風のルビ(1999.12.7)

風のルビ(1999.12.7)


風のルビは
かぜ
電線のルビは
でんせん

整理すると 奥まったところに
砂が少しざらついていて
音が耳道にかすかに
通る

長い布の航跡は
泡立ち光の細かい粒に飾られている

おしゃべりをする
そのときのシャンプーの匂いのルビ

遠いところで本を重ねる
電車の中で読むために
駅前で買った文庫たち
並べて
糸の玉のように
明るい坂を
下りる

糸のルビは
いと
風のルビは
いつも かぜ

清水鱗造 週刊詩 目次前頁(茶室(1999.12.14))次頁(虚空(1999.11.30))

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