤と同じ控え組が登場。レギュラー選手は3番ただひとり。それでもマレーシアに3-0で勝つのだから、単純に比較すれば韓国と同じくらい強い。いや、終盤の戦い方を考えれば、韓国より強いのだろう。前日は交代選手を入れずに3人で試合をしやがったが、今回はレギュラーの3番がピッチ内でご休憩。自陣左サイドのフェンスに寄りかかって、一歩も動こうとしない。自分の1メートル先をボールが横切っても微動だにしないのだ。そのボールを放っておける奴は、サッカーなんかやめちまえ! しかも彼はキャプテンマークをつけていた。キャプテン翼の国で、キャプテンマークに泥を塗るような真似は断じて許せない。どうしてレフェリーは「非紳士的行為」としてイエローカードを出さないのだろう。いや、あれを非紳士的行為と呼んだのでは、非紳士的な人に失礼だ。非紳士的な人にだって、人間の心ぐらいはある。あれは、非人間的行為としか言いようがない。スポーツマンが、スポーツの試合中に、スポーツを放棄する。今大会の開会式では選手宣誓がなかったと記憶しているが、それがあろうがなかろうが「スポーツマンシップに則り正々堂々と勝負する」ことを誓ってプレイするのは万国共通の常識だ。もし私がカルロス・カンポス(IBSAの偉い人)だったら、2試合続けてスポーツを愚弄した中国チームからは参加資格を剥奪する。でも私はカルロス・カンポスではないので、できるのは書くことだけだ。いつか「SAPIO」のコラムで思い切り告発してやる。あ、でも、あれは「日本人のホコロビ」だった。一度だけ「中国人のホコロビ」にしてもらえないだろうか。

■第3試合 日本 vs 韓国

 スタンドに自分の関係者が何人も来ていたので、試合前は慌ただしかった。中学時代の同級生とその友人、高校時代の同級生とその友人、大学時代の同級生とその奥さん、父、母、兄、妻、従姉妹とその旦那さん。オレの結婚式じゃないっつうんだよまったく。いや結婚式に妻は来ないか。ほかにもどなたかいらしたとしたら、会えなくてすみません。試合前の練習が始まるやいなやピッチに降り、スタンドの人たちとはそれっきりになってしまった。試合後には妻から「こっちに気がつかないので帰ります」とのメール。帰ってから聞いたら、私に向かって手を振っていたらしい。そんなものが目に入るような精神状態ではなかったのだ。すまん。

 というわけで、試合終了後の私は完全に壊れていた。ただし終わってから壊れたわけではない。徐々に壊れた。まず、黒田の先制ゴールで一気に25%ほど崩壊。取材メモには「前半5分 トモ! 1-0」と書いてある。発狂しているわりに公式記録どおりの時間が書いてあるのはえらい。

 でも次の崩壊は時間帯不明。メモは「アキ ノーボイ」である。なぜノースピークひとつ程度で壊れたかというと、それが4つめのファウルだと思いこんでいたからだ。「第2PKで同点」の悪夢が脳裏をよぎって、崩壊度は35%に。しかし日本のファウルはそれが3つめだった。どうやら、フェンスをつかむ反則は累積されないらしい。韓国の監督もそれを知らなかったようで、「4つめだろ、4つめだろ」とオフィシャル席に抗議して却下されていた。だがファウル3つになった以上、安心はできない。主審のマリアーノさんは、わりかし神経の細かい人だ。いつ笛が鳴るかと気が気じゃない。

 そんなときに飛び出した次の崩壊メモが、「安べ ナイスキー!」だ。14番の強烈なロングシュートをGK安部がフィスティングかパンチングでスーパーセーブした場面だが、自分が叫んだことをメモしてどうする。しかも「安」が漢字で「べ」が平仮名。その瞬間、「アベのベは部だっけ倍だっけ」と迷ったことを、いま思い出した。人間、忙しいときに妙なことにこだわるものである。最初からカタカナで書きゃいいのに。ともあれ、崩壊度が50%に達したところで1-0のまま前半終了。第2PKを与えずにしのいだのは、とても素晴らしい。

 そして後半の立ち上がり、再び黒田が私を壊す。1点目と同じ弾丸シュートで2-0。前日のマレーシア戦ではあれほどシュートに精彩を欠きまくっていたのに、この大一番ではジャストミートしまくりだ。韓国戦なのに2-0。韓国戦なのに2-0。韓国戦なのに2-0。私はうわごとのように、頭の中でそれをくり返していた。崩壊度70%。

 そして、あの場面がやって来る。メモは「韓国4番 レッド」。ボールのないところでの出来事だったので、私はその場面を見ていない。帰宅してから妻に聞いたところ、落合と折り重なって倒れた4番が、暴行を働いたとのこと。その瞬間、ピッチを指さしながら観客席で立ち上がり、「退場だろ!」と叫んだ男がいたという。私の兄である。初めてブラインドサッカーを見た人の態度とは思えない。血は争えないものだ。私がプレスエリアで「ファウルだろ!」と叫んでしまうのは、遺伝子のせいなのである。もし私がその場面を見ていたら、似たような声で「退場だろ!」とハモってしまうところだった。父がもっと若かったら、三重唱になっていたに違いない。熱いぜ岡田家。

 ちなみにブラインドサッカーの退場は、5分後に別の選手を投入できる。短時間の数的優位は、壊れた私を少し元に戻してくれた。しかし追加点は入らない。残り13分で、再び5対5に。14番が何度もドリブルで突破を図る。風祭監督がたびたび声を張り上げた「ファウル要らんぞ!」は、私の心の叫びでもあった。とにかく第2PKさえ蹴らせなければ勝てる。そう思っていた。

