庭の水盤(1997.12.30)

庭の水盤(1997.12.30)


傷の深さは
たぶん耳の真奥に
垂れた重りの形で
血にまぼろしになって
景色を映すのだ

あの廃屋から
ヒトが去る日
また動く日

きっとロココ調の庭の装飾品は
傷の深さに釣り合わない渇いた
波のなかに
誰もいない客室の夢を
何度も何度も
その無を語る

カマキリが広い玄関の欄間から侵入する影は
時間が肥大させたマンガの
滑り落ちる
重石の
ふきだしには
字はない

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(流れ星(1998.1.6))次頁(ホテル(1997.12.23))

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