捨て猫(1997.10.7)

捨て猫(1997.10.7)


詰まっているから
道ばたの捨て猫を拾ってくる
病気の猫を
すると
またしても詰まるのは
これが日々というもの

桟橋で深いキスをしたあの夏
たぶん重いかけらが
桟橋のわきの深い小魚が群れている深みに
ゆらゆら落ちていった

仕事の合間に谷崎源氏を読んでしまって
疲れた休暇
樺の木は周りの明るい花の鈴で
祝福していた

だるい書斎の時刻に猫は
回復しつつある

次の日の朝
そっくりな病気の猫が
同じ場所にうずくまっているのを見るとき
なんだか笑ってしまうね
ぼくの気まぐれは
もうベルちゃんのことで精いっぱい

きみは次の気まぐれな
散歩男に
拾われますように

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(涼子ちゃんはマルボロを吸う(1997.10.14))次頁(風紋(1997.9.30))

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