 ところが残り3分を切ったところで、私を9割方破壊するゴールが決まる。まさか流れの中で14番にやられるとは。2年前よりはるかに上手くなってはいるが、中国を1点に抑えた日本の守備が彼に破られるとは思えなかった。しかし、さすがは韓国である。日本戦を最後までスリリングな展開にすることにかけては、天下一品だ。左足のシュートが左隅にゴールイン。2-1。サッカーでは「2-0は危険なスコア」と言われるが、それに気づくのはたいがい2-1になってからだ。今日の私がそうだった。私が気づいたところでどうなるものでもないが、もっと早く気づくべきだった。生きた心地がしなかった。死んだ心地もしなかったし、死んだら心地も何もないのかもしれないが、できればピッチに背を向けて終わるのを待ちたかった。

 私の取材メモは、「残り1分30秒 右CK」「また右CK」で終わっている。いずれも韓国のCKだ。タイムアップの瞬間、ボールがどこにあったのかは知らない。私は電光掲示板だけを見つめていた。真向かいにいる監督の顔が邪魔で見えなかったので、ちょっと苦労した。たしか2秒を切ったところで、両手を突き上げていたと思う。どちらも第2PKのない日韓戦。お互いにしっかりサッカーをやった末の、美しい勝利だった。やっとスカッとしたぜ。引き分け狙いのドン引き作戦を選択しなかった韓国も立派だったと思う。

 笑顔で抱き合う選手たちにカメラを向けた。ファインダーの中で、2年前の日韓戦終了後に撮った日本ベンチの写真が二重写しになった。どんな写真かは、「前略」で始まる闇翼コラムを読んでくれ。カメラを目から離すと、体が勝手に泣き始めた。頭ではコントロール不能だった。顔を上げると、こんどは逆にフジテレビのカメラが私に向けられていたが、もうどうにも止まらない。いくら取材とはいえ、どうなんだそれは。と、言える立場ではないのが辛い。いろんな人に見境なく抱きついて、何がどうなったのか記憶が混濁しているが、アベちゃんの表情はやけに鮮明に覚えている。恐怖から解放された人の顔。あとで「失点は反省してます、とブログに書いといてください」と言われたが、気にすることはない。前半に、1点防いでるじゃないですか。そしてあれは、彼の実力であると同時に、佐藤、福永、福島を加えた4人のGKが束になって弾き出したシュートだったとも、私は思っている。12人の結束力で、日本は世界選手権の切符をつかんだ。おめでとう。そして、ありがとう。あとは決勝を思う存分に楽しむだけ。中国ディフェンスのホコロビを見つけて、ぜひゴールを決めてください。私は来週から、イギリスへの渡航費用を貯めることにします。

■第4試合 イラン vs マレーシア

 前半の途中から観戦。もう日本と何の関わりもないので、純粋にブラインドサッカーの試合を楽しめた。ゴールもたくさん決まって、とても面白いゲーム。イランもマレーシアも、明らかに大会中に成長している。とくにイランの11番は、中国戦を経験して、ものすごく上手くなったのではないだろうか。あと、私はマレーシアの6番が大好きだ。あの人は、とにかくボールを蹴るのが好きなんだと思う。ボールを持つと、ドリブルはあまりしようとせず、味方を探してパスを出したがる。なんとなく「司令塔気取り」な感じに見えるのが微笑ましい。韓国との初戦ではフェンスの外でパスを待っていたから、司令塔が必要なのは彼のほうだけど。サッカーやりたいんだよなぁ。そうそう、もうひとり忘れてならないのは、マレーシアの美人コーラーである。あんなに楽しそうなコーラーは、いままで見たことがない。どんなに大差がついても、味方のゴールを期待してキャーキャーとはしゃいでいた。魚住先生には申し訳ないが、大会のベストコーラーを選ぶとしたら彼女に一票を投じたい。ともあれ、リーグ戦最下位のマレーシアだけは今日で日程終了。どうか彼らにとって、この大会が良き思い出となりますように。そうなるためには、マレーシアがこの競技を続けることが何よりも大事である。





 2009年12月18日(金) 23:35
 メダリストのオーラ、中華合理主義の醜悪

 10時半にアミノバイタル着。やがて日本選手団がバスで到着し、オッチーさんに声をかけたら、開口一番「あれはFKといえばFKですから」と言われた。きのうの失点シーンのことである。リスタート後のカベがややバラけた状態のときにシュートを撃たれたそうで、やはり私のレポートはそう大きく間違っていたわけではないということだ。しかし、なんで私がそれを気にしていることを(しかも書いてから2時間も経たないうちに)選手が知っているのか。聞けば、先日の闇翼コラムと同様、このブログもバスの中で読み聞かせているとのこと。参ったなこりゃ。でもこれはスポーツの記事なので、試合のレポートは基本的に敬称略で書かせていただく。

■第1試合 イラン vs 韓国

 その後の2試合の印象が強烈なので、もはや内容はよく覚えていないが、最初から第2PK以外では点が入るような気がしない展開。技術やスピードはややイランが上のように見えたが、イランはノースピークの反則が多く、その意味ではPK職人のいる韓国のペースだったといえよう。前半20分(手元の時計)に14番が蹴った1本目は、2年前に落合の第2PKを止めやがったGKが鋭い反応で防いだものの、2本目はゴールに向かって右上のポストに当たってネットを揺らした。たぶん、GKがあらかじめポストの脇に立って両手を挙げていなければ止められないキック。やはり蹴らせたくない。そのまま0-1で韓国の勝ち。イランは、攻撃の要となる8番と10番の両エースがいずれも負傷して担架で運び出されていた。でも後でボランティアスタッフに聞いたら「そんなに大したケガじゃないみたいっすよ」とのこと。明日になったらピンピンして出てくるかもしれないので、油断は禁物である。関係ないが、担当者が遅刻したせいで、実行委員長自ら前半で場内アナウンスを務めた松崎さん、お疲れ様でした。

