4月の日誌

扉(目次)

深川全仕事

大量点計画

江戸川時代

メ ー ル

平成二十年五月二十二日(木)  84.0 kg


1/8 米寿
BGM : ABBA / ABBA


 仕事の手を休めたくはないのだがセガレの誕生日なのでちょっとだけ。11歳になった。いやだから私じゃなくてセガレがだ。私は44歳で、ちょうど4倍である。息子がもう自分の4分の1も生きてるかと思うと、あんがい人生ってちょっとしかないんだなと思ったりしないでもない。計算してもらえばわかるがセガレは私が33歳のときに生まれたので、私の年齢がゾロ目のときはセガレもゾロ目になる。ということに、今更ながら気づいたのだった。セガレ22歳で私55歳、セガレ33歳で私66歳、セガレ44歳で私77歳、セガレ55歳で私88歳である。なんとかそれまで生きながらえて、この日誌に「55歳になった。私じゃなくてセガレがだ」とか書きたい。そのとき22歳の孫がいたら笑えると思う。ところで、今、ブロガーの最高齢者って何歳ぐらいなんだろうか。








平成二十年五月十七日(土)  84.2 kg


追記の追記
BGM : The Complete Rainbow Bridge / Jimi Hendrix


 というわけで、きのうの(赤字の「追記」を含めた)日誌を読んでからこちらを読んでもらいたいのであるが、ブラインドサッカーの「ボイ」は「boi」でも「voi」でもなく「voy」だったという件である。きのうの追記を書いたあと、過去に自分が書いたブラインドサッカー記事を検証したところ、スポーツナビでも、サッカーズでも、スポルティーバでも、この日誌で初めてルールについて書いたページでも、私は「voi」とは書かず「ボイ」という仮名表記のみにしていたのだった。この日誌のほかのページで「voi」と書いている可能性はあるものの、お金を頂戴して書いた商業メディアでの誤記を辛うじて回避していたのは幸いである。頭の中では「voi」だと思い込んでいたはずだが、たぶん「自分で確認してないから心配だし、調べるのも面倒だから仮名でいいや」と判断したのだろう。われながら、なかなかの危機察知能力である。セーフティーファーストこそ、ディフェンシブな原稿職人の生命線だ。なので、きのうの追記は恥じ入りすぎ&謝りすぎだったという気がしなくもないが、今までちゃんと調べなかったのが怠慢だったことは否めないのでしょうがない。

 それにしてもブルータスが「BOI」と誤記した理由がさっぱりわからず、それがスペイン語であることは記事にも書いてあるのでまさか「ボイ」という音を聞いてそのままローマ字にしたわけじゃないだろうとは思うが、とにかくあの短い記事に五つもの間違いがあるというのは、いくら何でも確認作業を怠けすぎだよなぁ。だいたい、アルゼンチンの世界選手権の写真をでかでかと使って記事を作りながら、現地に行った関係者に取材していないのがまずいよ。というか、「まずカッコイイ写真ありき」で誌面を作ろうとするから、こういうことになるんだろうと思う。ブルータスの記事が、サンパウロでのスペイン戦勝利にも仁川でのアジア選手権にもまったく触れることなく、1年半も前に行われた世界選手権の話題を中心に据えているのは、借りられる「カッコイイ写真」がその大会のものしかなかったからだろうと私は邪推している。ニュースとしての新しさよりも、写真が優先。要するに、見栄えのいい記事をお手軽に作りたい人たちなのだ。そして、ここで一番イケナイのが、お手軽で間違いは多いものの見栄えだけはいい雑誌の経営を成り立たせている広告主たちであることは、いまさら言うまでもない。







