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VOL028-原価率  99/JAN/17 朝刊1面「製造業原価率5年ぶり悪化」

まずは、公式から、行きましょう。

売上高−売上原価=売上総利益

次に、記事の見出しの「原価率」ですが、正確には「売上高売上原価率」のことです。この手の比率の表現には決まりがあって、「××○○率」と言った場合、「××に対する○○の割合」という意味です。分数で表現するなら、先に来ている××が分母で、後に続いている○○が分子になります。

では、売上高売上原価率はどうやって計算するのか、と言うと、もうお解りだと思いますが、売上原価を売上高でわり算します。例えば、売上高が100百万円で売上原価が79百万円だったとすると、売上高売上原価率は79%となります。

ちょっと横道にそれますが、売上総利益率と言った場合は、売上総利益を売上高でわり算したものですから、売上高売上原価率が79%であった場合は、上の公式をご覧頂けばお解りのように、売上総利益率は21(100−79)%となります。小学生の算数みたいですが、利益に主眼をおくのか、原価に主眼をおくのかで、表現が変わります。

さて、原価率が売上高に対する売上原価の割合なのだとわかったところで、次は、売上原価とは何か、について簡単に説明しましょう。

売上原価はその会計期間(会計期間と言うと通常は1年間ですが、今回の記事は中間期とありますから、6ヶ月間と言うことになります)に販売した製品や商品に対応する費用です。

さて、何故ここで「販売した分に対応する」と限定するか、というと、売上原価とは、売上に対応する原価、だからです。つまり、当該会計期間において仕入れたり製造したりした費用のうち、在庫として会計期間末に残っている分に対応する費用は売上原価に含まれません。

具体的な売上原価の内容は、製造業においては、会計期間に発生した製品を作る工場における原料費や人件費、経費です。営業部隊や本社の運営などにかかる費用は、販売費及び一般管理費という区分に該当しますから、売上原価には含まれません。売るという行為ではなく、あくまでも作る(デパートなどの場合は仕入れる)という行為に着目して下さい。

「国内や東南アジアの景気低迷で売上高が急減。コストを削減しても減収を補えず、利益を圧迫している。」と記事にあります。ここでのコストとは、売上原価を構成する、労務費や原材料費、経費の総称ですから、これらのコストを一生懸命下げる努力をしても、売上高の減少の方が大きくて、原価率が上昇しているのだということです。

記事の中にある実際の原価率を使って、具体的な数字で見ておきましょうか。5年前は売上高が100、売上原価が78.45だったので、原価率が78.45%でした。ところが当期においては、売上高が80、売上原価が63.24でしたので、原価率は79.05%となってしまいました。売上原価は5年前に比べて、19.39%((78.45−63,24)/78.45)も削減したのに、売上高が20%((100−80)/100)減少してしまったため、結果的に原価率は0.6%高く(売上総利益率が0.6%減少)なってしまったということです。

0.6%の違いなんて大したことない、とお思いになるかも知れませんね。でも、1千億円の売上高がある企業の場合、6億円もの差が生じます。5千億円の売上高なら30億円です。また、これは全国上場製造業873社の平均と言うことなので、中には業績が伸びている企業もあるでしょうから、もっと大きく原価率が低下している企業もあるはずです。

また、「日本の製造業が、人件費など生産にかかわるコスト負担が重くなり、利益が出にくい体質になってきた。」とありますが、VOL022VOL023の損益分岐点シリーズでもお話しましたが、やはり、人件費などの固定費の影響が大きいということだと思います。

ちなみに、VOL009の損益計算書にある営業費用は、売上原価と販売費及び一般管理費の合計です。決算公告は要旨ということですので、省略して書かれています。公式で書きますと、

売上高−売上原価−販売費及び一般管理費=営業利益

売上高−営業費用=営業利益

となります。この辺りを整理されたい場合は、VOL003-利益をご参照下さい。

 

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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