■第2試合 日本 vs マレーシア

「明日のマレーシア戦、5点は取ってくださいね」

 きのうの第3試合終了後、アミノバイタルのスタンドで風祭監督と別れる前に、私はそんなお願いをした。韓国がマレーシアに3-0で勝った以上、日本は最低でも3点、韓国との実力差をはっきりと見せつけるには5点くらい必要だと思ったからだ。試合の相手はマレーシアだが、これは韓国との対決でもある。しかし考えてみると、私はこれまで代表の公式戦ゴールを4つしか見ていない。06年から07年まで足かけ2年、3大会13試合(650分)で4点だ。1試合で5点って10分に1点ってことだよなぁ、と思うと、なんというか、ちょっと茫然とした。

 国歌の演奏はやはり途中で止まったが、選手もインフィニティの諸君も私も「君が代」をしっかり最後まで歌いきって気持ちよくキックオフ。きのうは青だったが、きょうのユニフォームは上下とも白。明るい日の光を浴びたその姿は、実にすがすがしい。日本はユニフォームだけではなく、スタメンも大きく変えてきた。GK安部、DF落合、中盤に佐々木と加藤、トップには黒田。大量点狙いでガンガン行くぜ!というメッセージを感じる布陣である。

 実際、日本は序盤からシュートをガンガン撃ちまくった。1本目は佐々木、2本目は加藤、3本目は黒田。シュート練習のように順番に撃つあたり、律儀なチームである。しかしGKの正面を突くなどして、なかなか入らない。「なかなか入らない」というほど時間は経っていないが、韓国は10秒で先制したので、なんだか焦る。そうこうしているうちに、マレーシアがチャンスをつかんだ。何がどうなったのか覚えていないが、思いがけないタイミングで放たれた鋭いシュートが、日本ゴールのポストをかすめる。枠を捉えていたら入っただろう。心臓が止まりそうだった。いや、たぶん、ちょっと止まったと思う。つまり、ちょっと死んだということだ。頼むよオイ。それがこの試合でマレーシアが作った最初で最後のチャンスだったが、ものすごくヤバい場面だった。

 公式記録によれば、その後で佐々木のドリブルシュートが決まったのは、前半7分のことだそうだ。ぜんぜん、遅い時間帯ではない。だが、サイドフェンス際のプレスエリアで「まだかまだか」と手に汗を握っていた私には、その7分が20分ぐらいに感じられた。それぐらいゴールに飢えていたのだ。なので、佐々木独特のおかしなタイミングで放たれたミステリアスなトゥキックがゴールネットを揺らした瞬間、両腕を天に突き上げて、何やらワケのわからないことを叫んでいた。小学生のセガレが敵のPKを止めたときだって、そんなことはしない。だいたい、プレスエリアでやることではない。でも本当に本当に嬉しかったのだ。なにしろ07年8月のスペイン戦以来、2年4ヶ月ぶりの公式戦ゴールである。少しぐらい羽目を外してもよかろう。でも、「少し」では済まなかった。私は同じことをその後も4回やったのだった。

 後半8分の2点目は、練習どおりの形だった。佐々木が倒されて得たFK。ゴール前6メートル、右60度。佐々木に替わって投入された三原が、相手のカベの前に立ちはだかる。コーラーの魚住が、「ミノ(三原)が相手を押さえて、左に4ドリぐらいでシュート」と指示を出す。暗号を使わずに日本語で伝えられるのは、国際試合のいいところだ。笛が鳴り、落合がボールを左に持ち出す。三原がカベを押さえてこしらえたコースに、左足でズドン。叫ぶ私。2-0。韓国もこの時間帯はまだ2-0だった。奴らが3点目を決めたのは、タイムアップ寸前だ。逆転する時間は十分にある。

 マレーシアのファウルが3つになったところで、日本ベンチは葭原を投入した。次のファウルからは第2PK。「職人」の出番である。もっとも本来なら、出番はもっと早く来るはずだった。マレーシアはノースピークがやたら多かったからだ。ほとんど、相手とぶつかってから「ボイ!」と言う。それは「痛っ!」と言ってるのと同じである。痛い思いをしないためのルールなのだから、これでは意味がナッシング。しかし韓国人とイラン人のレフェリーはほとんど笛を吹かなかった。きのうは日本人レフェリーがマレーシアの反則をマメに取ったおかげで、韓国は第2PKが多かったのに。イラン人レフェリーなんか、まだルールをよく把握していないらしく、私が「これはファウルだ」と指をさして教えてやったら、「そうなの?」という顔でこちらを見たこともあった。「おまえ何もわかってないだろ」と日本語で罵倒できるのは、国際試合のいいところだ。すみません。非紳士的行為でした。

 それはともかく、葭原である。ふだんはDFの彼が、練習でも経験のないトップの位置に入ったので驚いた。ところが、この采配がズバリ的中。第2PKを蹴りに行ったはずなのに、流れの中から「幻の左」が炸裂したのである。練習ではまず決まらないので「幻」なのだが、さすが、パラリンピックの自転車競技で、練習でも出せなかったタイムを本番で叩き出した男だ。後半14分、左足を豪快に振り抜いて代表初ゴール。正直に申し上げますが、「これは夢ではないか」とホッペをつねりたい気分でした。

