Rigolus はパリ (Paris, FR) の CNSM (Conservatoire National Supérieur de Musique et de Danse de Paris、 パリ国立高等音楽・舞踊学校) の学生だった Laurent Bardainne, Thomas de Pourquery, Sylvain Rifflet の3人の saxophone 奏者によって2003年に結成されたグループだ。 Bardainne は、Limousine (⇒MySpace) という jazz/improv の bass-less guitar trio を率いる他、 パリ・モンマルトル (Montmartre, Paris) のアート・スクワット Les Falaises を拠点とするミュージシャンのコレクティヴを核に2002年に設立されたレーベル Chief Inspector (関連レビュー) の多くのセッションに参加している。このリリースも Cheap Inspector からだ。 また、de Pourquery は Orchestre National de Jazz, Charmediterranéen (ECM, ECM1828, 2001, CD) に参加している。 パリの jazz/improv シーンで活動する若手のミュージシャンが核となったグループだ。
硬派な jazz/improv を演奏していそうなバックグラウンドだが、 演奏しているのは自称 "Mégalo-rock ex-fanfare"。 "Bardenberg" のような ska-core のような曲もあるが、 全体としては R&B のバックバンドのよう。 もしくは、少々 rock'n'roll 〜 punk 的にタテノリながら funky だったり latin ぽかったり waltz だったりするリズムと、 それに煽られ下世話なフレーズをブリブリと吹く sax 3本で盛りあげる ダンスバンドという感じだ。 ナンセンス気味のかけ声のような歌声も可笑しいし、 女性コーラス隊 Rigolettes の lounge 的なコーラスも、 punk 的なノリと微妙にミスマッチで、コミックバンド的な雰囲気も感じられる。 彼らの MySpace から辿れる YouTube の映像を観ていても、CDよりライヴの方が面白そうだ。 もちろん、アップテンポな曲でも3管揃ったフレーズも鋭く、 リズム隊の切れ味も良く、曲の崩し方も巧い。 若干テクニックの無駄使いのような気もするが、単なる雰囲気遊び以上の演奏だ。
CDには extra で "Envie De Toi" の video clip (QT形式) が収録されている (MySpace でも観られる) のだが、 レトロな disco のパロディっぽい雰囲気だ。 この曲は、鋭角な guitar のカッティングやリードを取るようなベースライン、 disco っぽいリズムなど、 収録曲の中ではちょっと異色に 1980s 初頭の new wave 的な雰囲気がある。 そういった所も気に入っている。
この Rigolus ほどコミカルではないが、1990年代末から活動している ロンドン (London, UK) の jazz ミュージシャンのコレクティヴ F-IRE Collective の中の出世頭的なグループ Acoustic Ladyland も似たようなグループだ。 Cheap Inspector や F-IRE のようなコレクティヴを背景に持つ所も似ている。 もっと free jazz 寄りだが、 PJ Harvey、Yeah Yeah Yeahs、The White Stripes などの曲も演ってしまう スウェーデン (Sweden) の Mats Gustafsson (saxophones) と ノルウェー (Norway) の Ingebrigt Håker Flaten (double bass), Paal Nilssen-Love (drums) による trio The Thing のようなグループもある。 そういったヨーロッパ (Europe) の他のグループとの同時代性を感じるところも、 Rigolus を興味深く感じる点だ。この手の表現が流行りつつあるのだろうか。