SAPIO 8/22・9/5号
特集「日本人のモラルハザード」に
短い雑文を書いてます。






わしズム夏号
コラム「嫌いな日本語」連載中。

| 八月前半の日誌 | | 深川峻太郎全仕事 | 大量点計画 | 世界蹴球時評 |メール |



◇ディナモ・ブカレスト×ラツィオ
BGM : The Last DJ / Tom Petty & The Heartbreakers



 ここは最近サッカーサイトではなくなったので、面倒臭がらずに一応説明しておくと、表題の試合は、欧州ナンバー1のクラブチームを決めるUEFAチャンピオンズリーグというサッカー大会の本選出場を争う予備予選最終ステージの第2戦である。そういうのがあるのだ世の中には。それでもって、ラツィオというのは私がかれこれ10年近く応援しているイタリアのクラブなのだった。ちなみに、今季のラツィオにおける最大の注目選手は、マルコ・バロッタというGKです。理由は、見ればわかる。手足が動いているというだけで奇跡だと思えるはずだ。年齢は、たぶん欽ちゃんより三つか四つぐらい上だと思う。ほんとうは私と同い年(誕生日もわずか2週間違い)の43歳だが、ちょっと信じたくない感じ。以上、説明おしまい。

 ラツィオはホームでの第1戦を1-1で引き分けやがったので絶望的な気持ちになっていたのだが、勝って本選出場を決めた。びっくりした。先制されて前半を1-0で折り返しながら、後半に3ゴール。まったく勝機の見えなかったチームを、ハーフタイム後に(メンバー交替なしで)別人のように生まれ変わらせるんだから、監督のロッシはえらい。っていうか、別人のようになったのはデル・ネーロだけか。たぶん新加入選手なので私は彼が何者だかさっぱり知らず、前半は「やけに頭がでかいし髪型もおかしいだろそれ」というだけの理由で「こいつは使えない」と決めつけていた(愚妻は「首の細い男って信用できない」と意味のわからないことを口走っていた)のだが、後半のデル・ネーロはファンタジスタのように見えた。図体のでかい中村俊輔、というところだろうか。しかし「ファンタジスタ」って言葉、ものすごく久しぶりに書いたな。ひょっとして、すでに死語なのだろうか。ともかく、そのデル・ネーロからロッキ、ロッキからヒールでパンデフにつないで決めた2点目は、まるでアルゼンチン代表のような躍動美。実況によれば、バロッタ翁はチャンピオンズリーグにおける最高齢出場記録を作ることになるらしい。どうか本選が始まるまで、彼が生きていますように。

 サイト復旧作業は徐々に進行中。昔の日誌はすべてのテキストが読めるようになったはず。再アップしたページをチェックしていると、つい読み耽ってしまう。おもしろかったんだなぁ、昔の日誌は。

記・平成十九年八月三十日(木)







◇あんばい
BGM : She's The One / Tom Petty & The Heartbreakers



 先日取材で訪れた岩手県一関市で「安倍さん」という方にお目にかかったのだが、その読み方は「あべさん」ではなく「あんばいさん」なのだった。なるほど。考えてみれば、「安倍」という字面を見て即座に「あべ」と読むほうがむしろ不自然だよな。ともあれ、各派閥の領袖を集めたあたり、一関風に読みたくなるような安倍改造内閣ではある。いいアンバイの内閣なのか悪いアンバイの内閣なのかは知らない。ところで、そこには私が「こいつとだけは二度と仕事で関わりたくない、いや絶対に関わらない」と心に決めている人物がひとり入閣を果たしており、それが国家にとって良いことなのか悪いことなのかということとはまったく関係なく、個人的にはその一点だけで不支持を表明したい気分である。私怨を公共心で封じるのは、とてもむずかしいこと。その大臣、人にお金を払うことに関してはかなり消極的(要するにケチ)な方だと私は感じているので、例の宙に浮いたお金もどうなるかわかったもんじゃないと思いました。

 外部ストレージのハードウェア障害が原因でWWW開設サービスがデタラメな状態になっていたリムネットから、データ復旧作業が完了したとの連絡。しかし復元されたデータは通常とは別のフォルダに格納されており、それを元のフォルダに戻さないと閲覧できないのだが、その作業を一発で簡単に済ませる方法が私にはわからず、とても面倒臭い。一部を戻してみたら激しく文字バケしていて読めず、すっかりイヤになっている。手元のファイルを再アップすればいいのだが、なにしろ1000ファイルを超えているので、このクソ忙しいときにそんなことをしている余裕はないのだった。「復旧」というなら、ほっといても以前と同じように読めるようにしてほしい。ともかく、古いファイルに関しては相変わらずデタラメな状態になってます。あしからず御了承を。べつに誰も困らないと思うけども。

記・平成十九年八月二十八日(火)







◇みんながセガレを見ていた午後
BGM : Aja / Steely Dan



 木曜と金曜は単行本の取材のため、著者&2人の編集者と共に一関まで出張。岩手県には、生まれて初めて行ったような気がする。ホヤとキンキとサンマが腰を抜かすほど旨かった。念のため言っておくが、この場合、腰を抜かしそうだったのはホヤとキンキとサンマではなく私であり、旨かったのは岩手県ではなくホヤとキンキとサンマだ。日本語は難しい。っていうか、ホヤとキンキとサンマには、たぶん、そもそも腰がない。ない腰は抜けない。と、このクソ暑いのにいちいち面倒臭いことを書いている自分がイヤになる。平泉まで足を伸ばして、中尊寺も見物&見仏。もし金色堂を外に出して夏のギラギラした陽光の下に置いたらどんなふうに見えるだろう、と思った。