 ところが、正夢が3度も続くのだからわけがわからない。16分に、第2PKをいつものコースにゲット。さらに17分、シュートをGKが前に弾くと、自らそれに詰めてドカン。練習中、こぼれ球にあれほどすばやく反応する葭原を私は見たことがない。たった3分でハットトリック。私はほぼ発狂状態だった。発狂した勢いで、隣りでビデオ撮影をしているクリスタルさん(日本人です念のため)と抱き合ってしまったような記憶がある。マズかっただろうか。マズかったなら謝ります。ごめんなさい。でも、誰かと抱き合わずにはいられなかった。その場合、どう考えても北岡さんじゃなくてクリスタルさんでしょう、やっぱり。でも、本当はヨッシーさんに抱きつきたかったのだ。というか、むしろ抱かれたかった。かつて私の「抱かれたい男ナンバーワン」は、初代がシメオネ、二代目がドログバだったが、いまは文句なしで葭原滋男47歳である。

 私は以前、闇翼コラムで、同世代のヨッシーさんに「おっさんの意地」を炸裂させてほしいと書いた。しかし今日スパークしたのは、そんなみみっちいものではない。パラで金銀銅合わせて4つのメダルを手にした男のオーラが、ピッチの中でギラギラと揺らめいていた。大舞台の本番で、いかにフルパワーを吐き出すか。そのノウハウを体に染みこませたアスリートの凄味に、私は震えた。関東リーグでもやったことのないハットトリックをアジア選手権でやらかすなんて、かっこよすぎる。

 一方、おもしろすぎたのは落合だ。5点目が決まってピッチで抱き合う選手たちに声をかけると、「肩を抱いたらマレーシアの選手でした〜」という大ボケコメントが返ってきたので、腹を抱えてゲラゲラ笑った。試合中に選手のコメント取材をしていいのかどうかは知りませんが。

 そんなわけで、お願いしたとおりの5-0。審判が真面目に仕事をすればあと2点は入ったと思うが、まあ、それを含めてサッカーだ。終わったことは忘れて、次に気持ちを切り替えるべし。そもそも、5点取って当然の相手から5点取っただけのことである。日本チームはまだ何も手にしていない。過去にも未来にもとらわれず、今すべきことに集中することが大事。葭原のハットトリックも、そんな精神状態が生んだに違いない。応援するわれわれも、はしゃぐのはここまでだ。明日はイラン、韓国を相手にした過酷なダブルヘッダー。日本のブラインドサッカー史上、もっとも濃密な一日になる。

■第3試合 韓国 vs 中国

 中国に韓国をボコボコにしてもらおうという私の希望どおり、1-4で中国。対マレーシアもそうだが、対中国の日本と韓国の得失点差は、そのまま実力の差だと私は思っている。ただし、韓国が中国から1点を奪ったのは、実力ではない。悔し紛れで言っているのではなく、これは本当のことだ。

 この試合、中国ベンチは、後半に3-0とした時点でフィールドプレイヤー4人を「総取っ替え」した。主力を休ませたのだ。それは、まあいい。問題はそのあとだ。1点を加えて4-0となった後、ひとりの選手が出血でアウトしたのだが、中国ベンチは代わりの選手を入れない。あくまでも主力選手を休ませるために、そこからタイムアップまで10分ほど、ひとり少ないままで戦ったのである。ルール上は問題ないのかもしれない。チームにとっても、それが合理的な選択なのかもしれない。だが、これは韓国チームに対する侮辱であり、スポーツマンシップを土足で踏みにじる行為だと私は思う。私が韓国の監督だったら、自尊心を保つために、自軍もひとり引っ込めただろう。私は中国の指導者を、選手育成や技術革新の面では尊敬するが、そのクソみたいな勝利至上主義とビジネスライクな合理主義については、心の底から軽蔑し、嫌悪する。

 しかも3人になった中国は、2人を前線に上げ、「ひとり守備状態」になった。ふだんはウザったいほどの「4人守備」を徹底し、イラン戦では自陣でドリブルを続けて時間稼ぎをした中国が、「どうぞ点を取ってください」と言わんばかりのやり方をしたのである。ふつう世間では、スポーツの試合でこういうことが行われた場合、それを「八百長」と呼ぶ。韓国の14番がゴールを決めたのは、そんな時間帯だった。マレーシアだって、あの中国からなら得点できたかもしれない。韓国の14番は、あのゴールからどれだけの達成感を得られただろうか。むしろ虚しい気持ちにはならなかっただろうか。人をバカにするのもいい加減にしろという話だ。これまで私が見たサッカーのゴールシーンの中で、もっとも物悲しく、もっとも腹立たしく、そして、もっとも醜悪だった。中国の選手たちに罪はないが、あの国の指導者が愛しているのはサッカーでもスポーツでもなく、ただ勝つことだけである。スポーツの正義のために、あんなチームを優勝させてはいけない。私は怒っている。  





 2009年12月18日(木) 8:50
 お詫びと訂正

 今朝のTBS『みのもんたの朝ズバッ』でブラインドサッカー(オッチーさん主役)が取り上げられていた。きのうの中国戦の様子も見せていて大変よいPR効果があったと思うのだが、それを見たら、ゆうべ私の書いた得点シーンとまるで違う。もちろん間違っているのは『朝ズバッ』ではなく私だ。驚いたことに、中国のゴールはFKからではなく、流れの中でのものだった。あ、でも、あれはFK直後にカベがバラけた後の「流れ」なのかな。うーむ。自分の記憶力が信じられない。ともかく、11番のドリブルシュートが、田中アキさんの足に当たってコースが変わり、佐藤ゴリさんが反応できなかった、というのが正解。神様のイタズラであることに違いはないが、お詫びして訂正して恥じ入ります。きのうのレポートは、「ゴール裏の私の主観世界の中で何が起きていたか」を記録しておくため、削除せず残しておきます。異常に集中して見ていたせいで、いろんな映像が脳内にぎゅぎゅっと凝縮され、まぜこぜに再生されていたんだと思う。すんません。






