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VOL055-外形標準課税 番外編14

2000年2月の上旬頃から、石原東京都知事が事業税について外形標準課税の導入を表明して以来、この言葉が急に紙面を賑わせたのはご記憶に新しいでしょう。少し遅くなってしまいましたけれど、この言葉を整理しておきましょう。

企業が事業活動を行うと、様々な税金が課せられます。その主な税金は、法人税、都道府県民税、市町村民税、事業税です。これらは「課税所得」に対して課税されるものです(課税所得の説明は、VOL018-税効果会計をご参照下さい。「課税所得」が難しければ、単に「課税所得=儲け」とご理解いただいても、ここでの説明には差し支えありません。)。つまり、「課税所得」がなければ、税金を支払う必要は無いということになります。

一方、この「外形標準課税」というのは、「課税所得」に応じて税金を徴収するのではなく、つまり、儲けの部分に課税するのではなく、面積、資本金、従業員数、売上高、付加価値など、あるいはこれらを組み合わせたものを標準として課税しようというものです。つまり、「課税所得」の無い企業、赤字企業であっても、税金を支払う必要がでてくるということです。

「外形標準課税」が現行の法人税や事業税に関する課税の仕組みとは異なるものなのだ、ということはご理解いただけたと思います。では、なぜ、事業税に外形標準課税を導入しようという議論になっているのかについて少し考えてみましょう。

法人事業税は、事業がその活動を行うに当たって地方団体の各種の施設を利用し、その他の行政サービスの提供を受けていることから、これらのために必要な経費を分担すべきであるとの考え方に基づいて、法人の行う事業そのものに対して課税するものと考えられています。地方公共団体の行う行政サービスは景気に関係なく安定的に提供される必要があるものが多く、原資としての税収を安定化させる必要があります。そのために考えられたのが「外形標準課税」です。

この議論は昨日今日に始まったものではなく、以前から検討されてきたものです。しかし、どういう外形、つまり、何を基準に課税するかによって、産業の特性により、不公平な課税(例えば、面積に対して課税するとなると、大きな敷地を必要とするような工場を持つ企業に過大な負担を強いることになりますよね。)となってしまうことも懸念されるなど、実際の導入については解決すべき問題がたくさんあると考えられてきました。

今回の石原都知事の決断は、地方分権のあり方を含めて大きな一石を投じるものです。なぜ大規模な銀行だけなのか等々、課税の公平性という観点から様々な問題も指摘されていることはご承知の通りだと思いますが、遅々として進まなかった議論を押し進める役割を果たしていることは確かです。

私たち個人も納税者の一人です。誰がどのように税金を負担して行政サービスを支えていくべきなのか、また、徴収された税金は適切に使われているのか、しっかりと厳しい目で見つめていく必要があります。

参考:地方税制については自治省のHPをご参照下さい。

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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