平成二十年五月十六日(金)  84.8 kg


おまえもか
BGM : Double Fantasy / John Lennon & Yoko Ono



 数週間前、ある障害者スポーツ関係のサイトに掲載されていたブラインドサッカーの記事に誤りを発見し(ブエノスアイレスで日本がスペインに勝ったことになっていたがそれはサンパウロでの話だ)、親切かつお節介な私はメールでそれをきわめて丁重な姿勢で指摘したところ編集部からも書き手からも感謝されたのだったが、「サッカーは地球を救う!?」という特集を組んだ「ブルータス」6月号の「ブラインドサッカーを知っていますか?」という(借り写真をでかでかと使って誌面の大半を埋めたお手軽な)記事の中にもいくつか誤りがあるので、本当は仕事の手を休めたくはないのだがここで指摘しておく。「知っていますか?」って、こっちが訊きたいよまったく。

 まず細かいことから言うと、記事では<音の鳴るボールを使うブラインドサッカーでは、(観客に対して)テニスのように「クワイエット、プリーズ!」となる>としているが、少なくとも私が観戦した国際大会における英語の場内アナウンスは、全て「サイレント、プリーズ」だった。異なるケースもあるかもしれないが、この記事は私も観戦したアルゼンチンの世界選手権について触れながらその話をしているので、やはり事実を正しく伝えているとは言えないだろう。また、2006年のその世界選手権で、日本は<韓国代表に1-1の延長戦の末、PK戦で>勝ったのではない。あの7-8位決定戦のスコアは、2-2である。そしてPK戦は、25分ハーフの前後半を終えた後に、延長戦なしで行われた。スポーツについて書くなら、試合のスコアぐらいは真面目に調べて正確に記録したほうがよかろう。

 次に、これはかなり重大な誤解を招く恐れのある書き方だと思うのだが、この記事では、<B1(全盲)クラスの国際ルールを簡単に説明>する中で、<アイパッチをすれば晴眼者も参加可能>としている。これは嘘である。日本国内の大会では晴眼者の出場も条件つきで認められているが、それは国際ルールに則ったものではない。国際ルールでそれがOKだったら、大会前のメディカルチェックなんか必要ないじゃんか。さらに重箱の隅をつつかせてもらうなら、国際ルールがB1選手にアイパッチ(およびアイマスク)の着用を義務づけているのは、<視力差を平等にするため>ではなく、明暗など「視覚」の差を平等にするためである。「視力」と「視覚」は違う。手動弁や指数弁を含めて「視力」のある選手はB1の国際大会には出場できない。障害者スポーツについて書くなら、出場資格ぐらいは真面目に調べて丁寧に説明したほうがよかろう。

 それからもう一つ、ボールにアプローチする際に義務づけられている発声(スペイン語の「行くぞ」)を、この記事では「BOI」と表記しているが、これは「VOI」であろうと思う。JBFAのサイトにもそう表記されているし、掲載されている借り写真に姿の見えるブラジルの選手たちも、思いっきり下唇を噛んで「ヴゥゥゥオイ!」ぐらいに発音していた。ただ私もこれはちゃんと確認したことがなかったので実をいうと自信がなく、ためしにスペイン語翻訳サイトで「行く」と入力してみたところ、「voi」ではなく「voy」と出たのだが、どうなんだろう。「行く」が「voy」で「行くぞ」は「voi」なのだろうか。と思って「行くぞ」と入力したら、やっぱり「voy」だ。とはいえそこには翻訳ソフトの限界があるのかもしれないので、これは改めてちゃんと調べなければいけない。ひょっとして「boi」が正解だったら、そのときは全力で謝る。

 ともあれ、なんで俺に書かせないかなぁと不遜な感想を抱かなくもないわけだが、マガジンハウスに知り合いはいないのだし、こういう特集タイトルをイタイと思わないグリーンでピースな人たちの仲間だと思われるのも厭なので、まあよい。サッカーが巣くうのは地球という星だが、さすがに星を救うのはたぶん無理だと思う。そもそも「星を救う」って意味がよくわかんないし。サッカーが救うのは、それを求める人間たちである。そして時には、それを求める人間たちがサッカーを救うこともある。というような原稿を、いま、書いている。

