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お母さんのための

日経新聞入門講座

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VOL049-国の貸借対照表 1999/OCT/28 朝刊5面「国の貸借対照表作成を決議」

小さな記事です。参議院の決算委員会が貸借対照表を国の会計に導入するよう政府に求める決議を採択した、というものです。

貸借対照表って何?というお話はVOL009-貸借対照表でも、取り上げましたが、簡単に言えば、その会計主体(会社など)の財政状態、つまり、資産(現金や預金の他、土地や建物なども含みます)や負債(借金など)、資本(運営の元手となっている金額)がどのくらいあるのか、を示すもので、現在の企業会計では、主要な決算書類の一つとなっています。

現在、国の会計は、現金による収入(歳入)と現金による支出(歳出)についての決算報告書を作って、決算報告を行うよう、財政法という法律に規定されています。つまり、貸借対照表の作成が義務づけられてはいないのです。

このことについては、今年の2月26日に経済戦略会議の答申としてまとめられた「日本経済再生への戦略」という文書の中でも触れられていますので、該当部分を引用します(青字及び太字は引用者によるものです)。

 

(3)公会計制度の改善

 公的部門の効率化・スリム化を進めていく上での大前提として、また、政策の事後評価を行う観点から決算はこれまで以上に重視されるべきであり、中央政府(特殊法人等を含む)及び地方公共団体(外郭団体を含む)のいずれにおいても以下のような方向を基本に会計制度等の抜本的改革を進め、会計財務情報基盤を整備する必要がある。

○ 国民に対して政府及び地方公共団体の財政・資産状況をわかりやすく開示する観点から、企業会計原則の基本的要素を踏まえつつ財務諸表の導入を行うべきである。

○ 具体的には、複式簿記による貸借対照表を作成し、経常的収支と資本的収支を区分する。

○ 公的部門全体としての財務状況を明らかにするため、一般会計、特別会計、特殊法人等を含む外郭団体の会計の連結決算を作成する。

現金主義から発生主義に移行する。

○ 以上の改善を進めるなかで、地方自治体については、全国統一の基準に基づいて財務諸表を作成・公表することにより、各自治体間の比較・評価を可能とすべきである。

○ 決算に関しては、外部監査の導入・拡充を行うとともに徹底した情報開示を行う必要がある。

 

複式簿記、現金主義、発生主義などの言葉については、また後日お話するとして、経済戦略会議の答申の中に、国の会計制度改革の必要性がはっきりとうたわれたことは、注目に値すると思います。以下にもう少し、この文章を引用します。

 

経済戦略会議は、このような現状認識に立ち、各経済主体が将来への自信を取り戻せるような新しい日本型システムを構築する必要があると考える。そのためには、あらゆる既存システムの大胆な見直しを含めて政治のリーダーシップの下に官民双方が抜本的な構造改革に取り組むことが必要不可欠であり、それなしには日本経済の再生はあり得ない。

 

日本企業がバブルの崩壊とグローバルスタンダードの荒波を受け、リストラ、事業転換等々、生き残りに必死になっていることは、お母さんもご承知だと思います。しかし、企業自身の努力だけで日本経済が立ち直れるわけではなく、国や地方公共団体を含め、あらゆる日本のシステムについての見直しが必要なのだと、経済戦略会議では結論づけているのです。その見直すべきシステムの中の重要な項目の一つとして、国や地方公共団体などの会計制度にも視線が向けられているのです。

国の貸借対照表が作られると、日本という国の現実の姿が今よりはずっと明らかになると思います。経済問題だけではなく、超高齢化社会を迎えて、年金や健康保険、介護保険など、長期的な視野を欠かすことのできない問題も山積していますから、お母さんの明日や私の明日をじっくり考えるための良い材料になってくれることでしょう。早期の実現を期待したいと思います。

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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