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VOL056-監査上の実務指針 番外編15

少しマニアックなテーマかも知れません(かなりかな?)が、今回は、VOL053-強制評価減のところで出てきた、「監査上の実務指針」を取り上げてみましょう。なぜ「監査上の実務指針」が発表されると、企業の会計処理が変わらざるを得ないのか、なぜ企業の会計処理が監査上の実務指針に左右されるのか、それはすなわち、企業の会計処理と監査の関係ということになりますが、その理由を考えてみたいと思います。

「監査上の実務指針」とは、公認会計士が監査を行うにあたって、被監査会社の会計処理等が適切であるかどうかを判断するための指針で、日本公認会計士協会がまとめたものです。VOL053の実務指針(販売用不動産等の強制評価減の要否の判断に関する監査上の取扱い)の草案にも以下のように記載されています。

「本報告は、- 中略 -、会社の業種に関係なく、会社が保有する販売用不動産等について強制評価減を実施するか否かの判断に関して、監査上留意すべき事項を実務指針として取りまとめたものである。」

このような実務指針は、今回のもの以外にも数多くありますが、この実務指針は、どんな役割を果たしているのでしょうか。

証券取引法や商法に基づいて、公開企業やある程度の規模以上の企業は、公認会計士や監査法人の監査を受けなくてはならないことになっています(VOL043-会計監査をご参照下さい)。この監査にあたって、公認会計士は、会計に関する規則や公認会計士協会のとりまとめた実務指針に従って、企業の会計処理等について適切であるかどうかを判断することになります。

つまり、監査を受けている企業が、会計に関する規則はもちろんのこと、「監査上の実務指針」において適切でないと判断されるような会計処理を行っている場合は、適切な決算書類であるとは認めてもらえない(つまり適切でないという内容の監査報告書が出されてしまう)可能性があるということです。従って、適切な決算書類であるという内容の監査報告書を受け取るためには、監査を受ける企業は、会計に関する規則はもちろんのこと、公認会計士の判断基準となっている「監査上の実務指針」に従った会計処理を行わなくてはならないのです。

適切でないという内容の監査報告書が出されてしまうと、例えば、東京証券取引所に上場している企業の場合、上場廃止になってしまうことがありますし、商法に基づく監査を受けている企業の場合も、株主総会での決算書類の承認の手続が非常に厳格に行われ、取締役や監査役の責任が追及されることになる可能性があります。

以上のことからわかりますように、この「監査上の実務指針」というのは、それを判断基準としている公認会計士にとっても、監査を受ける企業にとっても、適切な会計処理とは何かを規定するという意味で、会計に関する規則と同様に、とても重要な存在なのです。

なお、実務指針をまとめた日本公認会計士協会というのは、公認会計士の品位を保持し、監査業務の改善進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行ない、並びに公認会計士及び会計士補の登録に関する事務を行なうことを目的として設立された(公認会計士法第43条より)特殊法人です。

 

日本経済新聞社 http://www.nikkei.co.jp/

 

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