Ani_002.gif (31587 バイト)

お母さんのための

日経新聞入門講座

Lin_104.jpg (3585 バイト)

VOL042-株主の権利 1999/JUN/1 朝刊1面「株主議決権行使へ指針」

記事は、「生保、信託の大手各社」が「顧客から預かった年金資産で運用する株式を発行する企業に対し、今年の株主総会から株主議決権を行使する」ための指針作りを始めた、という内容ですが、まず、株主の権利について考えてみましょう。

株主(株式会社が発行する株式の所有者)には、自益権と共益権という二つの権利が認められています。

自益権とは、配当金をもらったり、会社を清算する時に残った財産の分配を受けるなど、経済的な利益を得る権利のことです。

一方の共益権とは、株主総会での議決権、帳簿閲覧権など、会社の経営に参加する権利のことです。株主は、株式会社のオーナー(所有者)ですが、自らその経営にあたるのではなく、取締役を株主総会で選任し、取締役に経営を委託しています。しかし、例えば、合併や解散など会社にとって非常に重要な事項については、株主自らが株主総会において意思決定(決議)することになっています。

つまり、株式を所有するということは、配当等をもらうという権利以外に、その会社の経営にも参加する権利を持つということなんです。しかし、日本企業の大株主である機関投資家と言われる銀行、生保、信託などは、物言わぬ株主と呼ばれ(VOL026でも述べましたが、事業会社の持ち合いでも同じです)、「株主総会で、白紙委任を常態と」してきたことで、会社の経営に参加する権利を実質的に放棄してきました。

しかし、「外資系金融機関との競争が厳しくなるなかで、年金加入者などの顧客の利益を優先させる受託者責任を重視した体制へ転換し始めた」のは、透明で信頼できる市場(VOL041参照)への要求が高まっているということだと思います。

機関投資家が株主となっている株式には、年金基金から預かった年金資産で運用する株式が多く含まれており、機関投資家は年金基金から年金の運用を委託されています。委託された側(受託者=この場合は機関投資家)には、善良なる管理者としての注意義務(最善を尽くした資産運用を行うということ*)、委託された事柄について委託者(この場合は年金基金)への報告義務などが課されており、これらの義務を果たすことが受託者としての責任です。日本の機関投資家に対して、果たして物言わぬ株主として行動することが、この責任を果たすことになっているのかどうか、という疑問が突きつけられているのです。

*年金基金のコーポレート・ガバナンスに関する研究会報告書より

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

BACK   NEXT    TOP    HOME