※追記 数時間後にIBSAのサイトで英語およびスペイン語のルールを確認したところ、ボールにアプローチする際に義務づけられている発声の表記は「voy」が正解でした。「12  FOULS AND MISCONDUCT」の項に「fails to say clearly and audibly the word “voy” or “go”, or any other similar word, when seeking the ball, tackling or searching for the ball」とあります。もちろんスペイン語版でも「“voy” or “go”」です。過去にこの日誌および雑誌記事等で「voi」と表記していたことを大いに恥じ入りながらお詫びして訂正いたします。私も協会もブルータスもみんな間違っていたわけですが。ブルータスに「おまえもだ」と言い返されてどうする、っていう話ですね。いや、すみません。







平成二十年五月十三日(火)  84.4 kg


はりつめている
BGM : Mind Games / John Lennon



 ライター人生で初めてではないかと思うぐらい集中し、ライター人生で初めてではないかと思うぐらい神経をすり減らしながら、ライター人生で初めてではないかと思うぐらい濃密な原稿を書いているので、気分転換はものすごくしたいのだが、ほかの文章を書くことでこのテンションを下げたくない、という気分にもなっている。なので、この日誌はしばらく途絶えるかもしれない。まあ、私のことだから、どうなるかわかんないけどね。とりあえず本日は生存報告のみ。








平成二十年五月八日(木)  84.6 kg


EURO
BGM : Sonideras / Lilian Saba & Nora Sarmoria


 来月開催される欧州選手権(サッカーのだ)で、スペイン対イングランドの試合が行われるらしい。イングランドは予選で負けたのに何を言い出すんだこの男はと思われるだろうが、これは準々決勝の前座として実施されるものだ。いずれも北京パラに出場するブラインドサッカーの代表チームが、6月19日にバーゼルで対戦するというのである。ってことはイングランドじゃなくてイギリスか。でもEUROに「イギリス」って何かヘンだよな。なんにしろ、昨年の欧州選手権決勝で対戦した両国の対決だ。8月に日本から2試合で1点も取れなかったスペインが9月のその決勝ではイングランドから5点も取っているのが欧州B1シーンのよくわからないところだが、取材に行きてー。その頃はもう本の原稿を書き終えているはずなので取材しても意味はないが、そんなこととは関係なくスイス行きてー。行けば準々決勝も見られるわけだしな。どことどこがやんの? ナニナニ、A1位対B2位? グループ分けはどうなってんだ。何も知らないじゃないか私。えーと、グループAはスイス、クロアチア、チェコ、ポルトガルですか。ふーん。ここはまあ、スイスイとスイス1位ですわな。つまんないこと書いちゃったな。でも、スイスは強いはずだよ。ブランド志向のシロートさんはチェコかポルトガルだと思ってんだろうけど、そんなことないね。私ぐらいの半可通ともなると、そういう見方をしないのである。スイスが強いことを、ちゃんと直観だけで見抜いている。ポルトガルはアレだよ、あの何とかロナウドって人がCLやらプレミアやらでくたびれ果ててるからダメなんだよきっと。よく知らんけどさ。で、グループBはオーストリア、ドイツ、クロアチア、ポーランドだよオイ。地味すぎないかコレ。予選かと見紛うような顔ぶれだ。その下にフェロー諸島とか居そう。なんでまたよりによってオーストリアなんか出てんだよ。え? なに? 開催国だったの? そっかー。じゃあ2位には入るかもね。って、そしたら6月19日はスイス対オーストリアじゃん。あんまり楽しみじゃないじゃん。どうせ行けないから、どうでもいいんだけども。優勝予想は消去法でロシア。どんな消去法だそれは。








