1990年代からニューヨーク (New York, NY, US) の jazz/improv シーンで活動し、 現在は東京を拠点にする trumpet 奏者 田村 夏樹 が、 1970年代の 山下 洋輔 trio 等で知られる ベテラン jazz saxophone 奏者 坂田 明 を迎えてのライブをやった。 会場は渋谷のジャズ喫茶メアリージェーンで30人も入るとぎっしりとなる程だったが、 こじんまりしたハコならではだろうか、 アウトな展開にもちょっとリラックスした感もある演奏が楽しめた。
演奏は、まずは、田村、坂田のソロを30分ずつ程。 休憩を入れて2人での演奏を聴かせた。 田村、坂田それぞれのソロは、どちらも voice を使わず、 ぞれぞれ trumpet と alto saxophone のみの演奏を聴かせてくれた。 田村はミュートを多用して微妙な音のテクスチャを強調する一方、 坂田ははっきり音を鳴らす演奏ですぐ前で聴くとかるく耳が飛ぶ感もあるほど。 しかし、その違いは duo でさらにはっきり感じられたように思う。
duo は、お互いの曲の楽譜を持ちより、それをベースに演奏した。 田村が用意したのは、 音響詩風の抽象的な詩をベースにフレーズを展開していく曲を集めた彼のソロアルバム Kokokoke (NatSat, 2004)。 対する 坂田 明 はハナモゲラ語のルーツでもあるハナモコシ語 (⇒ja.wikipedia.org) でも知られる。 ライブ告知を見て以来この2人の voice 対決を楽しみにしていたので、 それが実現したものを聴くことができただけでも嬉しかった。
Kokokoke (NatSat, 2004) などでの田村の voice は、 xhoomei なども多用しテクスチャとしての声を使う同時代の voice のアーティストにくらべ、 音節を生かした声使いをするという印象が強かった。 しかし、坂田 と共演すると、坂田 明 の方がはるかに言葉らしい。 むしろ、坂田 が音節の人で、田村がテクスチャの人だと感じた。 この違いというのは多分に相対的なものだと気付かされたのが、とても面白かった。 そして、このような声使いの資質の違いが、 楽器の鳴らし方の違い、比較的几帳面にはっきり楽器を鳴らしフレーズで聴かせる 坂田と、 かすれたような微妙な音も多用する 田村 の違いとも対応しているように感じたのも、 とても面白かった。(もちろん、どちらのスタイルが良いという問題ではない。)
この2つがうまく絡み合ったという程ではないが、 むしろ、ユーモアも感じるパフォーマンスの中から こういった違いがうまく浮かび上がったという点で、面白いライブだった。