 2009年12月17日(水) 24:30
 オランダじゃなくてイタリアだった

■第1試合 日本 vs 中国

 記念すべき国内初の公式国際マッチである。満員には程遠いとはいえ、平日の昼間にもかかわらず、多くの人々が足を運んだ。ゴール裏のプレスエリアから見上げるスタンドが、やけに眩しい。サポーター集団インフィニティが大声で選手の名をコールするのを聞いていたら、ちょっとホロリとしてしまった。後ろを振り向くと、大会で広報を担当するJBFAのユウキちゃんもホロリとしている。いい国に生まれた、と思えた。

 残念だったのは、キックオフ前の「君が代」演奏が途中で止まり、うやむやな感じで終わってしまったこと。アルゼンチンの世界選手権でも同じことがあり、本の中で主催者の不手際として書いたが、しかしこれは私の勘違いだった。きょう事務方に訊いたところ、IBSAのルールで国歌斉唱の時間が30秒と決まっているそうだ。ならば、間違っているのは主催者ではなくIBSAである。キックオフまでの「時間割」がきっちり決まっているらしく、それにどんな理由があるのかは知らないが、どうであれ国歌は途中で止めてよいものではない。今後も途中で止まるだろうが、動ずることなく最後まで歌いきるよう、明日、インフィニティの諸君に申し入れることにしよう。国の誇りの前には、国際ルールなんぞゴミみたいなものである。

 大半の報道陣は日本のゴールシーンを撮りたいので中国ゴール裏に陣取っていたが、私は日本ゴールの裏で観戦した。人が少なくて快適だった。そちらに陣取ったのは、中国の変幻自在な攻撃に、GK佐藤とDF田中を中心とする守備陣がどう対応するかを近くで見たかったからだ。日本のゴールはもちろん見たいが、私にとってはそこが一番の見所だった。そして試合は、そこを見なければ日本の戦いぶりを評価できない内容になった。

 公式練習の「チャイナ2.0」はどうやらベータ版だったようで、試合では(それでも北京パラよりはバージョンアップして)「ver.1.5」ぐらいだった。「4人で守って1人で攻めるけど、もう1人も攻め上がって、たまに逆サイドにパスを出す」である。序盤はほとんど「1人攻め」。ドリブルの切れ味とキープ力はやはりさすがで、遠い中国ゴール裏やスタンドからは、日本の守備陣が左右にブンブン振り回され、シュートをバンバン撃たれているように見えただろう。

 それはたしかにそうなのだが、とはいえ、日本守備陣は決して慌てて混乱していたわけではない。日本は守備時にもトップの佐々木を前線に残し、3人で対応。中国のドリブラーを最初にマークする選手は右往左往させられるが、これは想定の範囲内。GK佐藤が冷静なコーチングで2人目を動かしてそれをフォローさせ、最後方の田中はきっちりシュートコースを切っていた。だから中国のシュートはその大半が枠を大きく逸れたのである。「撃たれた」のではなく「撃たせた」シュートが多かったのだ。2枚目のフォローにまわって何度もボールを奪った黒田と、ダイレクトで的確にボールをクリアする田中の集中力は、それはそれは凄まじいものだった。もちろん「撃たれた」シュートが枠をとらえるシーンもあったが、これはGK佐藤が度重なるファインセーブでゴールを死守。グッとくるキーパーだぜまったく。ボール支配率やシュート数では圧倒され、何度もヒヤリとはしたものの、前半を0-0で折り返したときは「行けるぜこれは」という手応えがあった。前半の終わり近くになって中国が「パス機能」をスイッチオン!したのは、日本の守備に手を焼いていた証拠だろう。

 しかし後半9分、日本が不運に見舞われる。ゴール正面やや左寄りのFK。私はGK佐藤の真後ろにしゃがみ込んで見ていた。6日の自主練で、佐藤がカベの作り方を入念に確認していたからだ。そのカベに隠れていたので、中国の誰が何をしたのかはわからない。シュートを撃つ音が聞こえ、妙なタイミングでボールが日本のカベをふわりと越えた。GKには出所が見えなかったはずだ。カベの下を抜けてくるボールに備えていた佐藤は、頭上のボールに対応できなかった。あとで聞いたところ、中国の11番の撃ったシュートが田中の足に当たり、結果的に絶妙のループシュートになったらしい。崩された失点でも、ミスによる失点でもなかった。でもサッカーの神様は中国に1点を与えた。0-1。(※この得点シーンには私の記憶違いが含まれているので、上の「お詫びと訂正」を読んでください)

 日本の攻撃は、ゴールスローを受けるトップの佐々木が起点になることが多かった。GK佐藤が左右に投げ分けるボールによく反応し、トラップもほぼ完璧。このサッカーでは、ゴールスローが前線の選手の足元にきっちり収まるかどうかが大事だ。それはしっかりできていた。だが後ろの3人が押し込まれたせいで、佐々木が孤立する。パスを受けるべき黒田との距離が遠すぎた。4人に包囲された佐々木が潰され、なかなか決定機が作れない。

