ALICE'S ADVENTURES IN WONDERLAND
Director : William Sterling / Alice : Fiona Fullerton
ウィリアム・スターリング監督『不思議の国のアリス』/ アリス：フィオナ・フラートン
初夏のやわらかな陽差しを受けながら、ボート遊びをする一行。ドジスンと友人ダックワース、そしてリデル家の三姉妹は、やがて河岸に上がりピクニックを始めます。退屈してうとうとするアリス。その横を駆けていく一匹の赤い目をした白うさぎ。ドジスンは即興でアリスの不思議な冒険のお話を語り始めた…。
冒頭のシーンに、私たちはあの1862年7月4日の“金色の午下がり”を見ます。実際にアリス物語が誕生したときのエピソードを映画の導入部として持ってくるという、スバラシイ演出です。さらに、アリスの横を駆け抜けた白うさぎにより舞い散るトランプ、そして踏まれた一枚の絵札“ハートのクイーン”が「痛いじゃないの！」と叫ぶ展開。現実と夢の境目があやふやになってゆく、そんな流れを違和感なく見事に描いています。
始まりから「おおっ！」と期待が高まりますが、さらにわたしを喜ばせたのは、原作をそのまま台本にしたかのようなストーリー。ミュージカル仕立てというのも、原作に多く登場する詩や歌がうまく引き出されていて成功。映像も、キャラクターとその舞台となる背景までもテニエルのイラストを忠実に再現していて驚かされます。一部、『鏡の国のアリス』からトゥィードルダムとトゥィードルディが登場しますが、それも含めて、彼の挿絵の風景を立体にしキャラクターに命を吹き込んだら確かにこんな感じだろうと思える出来映えです。原作を片手に比較しながら見るのも一興。でもこれやると、もう片方の手にはビデオのリモコン、で一時停止しまくり…(笑)。
この作品は1972年、ウィリアム・スターリング監督により製作されました。音楽は映画音楽の巨匠ジョン・バリー。007シリーズで超有名ですが、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』などいくつかの作品ではアカデミー賞も受賞しています。サントラに興味ある方は
こちら
を参考にどうぞ。
で、出演陣がまたスゴイ。『ロリータ』のピーター・セラーズ、『オペラ座の怪人』のマイケル・クロフォード、『サンタクロース』のダドリー・ムーアなどなどオールスターキャストで豪華〜。アリス役のフィオナ・フラートンは当時15歳で、アリスにしてはちょっと年齢も顔立ちも大人すぎるかなー。でも『007 美しき獲物』での大人の女フィオナを見ちゃうと、やっぱり可愛らしい少女だったなとは思いますが。当たり前か。
この作品はキャロル（アリス）ファンはもちろんのこと映画ファンにもぜひ観てほしいのだけど、日本版は残念ながら廃盤。わたしもどうにかやっとゲットしたものの、吹替版なのでちょっと哀しい。英語でよければ現在でも簡単に手に入るので、とにかく探すなり買うなりしていますぐ観るべし！
2001.03.20
--- 追記 ---
未見の方に朗報です！
これを書いたときには廃盤だったわけですが、ようやくデジタル・リマスター版DVDが発売されました。邦題は『不思議の国のアリス』から『アリス〜不思議の国の大冒険〜』と改題されていますが。吹き替え版で我慢していた私もうれしいです。これは名画ですから、みなさん買いましょ〜。
2005.03.25
DVD
VHS
発売元
エプコット
東北新社
販売元
エプコット
東映
品 番
ALCD-0078
TS-F758
発売日
2005.03.25
1981
FILM
1972年 91分 イギリス
監督・脚本
ウィリアム・スターリング
撮 影
ジェフリー・アンスワース
音 楽
ジョン・バリー
メイクアップ
スチュアート・フリーボーン
出 演
フィオナ・フラートン / マイケル・クロフォード / ピーター・セラーズ / ダドリー・ムーア / ロバート・ヘルプマン / ラルフ・リチャードソン
Photo：国内版DVD