 きのうの土曜日は、炎天下でセガレのサッカーを見物。ジュニア杯とかいう杉並区大会の本選出場をかけた公式戦である。4年生になると、こういう真剣勝負の場が与えられるらしい。セガレの所属する久我山は大宮、馬橋と三つ巴のリーグ戦を行い、その1位チームが桃三×杉六の勝者と最終予選を戦うという変則的なスタイルである。どうしてそうなのかは知りません。

 久我山は初戦で大宮に7-0と爆勝。いつの間にかチームの正GKとなっていたセガレが脅かされるシーンは皆無だったので、親の心臓にはとても良い試合だった。しかし次の馬橋戦では、前半にカウンターからGKと1対1の場面を作られ、セガレは果敢に前に出たものの、その脇を抜く巧妙なシュートを決められて失点。久我山は後半にPKを決めて追いつき、その後も圧倒的にボールを支配して馬橋ゴールに襲いかかったが、ヤマムラ君のFKが惜しくもクロスバーを叩くなどツキにも見放されて1-1のドローに終わった。次の試合で馬橋が大宮を8点差以上で下せば久我山の敗退が決まってしまうという、実に本格的な他力本願状態である。しかも馬橋は目標ゴール数がはっきりしているので戦いやすい。結果を待つしかない久我山の選手たちが、「大宮!チャチャチャ!大宮!チャチャチャ!」と露骨な声援を送っていたのがいじらしかった。

 で、その馬橋×大宮も、なんと7-0。立ち上がりの10分は互角の戦いで、「こりゃ7点も8点も入る試合じゃないな」と安心していたのだが、馬橋に先制を許してからの大宮は実に脆かった。ばたばたと失点を重ねて、前半のうちに3-0。子供って、いったん「ダメだ」と思うと、もう試合中には立て直しが効かない。まあ、大人だってそうかもしれんけど、もうちょっと頑張れよぉ。頼むよぉ。その試合の終盤、5-0になった時点で、明らかに力量の劣る選手を(おそらくは「全員出場させてやろう」という理由で)2人同時にピッチに送り込んだ大宮ベンチの采配に対して、久我山の保護者から不満の声が上がっていたのが、とても大人げなかったです。保護者って、おもに私のことだが。

 ともあれ、久我山と馬橋が勝ち点も得失点差も総得点も同じで、直接対決も引き分けなのだから、順位をつけられない。なので、3試合目が終わってからPK戦が行われた。……ん? PK戦? 最初は私も気づかなかったのだが、これが何を意味しているかというと、GKのセガレに久我山の命運が託されたということを意味している。ひええ。ほんとうに勘弁してほしかった。ベンチではコーチと控え選手たちが「R太郎にパワーを送るぞー」とか言いながら肩を組んでいるし、保護者たちも全員がセガレの一挙手一投足に注目している。これ以上にいたたまれない状況があるだろうか。「そうだよな。ヨシカツにも親御さんがいるんだから、あんまり過度に期待しちゃいけないよな」と、心の底からかつての自分を反省した。

 それでどうなったかというと、まあ、日常生活にはそう簡単にミラクルは起こらない。馬橋の全員にあっさり決められた。久我山のほうは、ひとりがGKのほぼ正面に蹴って失敗。PK戦の前に、「CL決勝でリバプールのデュデクがやったみたいに、ゴールマウスの中で踊って相手を攪乱しろ」とアドバイスしなかったことが悔やまれる。うちのセガレに可能な作戦は、それしかなかったのになぁ。結局、最終予選に進出した馬橋は桃三に3-0で惨敗したようなので、久我山が進出しても予選突破は難しかっただろうとは思いますが。残念無念。

 きょうは午前中、池袋で別の単行本の取材。今月は半分以上の日数を取材に費やしているので、執筆作業がまるで進まない。この暑さでは、いったん取材に出かけると疲労困憊してしまい、帰ってから原稿を書く気にならないのだ。にもかかわらず、仕事はどんどん増える。きょうも取材終了後、版元の社長が「内容が豊富なので上下2分冊にしたい」と言うので絶句。その瞬間、何かがガサガサっと音を立てて2008年のほうへこぼれ落ちたような気がしたのだが、あれは幻聴だろうか。どうだろうか。

記・平成十九年八月二十六日(日)







◇トラブル発生中
BGM : Aloha Time / IMEHA



 当サイトがしばらくNot Found状態だったのは私の気紛れのせいではなくリムネットのせいである。外部ストレージのハードウェア障害が原因でWWW開設サービスが利用できなくなっており、現在ハードウェアベンダーのサポートを受けながらデータの再現および正常稼動を目指して復旧作業を行っているが、見込みがまったく立たない状況であるらしい。意味よくわかんないけどね。とりあえず別の機材を利用してユーザーディレクトリのみ利用できる状態としたので、手元のデータを再FTPしてほしいという連絡が来たが、いろいろ面倒なので必要最低限のページだけアップしてみたのだった。というわけなので、存在しないページがたくさんあります。「ふざけんなよリムネット!」という話だが、実際のところ、そんなに腹が立たないのがわれながら不思議。もともとウツロなもんだと思っていたからだろうか。読者からの問い合わせもまるでないし、まあ、どうでもいいやこんなもの。聴いているのは、きょう取材でお目にかかったミュージシャン面谷誠二さんの参加アルバム。清涼感たっぷりのギターサウンドを聴いていると、うんざりしていた猛暑がちょっと素敵なものに思えてくる。夏は、やはり、あったほうがよい。

記・平成十九年八月二十一日(火)









| | 深川峻太郎全仕事 | 大量点計画 | 世界蹴球時評 |メール |