 だが、中国のシュートがクロスバーを叩いてゴール裏の私を大きく仰け反らせた直後に、ビッグチャンスが訪れる。黒田がボールを拾い、電光石火のカウンター。ドリブルでぐいぐい中国ゴールに迫り、右45度から放ったシュートは、弾丸のようにゴールマウスを捉えた。だが、やけに長身のGKが右手1本でこれを弾き飛ばす。千載一遇のチャンスを逸し、私は人工芝の上に背中からバタンと倒れていた。ちょっと後頭部を打ったらしく、しばらく目眩がした。

 0-1のままタイムアップ。圧倒はされたが、勝ち点0から3まですべての可能性があるゲームだった。日本がパラ銀メダリストと「戦えるチーム」であることを証明した一戦だった、と言いたい。意地も見せてもらった。中国の11番が日本陣内でボールを浮かせ、前にいる黒田を抜こうとしたときだ。

「オレにその手は通じないぜ!」

 キャプテン翼なら、そんなフキダシが入っただろう。落下したボールに先に反応したのは、黒田のほうだった。楽々とダイレクトでクリア。なんて男前なんだトモさん! リターンマッチとなるはずの決勝戦では、あれと同じことを中国ゴール前でやってやればよい。3日後のラストシーンの伏線としては、最高の試合だった。神様も味なことをしやがる。

■第2試合 韓国 vs マレーシア

 キックオフから10秒で韓国が先制。数分後にも追加点。どうなることかと思ったが、砂に水が染みこむようにブラインドサッカーを学習していったマレーシアは、けっこう頑張った。昨日あんなに時間をかけてピッチのサイズを確認したのに、誰も見ていないあいだにいつの間にかフェンスの外に出てしまい、そこでパスを待っていたところをレフェリーに連れ戻されたお茶目な選手もいたが(ちゃんと指示しないベンチの監督が悪い)、後半も終盤まで2-0のまま。しかしノースピーク(ボイの言い忘れ)をはじめとするファウルが多すぎた。例の14番(キム・キュンホ)に何本も第2PKを蹴らせてしまい、タイムアップ寸前に3点目が入る。得失点差を考えると、日本にとっては実に余計なゴールだった。

■第3試合 中国 vs イラン

 どちらも4人で守るので、ゴール前は常に密林状態。しかし前半、自陣でボールを拾った中国9番が手薄なイラン陣内にカウンターを仕掛け、スルスルとDFを抜き去ってズドンと先制ゴール。ものすごくきれいなゴールシーンだった。しかしこの試合でいちばん驚いたのは、後半も終わり近くなって繰り広げられた光景。負けているのに4人で自陣に引きこもるイランがボールを奪いに行かないため、中国は自陣で延々とドリブルを続けるという世にも珍しい形の時間稼ぎを始めたのだ。疲れると味方に近づいてボールを渡し、またそいつがドリブルでうろうろする。その繰り返し。イランは出て行かない。5分以上は連続で中国がボールをキープしていたのではなかろうか。勝負を諦めたかのようなイランが悪いが、中国も中国だ。もっと点取りに行けよ〜。きのう「チャイナ2.0」をオランダに喩えたことを大いに後悔した。ファンタジスタにちょろっと決めさせて「イチゼロでOK」って、それイタリアじゃん。イランがやる気を見せないままタイムアップ。得失点差を考えると、日本にとっては実に腹立たしい光景だった。

 大会初日終了後、急な打ち合わせで芝公園まで行き、その後は編集者と神保町でタイ料理を食ったりしていたので、更新が深夜になってしまった。何度もアクセスしてくれた人には申し訳なかったが、くたびれました。あと3日、みんなで力を合わせてガンバロー。





 2009年12月16日(水) 20:45
 「チャイナ2.0」の衝撃

 本日は10時から各国の公開練習。国際大会なのに、家で味噌汁を飲んでから車(30分)で試合会場まで通勤できるヨロコビ。久しぶりに(ったって中二日だが)選手たちと会うなり、昨日アップされた闇翼コラムを、宿舎からバスで移動中に黒田さん(奥さんのほう)が音読したと聞かされ、おおいに照れる。

 おそらく前日までの練習で細かい連携プレイの確認は終えていたのだろう、日本チームはゴールスローからのシュートや1対2など、ボールやピッチの感触をたしかめるようなメニュー。3日前に見たときより上手くなっているように見えたから不思議だ。アミノバイタルのピッチを味方につけた印象があった。ムードはとても明るい。冗談がポンポン飛び交うのは、調子がいい証拠。

 初参加のマレーシアは、ピッチに入るとまずGKを先頭に一列縦隊となり、サイドフェンスに触れながらぞろぞろと歩き始めた。コーナーを曲がってゴールマウスやネットを手で撫で回し、またコーナーを曲がってフェンス沿いを歩き、反対側のゴールを確認。そんなピッチ確認作業を、かなりの時間を費やして延々とやっていた。ブラインドサッカー体験講習会のようなメニューである。もしかすると体験講習会なのかもしれない。ドリブル、トラップ、キックなども、おおむね初心者レベル。これで明日はちゃんと試合になるのだろうか……と思っていたら、シュート練習中、右サイドからのクロスをダイレクトでズドーン!と決めた奴がいたのだから怖いスポーツだ。スタンドで偵察中の桝岡コーチが「ノブがおったわ」と苦笑した。かつての名ストライカー・井上暢浩さんのダイレクトシュート(詳しくは「闇翼」終章を参照)にフォームがよく似ていたのである。まぐれとはいえ、いつそれが炸裂するかわからないのがサッカー。できれば明日の韓国戦でお願いしたい。

