犬への文書(1997.1.21)

犬への文書(1997.1.21)


しっぽのほうに
這っていく文書
古い
まだ毛生え薬のないころの
禿の文書が
つややかな毛並みに沿って
這っていく

船は水を求めて座礁していた
砂にまみれて
列車は線路を求めて
寝ていた
海溝に

犬は右隣にいる
僕らは写真に写る
いい
帆柱に勢いよく揺れる旗のように
いい

廃屋の鍵を挿し込むと
向こうからも鍵を挿している

暴かれないものがほとんどだった
100の鍵束の
そのひとつの
文書が
しっぽに向かって這う
清潔な毛の先だ

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(草の生える手帳(1997.1.28))次頁(せつないヴィジョン(1997.1.14))

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