平成二十年五月二日(金)  85.0 kg ぶひ。


チェルシー対リバプール
BGM : Live At The Fillmore / Derek and the Dominos


 知らないうちにFAカップに毛の生えたような大会になっていたUEFAチャンピオンズリーグだが(べつにバルセロナが毛だとは言ってません)、チェルシーとリバプールの準決勝は、ファーストレグもセカンドレグも結果ならびに得点経過を知った上でビデオ観戦したのだった。どっちも知らずに見たかった。1戦目は後半ロスタイムにリーセの夢のように美しいオウンゴールで1-1、2戦目は延長戦の末に3-2。ドログバ王の2発には魂が震えた。いやー、ついに決勝進出ですかー。理由がさっぱりわからないけど嬉しいよ。テレビにちっともアブラモビッチさんが映らなかったのがつまんなかったけどね。最近あんまり観戦してないのか? っていうか、まだオーナーやってるんですか。あと、最後の最後でシェフチェンコさんが時間稼ぎで投入されていたのがおもしろかった。まだいたとは気づかなかった。しかもコーナー付近でキープができず、思い切りボールをクリアしてしまい、時間稼ぎすらちゃんとできていなかった。なんというのか、ある意味、存在感がアーセナル時代のダボル・スーケルに似ている。おもしろかったよな、スーケル。ところでジェラード君はしばらく見ないうちにまた身長が伸びた。そうとしか思えない。もし成長したのでないとすれば、頭部が収縮したということになる。心配だ。いずれにしろ、あと1年後には15頭身ぐらいになっていると思う。








平成二十年五月一日(木)  84.6 kg むふふ。


こっちを向いて
BGM : Vitamin C / Pat C


 いつ、なぜ、どこで見つけて買ったのか記憶がないが、ブラジルの歌姫(であるらしい)パット・シー嬢のベスト盤である。何が「C」なのかは知らない。どういうわけか「年下の男の子」が入っている。キャンディーズの頭文字が「C」だからだろうか。そんなことないよな。だったら、カーペンターズやキャロルやキャラヴァンやキャメルの曲も入ってないとおかしいもんな。おかしくありません。

 それはどうでもいいのだが、キャンディーズといえば「年下の男の子」か「春一番」という話になるのがどうも気に入らない。先月4日に開催された全キャン連の「同窓会」の前後も、そんな調子の報道が多くてイライラしていた。キャンディーズのファンがみんな「年下の男の子」と「春一番」に強い思い入れを持っているはずだと考えるのは、ビートルズのファンがみんな「レット・イット・ビー」と「ヘイ・ジュード」、レッド・ツェッペリンのファンがみんな「天国への階段」ばかり愛していると考えるのと同じくらい愚かなことである。石破防衛大臣も記者会見で「春一番」がどうとか言ってたような気がするが、わかってねえなあって感じだ。ピンクレディーのファンはみんな「UFO」が好きだったかもしれないが、キャンディーズのファンはそんなに単純ではないのである。そのあたり、全キャン連はやはりさすがだ。イベント前に朝日新聞に掲載された全面広告には、「年下の男の子」も「春一番」も無い。唯一、コピーの中に含まれていた曲名はコレだ。


 もういちど“哀愁のシンフォニー”で紙テープを投げよう。
 ラン、スー、ミキ、と声をそろえよう。

 グッと来るじゃないか。そうなのだ。なんつったって、「哀愁のシンフォニー」なのだ。カラオケに行くと10回のうち9回はこれを歌う私は、このコピーに激しく共感したものである。コンサートに行ったことはないから、紙テープ投げたこともないけどさ。ちなみにイベント直前の全キャン連のサイトには、スタッフからのこんな書き込みもあったようだ。


 昨日からMMPのリハーサルがはじまりました。「哀愁のシンフォニー」のサイズは2ハーフにしました。つまりサビは3回あります。みなさん豊富な紙テープの準備をお願いします。

 バカである。用意周到にも程があるってもんだよ。しかし、こういうところにこそキャンディーズの本質があると考えるべきだろう。「年下の男の子」だの「春一番」だのと言っておけばキャンディーズの説明をしたことになると思ったら大間違いなのだ。何をムキになって批判しているのかと思われるだろうが、これは、「市民の量刑感覚」だの「国民の裁判参加」だのと言っておけば裁判員制度の説明をしたことになると思っているマスコミの問題と通底する話なのだということが言いたい。と、無理やり話をまとめたところで仕事に戻ることにする。