 韓国とイランは、どちらもドリブル技術がかなり向上していた。ひとりで真っ直ぐドリブルするだけなら、日本選手よりも速くて確実な選手が何人もいる。いい勝負になるだろう。アジアのレベルは確実に底上げされている。韓国の14番(大会パンフで名前が「キム・キュンホ Kyung Ho Kim」だとやっとわかったが漢字表記は不明)のPK練習は相変わらず圧巻。クロスバーぎりぎりの高さにビシビシ決まる。蹴らせたくない。

 そして中国だ。去年の段階で「今大会最大の目玉商品」になることは明らかだったが、私の予想をはるかに上回る驚異のバージョンアップを果たしていた。地元パラが済んだらそんなに強化しないんじゃないかという読みは甘かったのだ。めちゃめちゃ鍛えている。

 2年前のアジア選手権はver.1.0(ベータ版)、去年の北京パラは精度を高め戦術を徹底したver.1.1(製品版)と、基本設計に違いはなかった。だが今回はver.2.0。いや、Mac OS9とOSXぐらい違うかもしれない。ベータ版か製品版かは試合を見ないとわからないが、すげえよあいつら。何が去年と大きく違うかというと、とうとう中国が「サッカー」をやり始めたのである。

 以前は「ひたすら4人で守って1人で攻撃」というゴールボールみたいな戦い方だったが、ミニゲームを見るかぎり、今回は攻撃に人数をかけてくるようだ。逆サイドへのパスが、味方の足元にピタリと収まる。彼らに「パス機能」が搭載されただけでも驚きだが、それだけではない。ピッチをドリブルで横切り、敵DFを引き連れながら味方とすれ違うやいなや、ヒールで後ろに戻して味方に渡す(いわゆる「スイッチ」)という大技を完璧な精度でこなしていた。すれ違うとき絶対に味方とぶつからないし、戻したボールをトラップすることなく動かしたまま滑らかにドリブルを始める。一体どんだけ調教…いや練習したら、あんなことができるようになるのだろうか。ブラインドサッカーのイノベーションを追求する中国の姿勢は、敵ながら天晴れというしかない。心から敬服する。

 守備網もさらに磨きがかかっていた。3人のDFがゴール側を頂点とする三角形を作り、お互いの位置関係をキープしたまま左右に動いてボールホルダーを追いかける。まさに動く壁。ジュラルミンの楯を持たせたら、おそろしく俊敏な機動隊になれそうだ。これはもう、見ないと一生の損。まるでマスゲームを見ているかのようなウォーミングアップの「行列ドリブル」だけでもお金の取れそうな、スーパー曲芸集団である。そのあとでマレーシアを見ると、この競技の「幅」がよくわかるかも。

 とはいえ、サッカーはサーカスではない。技術と勝負は別である。とにかく、徹底した反復練習で身につけたパターンを、全員が同じリズム、同じフォーム(ドリブルの歩幅までほとんど同じ)でくり返すのが中国のスタイルなので、日本としては、そのリズムを乱し、パターンを崩すことができれば、勝機はあるはず。なるべく身体接触を避けるサッカーを志向しているようにも見えるので、スピードに負けずに体をガツガツ寄せ、泥臭い「寝技」に持ち込むのが吉と見たがどうだろうか。そのために必要なフィジカル面を、日本は徹底して鍛えてきた。パワーと知恵と経験で、最初のハードルを乗り越えてもらいたい。1974年、それまで誰も見たことのなかった新しいフットボールで世界を驚かせたあのオランダも、西ドイツには勝てなかった。日中戦は、明日11時キックオフである。ちなみにアミノバイタルはとても寒いです。





 2009年12月15日(火) 21:50
 NHK首都圏ネットワーク、闇翼コラム

 本日18時10分からの「NHK首都圏ネットワーク」で、佐々木康裕選手を中心に日本代表が取り上げられた。ヤスさんがスーツ姿で仕事してる姿はじつに真面目そうで違和感があったが(笑)、まずかったのは魚住さん(コーラー)のお名前だ。本当は「稿」(のぎへん)なのだが、番組では「塙」(つちへん)になっていた。実は私の本でも同じ誤植をしでかしている。それだけでも本当に申し訳ないことなのだが、それをNHKのスタッフが引き写したとしたら、泣いて謝りたいです。私が引き写した資料と同じものを引き写したのならいいのだが(いや、よくはない)。そういえばNHKがこの取材をしていた13日の現場で、どこの人かわからないが魚住さんに名前の読み方を確認してるのを小耳にはさんだ。あのとき、イヤな予感はしたのだ。余計なお世話なので黙っていたが、一瞬、「私の本は字が違うので気をつけてくださいね」と言おうかと思ったのだ。あれはNHKの人だったのだろうか。ともかく、メディア関係者はご注意ください。あと、田中章仁選手の生年も間違えました。昭和五十四(一九七九)年ではなく、昭和五十三(一九七八)年が正解です。遅くなりましたが、お詫びして(重版したら本でも)訂正します。

 闇翼コラム第10回がアップされた。本日の夕刻に書いたもの。急な送稿だったにもかかわらず、超多忙状態の中で迅速に対応してくれた事務局スタッフに感謝したい。さあ、明日は朝から夕方までアミノで公式練習だ! ぜーんぶ見てやるのだ! あったかシャツも買って、防寒対策は万全だ(といいな)!





