たなびく魚(1998.3.31)

たなびく魚(1998.3.31)


右端の突堤から
薄い煙が上がり
なびいていって
黒い人影を作るのは
雲の躍りの
入道が
臍のあたりから
ちりぢりに
島の林に融けてしまい
その影だけが
気になっているからだ

僕はあの極微の町の
夕景に魚を焼く
漁夫の女房が
斜めになった駐車場の
壊れたテレビのモニターに
映るのを見る
あの影を
否定することは
ついに極微の町を否定することに等しい
つまりは
右端の突堤から
たなびいているのは
魚の僕なのである

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(回転する帽子(1998.4.7))次頁(砂の旅(1998.3.24))

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