水面から ガラスの鯉のくち(1997.7.8)

水面から ガラスの鯉のくち(1997.7.8)


透けた蜻蛉が
ガラスの鯉のくちに
入る
草木
すべてガラス
風にシャリン

鯉のくちびる
ビーカーの縁に似た
小さな曲面の
開口

一世代が通り過ぎていく
二世代が通り過ぎていく

中枢にシャリン
と枝をふれ
ぱくりと
ガラスの蜻蛉を
食べる鯉

過ぎていきました
赤い鼻緒の赤い浴衣の
女がひとり
落ちてきた
ガラスの花を握ると
赤い花が
掌に咲いて

斜面を
斜面を
下りていく

水面から ガラスの鯉のくち
鯉のくち

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(砂層(1997.7.15))次頁(アタマを運ぶ高速バス(1997.7.1))

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