 2009年12月15日(火) 14:20
 メディカルチェック、地雷、そして神戸

 日本選手団は、昨夜、IBSAが派遣したインド人医師によるメディカルチェックを受け、全員が無事にB1認定を得たとのこと。「無事」じゃないからB1なんですけども、それはともかく、なぜ医師がインド人だと知っているかというと、私と同じ高校吹奏楽部のOG(書くと怒られるので先輩か後輩かはナイショ)が通訳ボランティアとして立ち会い、その様子をOB会のMLで報告してくれたからである(敬語を使うと先輩か後輩かがバレるので「くださった」とは書かない)。ちなみに、きのう書いたイラン情報をもたらしてくれたのも、豪州在住のOG(書くと怒られるので先輩か後輩か同級生かはナイショ)。持つべきものは英語のできる同窓生である。

 通訳ボランティアの女性は、きのう来日したイランチームのメディカルチェックにも立ち会ったそうだ。そこでは障害の原因も質問されるのだが、中には7歳のときに地雷で失明した選手もいたとのこと。もともと障害者スポーツは、傷病兵のリハビリテーションとして始まったと聞いたことがある。スペインの視覚障害者スポーツが強いのも、内戦で失明した人が多かったことが背景にあるそうだ。戦争がなかったら、障害者スポーツは今日のような発展を遂げていたかどうかわからない。NHKはしばしば五輪を戦争とからめたドキュメンタリーを放送するが、むしろパラリンピックのほうが戦争と切っても切れない関係にあるとも言えるだろう。今日は、中国、韓国、マレーシアの選手団が来日する。失明の原因からも、それぞれのお国柄が垣間見えるかもしれない。

 きのう、兵庫県視覚障害者サッカー協会の田中重雄さん(前日本代表GK)が、あるイベントのチラシのPDFファイルを送ってくれた(右の写真をクリックすると大きくなります)。兵庫県立総合リハビリテーションセンターの開設40周年記念事業として、アジア選手権後に中国代表チームを神戸に招き、兵庫サムライスターズを中心とする関西選抜チームと親善試合を行うそうだ。以前、「写真を使わせてほしい」と頼まれて快諾したのだが、こんなにデカデカと使われるとは思わなんだ。2年前、暗い体育館で行われるアジア選手権に備えて値の張るレンズを買った甲斐があるというものである。「視覚障害者サッカー日中交流大会 HBFA International Cup 2009 HYOGO」は、兵庫県立総合リハビリテーションセンター兵庫県立障害者スポーツ交流館(神戸市西区)にて、12月23日(祝・水)14時キックオフ。私もぜひ取材に行きたいが、アジア選手権で仕事が停滞するので、どうなることやら。

 現在、14時20分。日本の選手たちは、15時からの練習に向けてバスで移動している頃だろうか。うー。行きたいなあ。入れないとわかっていても、ついアミノバイタルの外まで行ってしまいそうだ。それじゃサポーターじゃなくてストーカーなので行かないけど。何か新情報が入ったら、また本日中に更新するつもり。そんな感じで、今週は五月雨式。





 2009年12月14日(月)
 直前合宿スタート

 第3回アジア選手権本番に向けて、きのう(13日)からブラインドサッカー日本代表選手団は合宿に入った。今週はあらゆる仕事を投げ出してべったりと寄り添うつもりでいたのだが、私が取材&お手伝い可能なのは、きのうの八王子だけ。今日と明日はアミノバイタルで練習だが、残念ながら完全非公開なので見ることができない。シャットアウトされたのは、この3年間で初めてのこと。国内開催のほうが距離が遠くなってしまうのは皮肉な感じだが、きのうの取材風景を見れば無理もない。テレビカメラが何台も群がり、インタビューの交通整理も大変そうだ。あれでは落ち着いて練習できまい。2年前の国内最終合宿では夕食を兼ねたミーティングにも同席させてもらったが、もう、そういう牧歌的な時代は終わったのだ。取材規制が必要なほど広くメディアに注目されるのは、私にとっては寂しい(長年の恋人が急に有名人になったような気分です)が、この競技にとってはとても良いこと。

 とはいえ気が気じゃないので、さっき練習を終えてバスで移動中のところを見計らって選手とメールをやりとりしたところ、怪我人もなく、みんな元気だとのことである。それが何より大事。午後はフリーとのことで、昼飯を何にするか議論中だというから、雰囲気もいいのだろう。きのうの練習も、みんな心身ともにコンディションが良さそうだった。先月の合宿では気管支炎でリタイアした三原キャプテンも「完全復活宣言」をしてくれたので頼もしい。

 今大会では使用球のスペインボールへの対応が選手たちにとって重要なポイントになるが、今月に入ってからやっとボールを入手した選手たちは、かなり扱いに慣れてきた様子。表面の材質がほかのボールと違うらしく、ドリブル時に「足にまとわりつくような感じ」と言う選手が多い。そのため、前に運びづらいそうだ。今日の練習では、いままで練習していた八王子の人工芝よりアミノバイタルのほうが滑りがよく、ドリブルもしやすかったらしいが、品質が悪くて音が消えやすく、難しいボールであることに変わりはない。詳しくは守秘したいので書かないけれど、チームは今、ボールの特徴に合わせた戦い方を模索しているところ。しかし基本的には、日本に有利なボールだと私は思っている。そう思ったほうがいいに決まっている。

 闇翼コラムのイラン編に間に合わなかった最新情報をひとつ。豪州在住の友人が現地でイラン人と知り合い、そのイラン人にはイラン代表チームに知り合いがいるというので、「なんという奇遇であろうか!」と驚喜して現状を訊いてもらったところ、イランにはまだ国内リーグがなく、代表チームだけがブラインドサッカーをやっているとのこと。(※2)現代表には、水泳やテニスの選手もいるらしい。相変わらず、国際大会用の特別プロジェクトみたいな感じのようである。プレイスタイルの荒っぽさは、前回同様かもしれない。


Blind Soccer ASIA 2009 special 'This Moment to Arise'
Text by Hitoshi Okada a.k.a. Shuntaro Fukagawa
BGV : Blackbird / Sarah Mclachlan